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先輩と  作者: コロ助
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05 先輩と映画鑑賞

「先輩。映画を見ようと思うんですが、テレビ使っていいですか?」


「映画?どういう風の吹き回しだいハルト君?」


「その…僕ら一応映画研究部ですよね?それで顧問の先生から活動報告書を提出してほしいと依頼があったんです。映画を撮れなんて無茶は言わないからせめて、感想文くらい用意してほしいと。」


「?」


 僕の一言に先輩は思案顔になる。まいったな。まっとうな人間なら映画研究部のくせに、一本も映画を見ないことを恥じいる感情が生まれるのかもしれないが。


 先輩には少々難解だったかもしれない。これ以上言葉で説明しても先輩の理解をおそらく得られないだろう。もう少しわかりやすい表現を心がけねば。


「急に映画を見たくなったんで、一緒に見ませんか?あと、見ながらでかまいませんのでその紙に思ったことを書いてください。」


 僕は持っていた紙をひらひらと先輩の前で動かす。すると先輩は興味を惹かれたのか揺れる紙を必死につかみ取ろうとした。いい反応だ。


「ほう映画…。なるほど理解したぞハルト君。君の繊細な男心を。おっと、みなまで言うな分かっているさ。見たいんだろう?私と映画を。さあ私の隣に座るがいい。」


 手に入れた紙を誇らしげに掲げながら、先輩は自らの隣を席をバンバンたたきコミニュケーションを図ろうとする。そのしぐさに僕は感動を覚える。

 昨日テレビで見た野生チンパンジーの行動そのままだ。やはりノンフィクションドキュメンタリーは参考になるな。


「それじゃ一本目を再生しますね。」


「どんとこい!フフフ…君の浅はかなチョイスなど、私はとうに見抜いている。どうせちょっとエッチ映画を見せてこの隙にあこがれの先輩の手を握っちゃおうなんて浅はかなことを考えているんだろう?まったくかわいいものだ。どれ大人としての余裕を…。」


「鋭いですね。ちょっとしたラブシーンがありますよ。大学のサークルメンバーが人気のない山奥にキャンプに行く話なんで。」


「え、そうなの?ちょ、ちょっと待ってよハルト君。嘘なんでしょ?その私をからかうためにまたそんなジョーダンを…」


「先輩静かに。映画始まりますよ。」


「え、あ…はい。」


 先輩は何も言わず席に着く、これでしばらくはおとなしくなるだろう。


 これでも短いなりに先輩とは付き合いがある。先輩は小学生のような下ネタは好んで口にするが、その実、あまり生々しい性描写の話をすると途端に弱気になるのだ。


 これで大人しく映画を見てくれることだろう。


 僕は自身の作戦が上手くいったことに胸をなでおろすと、映画のスタートボタンを押すのであった。


 映画はとくにこれといった内容ではなかった。奥手の主人公と、そんな主人公の後押しをする親友。そして憧れの女性と主人公がふとしたきっかけから抱き合いお互いの愛を確かめる。


 …自分で選んどいてなんだけど先輩とみるには少々気まずい気がずる。まあこれが本題じゃないし気まずさもすぐに感じなくなるだろう。


 こうゆうのは意識しすぎるからダメなんだ。ベッドシーンだってソフトな描写で誤魔化してあるし、先輩だって気にしてはいないだろう。


 そう考え気持ちを落ち着かせると、僕は先輩の様子を伺う。先輩は顔を真っ赤にし、食い入るように画面を見つめていた。マジか…この人。


 まじまじと先輩を見ていたせいか、先輩は僕の視線に気が付き恥ずかしそうに顔うつぶせる。しばらく顔をうつぶせていた先輩だったが、何か決心したのか勢いよく顔挙げたかと思うと、非難めいた視線を僕に送ってきた。


「いったいどういうつもりだ!?君は私にこんなものを見せて何がしたいんだ!!」


「えっと、その…感想文を書いてもらえればと…。」


「感想文!?き、君は男女が絡み合うさまを私に見せ、あまつさえ私がどのように感じだのか赤裸々につづれというのか!み、損なったぞハルト君。」


 キーキーハッスルする先輩。まずいな、今回は僕が悪かったのかもしれない。それにしても以外に初心なんだな先輩。


「すみません。別にそう言うつもりじゃなかったんだです、このシーンはこの映画の本題というかその前振りみたいなものです。先輩が気に入らないんでしたら、このシーンは早送りしますので。」


「べ、別にこの程度なんてことはない。わ、私が怒っているのは君その無神経さだ。こんなものを見せて君は恥ずかしくないのか、も、もちろん、私はこの程度で動揺なんかしたりはしたのだが…。ふ、ふん見たまえ、あの女のはしたないさまを!私ならあんなやすやす右手を取られたりしない。私なら即座にあのいやらしい男の手をとらえアルゼンチンバックブリーカーで全身を拘束している。」


 明らかに虚勢とわかる態度をとる先輩。不安を覚える僕だったが、画面を見ると登場人物たちのハッスルも収まったらしく。ベッドにたわいもない話をしている。


 先輩も展開が変わったことを察しておとなしくなる。よかったこれでようやくホラームービーとしての物語が始まるのだろう。


 僕がそんなたわいのない感想を思い浮かべるのと、ムービー中の主人公目がけ斧が振り下ろされるのはほぼ同時だった。あわれヒロインの頭部はザクロのように砕け散るのだった。


 …中々迫力のある描写だな。思わずつばを飲み込むと隣の先輩の様子を伺う。そこには何が起きたのか理解が追い付かないのか。静かに震える先輩がいた。


 なんだこれ見たことない反応だ。不味い刺激が強すぎたのか?早くDVDを止めないと。


「せんぱ…」


 僕は先輩に声をかけようとするが、左ほほに感じた鋭い衝撃に言葉を続けることができなかった。早すぎる…一体ナニヲされたんだ。


「ぎゃーぎゃーぎゃー。いやーーーー。」


 現状を把握しようとする僕に対し、先輩は奇妙な叫び声をあげながら僕のみぞうちを正確に打ち抜く。いったいに何が起きているんだ。息が…苦しい。


「せん、ぐはっ、おちついて…。」


 何とか言葉を絞り出そうとする僕の顎を先輩は容赦なく正確に打ち抜いた。先輩はなおもよしゃなくマントポジションで僕の頭を殴打ずる。


(まずいなこれ。たぶん、まずい。)


 痛みが遠のく、視界は何もとらえず白く染まる、騒がしくてしょうがなかった先輩の声はいまはもう何も聞こえない。ただ静かだった。

 薄れいく意識の中、僕は願う、目が覚めたときどうか大事になっていませんように


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