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有限は無限に語りだす。  作者: 向日雪音
本編
6/11

『嘘』

こんばんちは、向日です!

今年最後の一日ですが、ここにきて何とか投稿できそうなので、ちらりと載せておきます!

内容は……少しぐだっとなっちゃったので、書き直すかもしれませんが、タイトルの通り御題は『嘘』

でもって、今回はお師匠様の正体が分かる回にもなってます。

よかったらちらりと覗いていただければ!

では、また後程!


 皆さま、嘘は御存知でしょうか?

 あら、知っていますか。

 なら胸に手を当てて、私は嘘を一度も吐いたことありませんと念じてみてください。きっと――一つはヘドロが如く、心に粘着質な嘘を経験したことがあると思います。


 それが果たして、自身の嘘なのか。

 それとも、他人の嘘なのか。


 そこまでは定かではありません、皆さま次第でしょう。

 しかし、そう言った意味では嘘を経験した覚えはあるでしょう?


 偽善の嘘なのか、偽悪の嘘なのか。


 それすらも分かりません。

 嘘なんて、未来に気付くものですから。

 今吐く嘘は進むべき先の為、過去へと向けて吐く嘘は虚栄の為。

 では、未来で吐く嘘は何の為でしょう?

 えっ――未来に嘘は吐けない?

 それはどうでしょう。

 案外、皆さん吐いているかもしれませんよ?




 ――今日はカランコロンと乾いた音は鳴り響きません。

 何故か?

 ただの、定休日です。

 仕事する身である以上、必ず休暇は必要です。

 身体を酷使して、無理して動いても完璧なパフォーマンスは出来ません。私も〝人間〟として存在する以上、適度にリフレッシュぐらいします。

 それにお客様相手の仕事で、一人一人に割く時間が長いですからね。

 私も応じた対価を得ないと割に合いません。


「ふぅ」


 私こと――シャルロットは弟子のアスカに淹れてもらったコーヒーを頂きながら、優雅にアトリエで引き籠っている最中です。

 アスカはコーヒーセット一式を持ってきた後、


「わんわんとあそんできます、おさんぽです!」


 なんて張り切って言ったものですから、ついでに明日使うであろう贖罪の買い足しと、ちょっとした御使いを頼んだ次第です。

 目を爛々とさせて「りょうかいです!」と言う姿は、可愛い娘が初めての御使いに行くのを送り出す母の気持ちです。すごく不安ですが、フェンリル君が付いているので大丈夫でしょう。

 故に、現在私の家兼お店兼アトリエに居るのは私と、


「いやぁ、本当にあの子が淹れる飲み物って美味しいなぁ」


 麦畑が如く煌めく金髪は、今日も腰の辺りで蒼いリボンを使いまとめていました。私のもう一人の弟子こと――イリスがうっとりとした表情で、コーヒーカップを手にしていました。

 前回、お客様として来店した彼女が来ていたのは、貴族の魔女がよく身に着ける魔法で編まれた正装でしたが、今回は真逆。

 身に着ける白いオーバーオールは所々オイルに塗れ、中には黒地のTシャツ、綺麗な肌には薄汚れたオイルが点々とこびりついていました。見る人が見ると〝工場の人〟みたいな格好なのです、実際その通りなのですけどね。

 多くのポケットには〝工具〟と呼ばれる、見慣れない特殊な道具をしまい込んでいて、全て役割が違うそうです。

 まるで薬草みたいに役割分担が為されていて、それら全てを興味津々にイリスのアトリエを見ていると、今度はイリスが、


「師匠のアトリエも見たいなぁ。ねっ、いいでしょ?」


 なんて言うので、喜んで招待したのでした。

 本来、魔女のアトリエには〝当人以外原則立ち入り禁止〟の暗黙の了解が存在します。理由として、アトリエとは作った魔女の技術や今までの功績の全てを収束させ、秘匿の魔法や当人のルーツに関わる秘宝等を詰め合わせているからです。

 なので、基本的に魔女はアトリエに外敵への結界や防衛魔法を多重に展開させて、自らが世界に送る神秘の全てを死守しようとします。

 一般的には――ですけどね。

 対する私は、そんな魔女のしがらみには興味が毛頭ないもので、流石に既知ではない人を部屋に入れたりはしませんが、こうしてイリスやアスカ、或いはフェンリル君みたいに居候や同居人は気軽にアトリエへと誘ってはこうしてコーヒーを飲んだり、雑談に花を咲かせたりもするのです。

