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異世界アプリ  作者: ヨシナリ
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門前の取引

通貨が登場します。

単位は【brlバレル】です。

1brl硬貨、10brl硬貨、100brl紙幣、1k brl紙幣、10k brl紙幣、100k brl紙幣が通常多様されている設定です。

1k brl=1.000brlです。(10k=10.000、100k=100.000)

1m brl=1.000.000brlです。1m brlからは相当する記念硬貨が発行されています。


俺が大ニワトリを倒してからというもの、その後モンスターに襲われることはなかった。


森を抜けると急に開けたせいか、陽射しに目が眩む。

額に手を当てると、広大に続く草原に圧倒された。目前には大きく頑丈な木製の橋が見える。


橋に近付くとブラウンがニコニコしながら駆け寄ってきた。

「レイジ様。この橋、俺が作ったんだぜ。」

満面の笑みで鼻の下を擦るブラウン。

「村の人間総出で作ったんだろうが。」

呆れた顔をしてラルフが言う。

「それはそうだがよ。提案も設計も全部俺だぜ?」

「確かにそうだが私も含め村人全員の汗と涙の…」


小競り合いが始まったので橋に近付いて下を見てみる。

「高いでしょ?」

横にきたマリーが言った。


橋から下を流れる川までは、飛び込む気が起きないほど離れている。

ちょっとした谷という感じだ。


「それにしても見事な木橋だね。土台を作るのも大変だったろうに。」

とマリーに向かって言ったつもりだったが、

「そうだろうそうだろう。俺が若い頃、王都に行った時にそこの建築士がちょうど橋の建設をしていてな。ずっとその作業を見ていた甲斐があったってわけよ。」

いつの間にか横にいたブラウンが腕を組んで、ドヤ顔をしてくる。

「見過ぎて不審者として投獄されそうになってたけどな。」

さらに横からラルフが水を差したせいで、

また小競り合いになったので、

放っておいて先へ進むことにした。

「それにしても良い天気だ。」


橋から30分ほど歩いただろうか。

石壁に囲まれた町がみるみると近付いていた。

門からは老騎士のような人がひらひらとこちらに手を振っている。


「よう!爺さん。」

「今日はまたエラい荷物じゃの。」

ブラウンとラルフは老騎士と仲が良いらしい。

「よく町に換金に来てますからね。」

マリーが微笑ましそうに教えてくれた。


門から中を覗くと、石畳みが続く道に往来する人々が賑やかしくしている様子が分かる。

「結構、栄えてるんだなー。」

物珍しそうに町の様子を伺っていると、

老騎士は俺を見て言った。

「ほう。あの光の正体はおまえさんか?」

「えーっと…」

少し回答に躊躇ってしまった。

「まぁ、そういうこった。」

ブラウンが俺の肩を組み、老騎士に満面の笑みで応えた。


「換金するにしろこの量は目立つぞ?」

そういうことかと鼻で息を吐く老騎士。

「話しが早くて助かるわ。ほい、これ。」

ブラウンはそう言うと、お金が入っているのであろう袋を老騎士に手渡した。


老騎士は袋の中を確認し、

「よし、通って良いぞ。馬車と荷車は壁に沿って着けてくれ。」

そう言うと手で御者たちを誘導しだした。

「レイジ様、ちょっと此処で待っててくれるか?」

ブラウンとラルフ、それから荷車を押していた男の一人と御者の二人が町の中へと消えていった。


空は相変わらず快晴で、雲が流れている。

天を見上げる俺に老騎士が話しかけてきた。

「それ、″くーるふぁいばー″ってやつじゃろ?良いのう。鎧の中は蒸すからワシも欲しいぞ。」


俺が着ている黒のインナーは、″ファースト プロバイド社″のオリジナル商品、″Cool Fiber(クール ファイバー)″のインナーである。通気性抜群で、裸でいるよりもむしろ着ていた方が涼しく感じてしまうという世界的ヒット商品である。


「よく知っていますね。」

「ああ、異世界から来る者は特別に珍しいということもないからな。」

ラグナージュが配信された直後はサーバーがパンクするほどの人気だった。そう思えば異世界の人間が珍しくないということも頷ける。


異世界の物は、高額で取引きされることが多いようだった。

老騎士と話しをしていると、

「待たせたなー。」

ブラウンたちが空の荷車を引きながら戻ってきた。

見知らぬ男も二名いるようだ。


荷車全てを門外に出すと、爽やかな短髪の青年が自己紹介をしてくれた。

「こんにちは。ボクは″ユスフ″。この町で鑑定士をしております。こっちは見習いの″スオ″です。」

スオと呼ばれた男は黒髪の長髪を後ろで結ってこちらを向き、無言で頭を下げた。


「本日は大量のアイテムの持ち込み、ありがとうございます。しっかり査定させていただきますね。」

ユスフはそう言うと、スオに合図を送り、テキパキと作業に入った。


「二人が出ていくから何かと思えば、そういうことか。」

門の奥から裕福そうな男と従者が二名現れた。

「か…会長…!」

ユスフは緊張を隠せていない。

「どれ。私も手伝おう。」

会長と呼ばれた男は纏わりつくような視線で俺を見ると、査定作業に加わった。


見る見るうちに、アイテムが荷車へと移し替えられていく。

会長と呼ばれる男がパンパンと手を払うと、こちらに振り返りこう言った。

「600k brl(バレル)になります。」

「…なっ⁈これだけ売って600k brl(バレル)はあんまりだろ‼︎」

ブラウンが査定額に不満を持ち噛み付いた。

「最近、アイテムの流通量がやたら上がっていてね。私の掴んだ情報だと、どうやら高レアリティの召喚が複数発生しているようだ。そこにいる若いのもその一人だろう?」


ブラウンは眉ひとつ動かさず黙っている。

「ふん。まぁ良い。通常なら550k brl(バレル)が妥当なところを上げてやってるんだ。これ以上は上げられん。おい。」

会長と呼ばれる男はユスフに合図を送ると、

ユスフがブラウンに駆け寄った。

(ごめんなさい…。)

ユスフが小声でブラウンに謝罪を述べると、600k brl(バレル)分の紙幣を手渡した。


「ちなみにあなたの着ている″くーるふぁいばー″なら1m brl(バレル)で引き取りますので、宜しければ是非、当店にお立ち寄り下さい。」

会長と呼ばれる男は俺に笑顔でそう言うと、ユスフたちと荷車を引き取って町の奥へと消えていった。


「くそったれ!」

ブラウンの怒号が快晴に響いた。




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