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異世界アプリ  作者: ヨシナリ
1/9

見知らぬ知った場所

「ここは…?」


俺は日頃スマホアプリで遊んでおり、飽き性なのでプレイしては消しているような人間であるが、ラグナージュのこの森は、最初の村から出た側の森に位置し、低レベルのモンスターを狩ってレベリングしていたことはなんとなく覚えていたのだった。


そんなことを思いながら数十分の時が流れたであろうか。遠くから火の玉の群れが近づいてくるのが理解できるが、俺は未だ現実を飲み込めず、その場に座り込んでいた。気付けば火の玉は松明を持った人の群れであった。


群れの前列中心に位置する老婆が口を開いた。

「ご無事でしょうか?」

戸惑いながら俺は応えた

「とりあえず外傷はないように思いますが、幾分なにがどうなっているのかも解りません。」

老婆はジロジロと俺の格好を眺めながら言った。

「ふむ。ワシの思い当たるところと合致はしそうだな。悪い人間でもなさそうだ。どうだ?アタシの村に来ないかい?」

俺は当てもないので老婆に付いていくことにした。その村も検討がついている。きっと″創生の村 ジェネシス″だろうと。



2時間近く歩いた気がする。ようやく村へ到着したようだ。到着するまでにラグナージュで俺も狩っていた″ホーンラビット″が数回と、″ゴブリン″と一回遭遇したが、俺は何もできないまま、村人たちが討伐してくれた。村までが遠かったことと、モンスターとの遭遇率が想像以上に低かったことに少し違和感を覚えたのだった。


老婆の家は他の家より一回り程大きい。

老婆の家の前には数人の村人が待機しているようだ。老婆は少し躊躇いながらも、俺と二人きりで話す事を選んだようだった。

「ここは、創生の村 ジェネシスと呼ばれる村じゃ。」

俺の思った通りだった。老婆は慎重に言葉を選ぶようにして、こう言った。

「お前さんは…何者だ?」

「正直、自分でも現状を飲み込めていないんです。寝て起きたらそこに居た…という感じなので…」

「ふぅむ。」

頭を掻く老婆。

「こちらでは見慣れない格好だからね。私の目に狂いが無ければアンタが現れる時に落ちた光は″召喚の光″だと思うわけさ。ただ、基本的に召喚というものは神殿の中でのみ成立するもんだからね。アンタの現れ方は異例なんだよ。……」

どうやら俺はこの見慣れたVRMMOの世界へ召喚されたようだ。

老婆曰く、召喚の儀はしばらく行われていなかったようだ。

召喚の儀には大量の魔力が必要であり、まともに召喚すれば多くの人間の命を犠牲にしなければならない。

賢者の石という魔力を溜め込んだ石があればそれを対価に召喚はできるらしいが、相当貴重であるようだ。


老婆の話を聞きながら、俺は現状に現実味が増しており、なんだかワクワクしていた。

(異世界召喚!)

(チートスキル!)

(ハーレム展開…!)


ジェネシスが創生の村と呼ばれる由縁は、召喚の儀に用いる為の神殿が初めてこの世に作られたからだそうで、そこには召喚された者の素性を見る為の鏡の魔道具が存在するらしい。そんな話をこのタイミングで聞かされては、さすがの俺も首を縦に二回も振った。



老婆の家から歩いて10分、村の中心より少し後方に位置する所に、その神殿は佇んでいた。しばらく使われていないと言っても、管理は施されているようである。

神殿の中は一見して教会であるが、祭壇が広い印象だ。鏡は祭壇から見て右奥の個室にあるようで、老婆がその鍵を持っており、従者を2名部屋の外に待機させて中に入った。


「さて…」

老婆は俺を鏡の前に立たせた。

俺は衝撃を受けた。

(若返ってる⁈何歳だコレ⁈俺が高一か高二くらいじゃねぇか‼︎しかもちょっと身長高くなってない⁈)