 一般常識から外れる私は、案外異端なのでしょうけど。

 別段秘匿する魔法や実績なんてないので、気にもならないのでした。

 代わりに、イリスやフェンリル君をアトリエに初めて誘った時の反応は格別でした。えぇ、二人とも「お前、頭大丈夫?」と言わんばかりに唖然としていましたよ。

 ちょっとショックでしたけど、今では二人も慣れてくれたみたいで、フェンリル君は薬草の臭いが苦手らしく、あんまりお近付きになりませんが、イリスやアスカはよく遊びに来てくれます。

 昔は私一人の家だったので、こうして人がアトリエに入ってきてくれるとちょっぴり嬉しかったりします。普段の三割程、気分が高揚します。うきうきです。


「そうですね、アスカはいい淑女になると思います」


 一拍置いて放たれた親馬鹿全開、贔屓し過ぎの私のアスカへの賞賛は、


「たはは、違いないね。

 可愛くて、勤勉で生真面目な性格なのに、

 素質に溢れていて……憎たらしいぐらいに未来が明るいもんね」


 弟子にも伝播したようでした。

 少し羨望交じりの言葉だったので、少々苦笑を浮かべつつではありますが、イリスが言ったのは褒め言葉に違いありません。大人しく受け止めましょう。


「はい、私的にはイリスの未来も明るいと思います」


 なので、私も素直な言葉を口にします。


「おっ、その心は?」


「心――ですか。アスカが〝天才〟ならイリスは〝努力家〟ですからね。

 色々吸い込むスポンジが如く、習得する術に費やす期間が少ないアスカに比べれば、

 イリスは多いですね。

 代わりに、イリスは習熟した知識や技量を応用出来る術を多く兼ね備えているので、

 私は二人を見ていて面白いですよ」


「むぅ、何か大道芸人を見る観客みたいかも」


 あらあら、少し顰蹙(ひんしゅく)を買ったようです。

 嘘でも言葉の選択肢を増やせばよかったのでしょうか?

 人の心は難しいです。


「ごめんなさいね、そんなつもりはないのですよ」


 難問で、出せていない〝解答〟の一つが、私のコミュニケーションを枷として重く圧し掛かります。

所詮は紛い物、虚像の実体化なんて誰も求めません。

 焦燥感に塗れて出てきたのは、嗤顔(えがお)でした。


「忘れてくださいね」


 遠い昔に忘却した癖が、知らぬ間に出てきていたようでした。

 彼女も一つ頷くと、ここから会話は途切れ途切れになっていきます。私のぎこちなさが増していき、沈黙の中で段々と空気が重くなります。言葉は刻みますが、空虚な内容ばかり。

 ここにきて漸くまずいと悟った私、折角の楽しいお茶会も台無しになるのは嫌なので、


「ごめんなさい、今日はこの辺でお開きにしましょうか」


 最後の最後、笑みを振り絞ってみました。ちゃんと笑えていたのか分かりませんが紡いだ言葉は力無く、自身は無様な道化師のような気分でした。

 私はゆったりと立ち上がり、ティーカップに手をかけると、



「お師匠様って〝嘘つき〟なんだね」



 彼女の表情が見えない角度で、冷たい言葉が反芻します。

 落胆、呆れ、愚鈍、軽蔑――色んな言葉が頭を巡り、私の体感温度が氷点下に近付こうとします。

 この感覚は、なんなのでしょう?

 すごく、怖い。

 今までにも経験した感情。

 ですが、形容に難い苦悶。

 太陽が雲に隠された感覚?

 いえ違います。たとえそれが月に隠されても、私は心を締め付けられるが如く痛みが襲ったことなど、幾度もないでしょう。

 底無しの闇に片足を鎮める感覚?

 禁忌の闇に落とす石の波紋を受け取ったような。

 そんな恐怖が眼前に広がるそうになった刹那、「はぁ」と一つ溜め息を吐いたイリス。合わせて肩をびくりと震わせ、小鹿が如く足を震えさせている私。あぁ、なんて矮小な存在なのでしょう、私は。


「お師匠様、もう一度座り直してもらえませんか?」


 言葉が怖い。

 それは、強制力の塊でした。


「は、はい」


 こうなった私は言葉に付き従うしか出来ません。

 何が〝有限の魔女〟ですか。

 一人の弟子がこんなにも怖くて、たまらない私。

 ほんと――出来損ないですね。



     ◇◇◇



 改めて座り直し、イリスと相対する私ですが……未だ静寂の空間は継続中です。本来魔女は、アトリエにて最強。自己の能力が最大限に発揮される筈なのですが、情けない限りです。何もできません。

