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異世界アプリ  作者: ヨシナリ
4/9

人外と現金と


目が覚める。

「この天井も見慣れてきたな。さて、HEROES(ヒーローズ)はどうなっただろうか…。」

不安になりながら、アプリを起動した。


「--- exp ヲ 10.800 獲得 シマシタ ---」

「--- LV ガ 3→14 二 ナリマシタ ---」


「ちゃんと機能した!」

という喜びもあったが、

「めちゃくちゃレベル上がった…」

別の意味で冷や汗が出てきた。


「昨日は80しか貰えなかった経験値が、今日は1万を越えているのか。大ニワトリの経験値がすごいのかな?」

バトルログを見てみる。

大ニワトリを倒した時の経験値はどうやら7のようだ。

バトルログを辿って気付いた。

「いや、戦闘数が異常なのか。」

バトルログはどこまでも下へと続き、ザッと1000回の戦闘は優にこなした事になっていた。


「寝過ぎた…としてもこうはならないか。」

考えを巡らしながら画面を見ていると、戦士の討伐速度が異常に速いことに気付いた。

なるほど、自分の強さと戦士の強さがリンクしていて、戦士が強くなったことでモンスターを倒す速度が上がったということか。


なんとなく解釈した俺は、アイテムアプリを起動してみる。

「ホーンラビットの角が526個、毛皮が420枚、兎の肉が211個、木刀が30本、棍棒が67本、腰ミノ99枚 … …」

読み上げるのも面倒なくらいのアイテム量に圧倒される。

加えてビッグアント、ビッグトード、大いもむしや大ニワトリのドロップアイテムも大量に確保できていた。


「大成功だな。」

カメラアプリで自分を見る。


名前:レイジ=アンドウ

種族:人間

レアリティ:GR

ジョブ:創造主

レベル:14/999

HP(生命力):81.920

MP(魔力):40.960

STR(物理攻撃力):40.960

DEX(器用さ):40.960

VIT(物理防御力):40.960

AGI(敏捷性):24.576

INT:(魔法攻撃力)40.960

MND(魔法防御力):40.960

スキル:HEROES


「人外…⁇」

倍の倍になっていくので、想定はしていたんだが、数字で見るとすごい。


朝の確認を終えた俺は、ババ様のいるであろう居間へ行った。


「おはよう。どうじゃった?」

ババ様の第一声。

「おはようございます。とりあえずこれを見ていただけますか?」

俺はアイテムを居間に広げるだけ広げた。

「な…なんと…!」

「まだありますよ?」


ババ様は少し沈黙した後に大笑いした。

「ぶぁ〜はっはっはっ!」

「ど、どうしたんですか?」

「いやなに、非現実的過ぎて笑うしかなくなってしもうたわ。これだけあれば十分じゃ。ちと村の者を集めてくるから、お主は広場の台の下にそのアイテムで山でも作っておいてくれるか?」

そう言うとババ様はそそくさと出て行ってしまった。


「広場に行くか。」

広場は村の入り口側のすぐ、開けた場所のことである。ババ様の家から広場までは歩いて10分と少しくらい。


広場に着いた俺は″台″と言われた物を探す。分かりやすい木の台がある。イメージ的には校庭で先生が乗って喋ったりしそうなサイズの木の台だ。


俺は言われた通り台の前方から横にかけて、広がり過ぎないように、獲得したアイテムを並べ始めた。

少し経つとギャラリーが一人、また一人と増えてきた。


俺は黙々とアイテムの山を作りながら、

「やべー。チョー見られてる。緊張する〜。何やってんだコイツとか絶対思われてる。」

村人たちの視線が刺さるが、意識すればするほど冷や汗が出てきた。

(ババ様〜!早く来てくれー!)

心の中で願ったら通じたのか、

「待たせたのう。」

颯爽と現れたババ様は俺の手を引いて木の土台の上がると言った。


「皆の者、聞け。かつて召喚の儀が行えたのは創生の村の創生の神殿のみであった。当時は大層、栄えていたそうじゃ。

今やあちこちに神殿は建てられ、この地から生まれた神官たちも必要とされ散っていった。

今ではこの村も歴史しかない田舎村となってしもうた…。

レイジが創生の森へ降りてきた時、ワシは感じたのじゃ、この者なら何かやってくれるのではないかと信じておった。

ワシがレイジを留まらせる事に不満を持った者は多かろう。見よ!」


ババ様は俺が積み上げたアイテムに手を指し、こう続けた。

「レイジは一晩でこのアイテムを持ってきた。そしてこの全てを村に寄付したいと申しておる。」

村人がザワつき出した。


「こんなこと、他に誰ができようか?」

ババ様のトドメの一言に、

「うぉー!レイジ様ー!」

「キャー!」

「すげーぞレイジ様ー!」

歓声が上がった。


ババ様は俺の方に向き直って笑顔でこう言った。

「今夜は宴じゃの。」


その晩、宴は開かれた。

俺が獲ってきたモンスターの肉は大量に料理となって運ばれている。


村に来た時と同じとは、とてもではないが言えないほど、あちらこちらの酒の席で俺の名前が呼ばれ、村の人のほぼ全員と話すことが出来たのではないかと思ってしまうほどだった。


以前、ババ様から聞いていたが、やはりこの村は貧しいらしい。モンスターは日々増えていく中、召喚はコストが高い割にまともな召喚が出来ないので、もう手の打ちようがなくなり諦めかけていたということらしい。


俺の異様な召喚に期待もされていなければ、ババ様がこの村に俺を置くと言った時には絶望さえ感じたという。俺が今回、大量の物資を寄付するという形で村人たちが心を開いたのは、貧困により単に現金になっていただけの事だった。


恰幅の良い村の男達に、散々″エール″を飲まされて、そのまま寝てしまったのだった。


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