…そうだ。確かにそんなキャラクリにした気がする…。

老婆がボソボソと何か唱えると鏡に歪んだ文字が浮く。


名前:レイジ=アンドウ

種族:人間

レアリティ:GR

ジョブ:創造主

レベル:1/999

HP(生命力):10

MP(魔力):5

STR(物理攻撃力):5

DEX(器用さ):5

VIT(物理防御力):5

AGI(敏捷性):3

INT:(魔法攻撃力)5

MND(魔法防御力):5

スキル:なし


「おー…。」

見方がよく分からんので、目の前で起こったファンタジーになんとなくの歓声を上げてみた。

「なん…だと…⁈」

横で老婆がどこか聞き覚えのあるリアクションをとる。

「これってどうなんですか?」

「う〜む…。ステータスに至っては村人に毛が生えたようなもんじゃ。が、しかし、…見たことないレアリティじゃ…。」


この世界ではアイテムだけでなく、キャラクターにもレアリティが存在するらしい。レアリティが高いほど、存在としても潜在能力が高いようである。区分はこうだ。


N:ノーマル

HN:ハイノーマル

R:レア

HR:ハイレア

SR:スーパーレア

UR:ウルトラレア


老婆曰く、10人召喚したらNが6人、HNが3人、Rが1人くらいらしい。

そうだった。このゲームが廃れたのはこのガチャ率の渋さも大きな要因だったな。


「GRとはなんじゃ?書でも見たことがないわい。それにしても潜在値が凄まじい‼︎」

レアリティによってだいたいのレベル上限があるらしい。


N=レベル30前後

HN=レベル40前後

R=レベル60前後

SR=レベル80前後

UR=知られていない


「上限が999って‼︎ナニソレオイシイノ⁉︎」

老婆が壊れ始めている。

「でも、ステータスは並みなんですよね?」

俺の言葉に冷静さを取り戻す老婆

「まぁ…そうさね。ジョブも見たことないが…これ以上ここで話していても拉致があかんじゃろうて。ワシの家の部屋も空きはあるし、どうじゃ?この村でしばらく様子を見てみるか?」

「よろしいのですか?正直これからどうすれば良いのかも分からないので、助かります。」

俺は老婆の家に居候させてもらうことになった。


老婆の名前は″アキヨ″。

この村の村長であり、神官様らしい。

村の人は″ババ様″と呼んでいるので、俺もそう呼ばせてもらうことにした。


その晩、借りた部屋のベッドに腰掛けて俺は一人ふけっていたんだが、何も思いつかないので寝ようと思い横になろうとしたその時、(ゴトン)

ズボンのポケットから何かが床に落ちた。

「…スマホ…?」

スマホだ。よくある形状と色味で、おそらく自分の物だと思う。

使えるのか分からないがとりあえず指紋認証部分に指を押し当てた。

「---レイジ=アンドウ ヲ 認証 シマシタ---」頭の中に聞いたことのある機械音声が響いた。

「‼︎‼︎ びっくりした。」

思わず独り言を言った。

とりあえず使えるようだ。ホームに入っているアプリの確認をする。


・カメラ

・マップ

・コンパス

・懐中電灯

・アプリストア

・インターネット

PIPEパイプ

・アイテム

・設定


少ない。基本的なアプリも入ってない物が多い。時刻やバッテリー残量、電波の表示はない。とりあえず気になるところとして、ネットを繋いでみる。---普通に繋がった。しかも速い。内容は日本で使ってた時と同じだ。

そして、アプリストア。なんと何も売っていない。

「どういうことだ?」

続いてPIPEアプリ。PIPEはSNSアプリの一種でメールや通話などコミュニケーションをとるツールなんだが

「登録してあったメンバーは全員消えてるか…。」

誰とも連絡がとれない状態のようだ。


最後に見覚えのない″アイテムアプリ″。

開くと何も表示されていないが、形状として見覚えがある。MMORPGによくある″アイテムインベントリ″ってやつだ。

「アプリ内にアイテムを出し入れ出来るっていうのは便利だな。」



一通りの確認を終えた俺は、疲れたので寝ることにした。

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