 私もイリスも無言のまま、イリスに至ってはどんどん表情を曇らせていきます。何か声を掛けなきゃ会話も始まらないのですが、第一声が出ない。

 巣食った恐怖が拭えない。

 表面上では冷静を維持していても、そろそろ限界を迎えそうになった時でした。イリスが「むぅ」と唸って、強張った表情を解いたのでした。


「お師匠様、何か話さないと〝何も〟起こらないよ?」


 諦念したイリスが私の表情を窺いながら、ぶっきら棒な口調のままに話を紡ぎます。


「それとも何、もしかしてお師匠様は私と話すのが嫌い?」


「ち、違います!」


 咄嗟、自分でもこんな勢いで否定するとは思ってもいませんでした。


「私は、私は……ただ、イリスが嫌な思いをしたのなら、

 少しでも今日は話す時間を減らした方がいいと思って。

 それに、私は、私は――」


 それに、心から言葉が溢れてくるとも。

 自分でも混乱して、訳が分からなくて、理解が遠く逃げていきそうで、私が私でなくなりそうで、堪らない。早口で出てしまった言葉に信憑性があるのかと疑問になり、自分への疑心暗鬼が悠久へと差し掛かろうとしていたので、


「お、お師匠様。私はそんなつもりで言った訳じゃないから、だから落ち着いて、お師匠様!」


「私は――私は……あっ、あ」


 あんな風に声が掛からなければ、一生償いの答弁を繰り返す機械になり果てていたでしょう。

 過呼吸で、精神的にも身体的にも苦しくて、思考が追い付かなくて。

 ただただ、そっと私の右手を握ったイリスの両手が動悸を抑えて、少しまた少しと、落ち着きを取り戻す為の良薬のようでした。


「落ち着いた?」


「はい、ごめんなさいね。情けない姿を見せてしまって」


「大丈夫、私も態度が悪かったし、もう少し言葉を選べばよかった」


 いつも明るいイリスの表情は、暗く落ち込んでいきます。


「いいえ、イリスの言う通りだったのでいいのですよ」


 なので、私は少しだけ、ほんの少しだけ、


「私は、嘘つきですから」


 勇気を振り絞って言葉を紡ごうと思いました。

 イリスは浮かない表情のまま「えっ」と固まります。肯定されるなんて、思わなかったのでしょう。

意地悪な私の、天邪鬼な私の、不出来な私の、ほんの些細でささやかな悪戯は私の笑顔で締め括られるのです。

 少し小首を傾げ、可愛らしくも工夫します。

 内容は、最低ですけどね。




「私――実は〝ヒト〟ではありません」




 自分から明かすのは初めて。

 いつもは、私よりすごい人達に気付かれてきました。

 人間らしく振る舞っていても、抱える〝欠陥〟

 かつての旧友には〝それが貴方らしさ〟と説かれ。

 いつかのお母さんには〝それが貴女〟と抱擁された。

 窮地を救ってくれた友人には〝異端者〟と謗られ。

 忌み嫌われ続けてきた姉には〝殺人者〟と吐き捨てられた。

 誰よりも劣り、誰よりも優れてきた私は人にあらず。




「〝設計された人(ホムンクルス)〟と言えば、イリスは分かるでしょう?」





「――禁忌錬成」



 錬金術の最高峰、賢者の石を求める一方でもう一つ……彼らが追い求めてきた終着点、禁忌の御業。

 それは、人の身でありながら〝人〟を造る術。

 その解答が私、シャルロットなのです。

 私のお母さんが錬成しなければ、生成されることが無かった。虚構の存在。


「でも、お師匠様――お師匠様からは〝ヒト〟の意思が感じられる。

 それでも嘘っていうの?」


 恐る恐る紡ぐイリスの言葉には、未知の闇を覗く恐怖を感じているでしょう。そんな事実、そんな世界を騙す私を少女が見て、目の当たりにして、果たして純粋に居られるのか?

 やはり怖いです、ですが弟子には伝えなくてはいけません。

 私は、そう思えたのです。

 未来――私が嘘を吐かない為にも。


「はい、私の魂は〝お母さんの魂〟を依代に動いていますから」


「それって……」


「なので何とか〝ヒト〟なのです、全ては真の魂があるおかげなのですよ」


 真実を伝えたかった。

 あの一言、いずれは言われると思っていましたから。イリスもアスカも優秀な弟子ですから、いつか私の正体が暴かれても正気を保てるように、二人の立派なお師匠様で在り続けられるように、今は嘘でも先の未来で真を語らう予定だったのですが、案外嘘ってばれるものですね。あっ、言ったのは私ですけど。



「〝設計された人(ホムンクルス)〟って、魂が無いと脆い存在なのですよ。

 ほら、蝉の抜け殻と同じです。

 私は抜け殻としての生を受けてきたのですが、

 中身である母の魂が封ぜられた結果、今の私が存在します」



「それが、お師匠様の……真実?」


「えぇそうですよ。私は幻滅しました?」


 肩の荷が下りたのか、すっかり私は普段の調子を取り戻しつつありました。きっと本当のことを話したからでしょう。ですが、イリスの表情は暗いままです。未だ私の手をギュッと握りしめ、今にも家から飛び出しそうな顔は、私まで辛くなります。


「そんなはずない、そんなはずないのに。

 ごめんなさいお師匠様、

 私がお師匠様を傷つけるようなことばかりするから、本当に馬鹿な子。

 嫌になっちゃう」


「いいえ、真に向き合うのは魔法使いであり錬金術師でもあり、

 科学者でもあるイリスの役目。間違えたことはしていません」


「で、でもっ!」


「今回は、たまたまベクトルが私の真について〝だった〟だけです。

 なので、そんな暗い顔しないでください。私こそ悲しくなります」


「……お師匠様」


「はい、どうしました?」


「お師匠様って、子供なのか大人なのか分からない」


「ふふ、それは私と言う存在の弊害です」


「むぅ、何かお師匠様だけスッキリしているの、何か(ずる)いかも」


 頬を膨らませ、少しずつ饒舌になる姿を見ていると、いつかの私を思い出します。かつて小さく未熟だった私に声を掛けてくれた旧友の姿が、何となくイリスから見え隠れするのです。

 全く馬鹿ですね、私は。


「当たり前ですよ、なにせ隠し事が無くなったので今は気分が楽です」


「さっき話していた内容も、あの嘘の笑みも、

 真実かどうか語ってもらっていないから、

 私個人としてはモヤモヤが残ったりするんだけどなぁ」


 最初から気付けばよかった。


「なるほど、そんなこと思っていたのですか。

 あの嗤いは自分の心の迷いを誤魔化す為なので嘘ですね、ごめんなさい。

 だけどイリスへの評価は真実です。

 だから安心してくださいね、お世辞でも何でもないですから」


 最初から、伝えたら良かったのだと。


「――そっか、よかった」


 最初から、この笑顔、イリスの笑みが見たくて御話していたのだと。

 私は、やっぱり馬鹿みたいです。


「だから顔を上げて、笑ってください。

 私はもう二度と嘘は吐きませんから、真を語らうのは真でなければ、

 嘘になりますからね」


 イリスは立派な弟子なのだと、信用できる弟子なのだと、一人の天才として見るつもりだったのに、弟子になった途端これですよ。記憶力も衰えが生じているのでしょうか。歳……じゃないですからね?

 同時に一息吐いた私とイリスは、お互い見合ってクスリと笑い合うと、彼女は両手を膝に戻し、いつもの調子で、



「でもお師匠様、嘘は吐いてもいいんだよ。

 でも、他人は傷つけちゃダメ。

 自分が傷つく嘘は勝手に吐けばいいけど、嘘は損する。

 どこかで絶対に損するように出来ている。

 それが贖罪であり、嘘と言う罪に対する罰。

 人が営む輪廻の流れに対する対価なんだと――私は思うけどなぁー」



 もう一度、太陽が如く笑うのです。


「これはおじいちゃんに教えてもらった言葉。

 『嘘は、過去・今・未来に吐くことが出来る。

 過去に吐いた嘘は今の為、今に吐く嘘は虚栄心の為、

 未来で吐いた嘘は今と過去が犯した、嘘という罰の清算なんだ』ってね」


「私は、まだまだ罪滅ぼしをしなくちゃいけない気がしてきました」


 今の話を聞くと、なんだか思い当たる節が多過ぎて、数千年後まで罪滅ぼしを行っていそうです。それに、まさかイリスに何かを説かれるとは思いもしなかったので、長く生きて色々なモノに触れ合ってみるものだと、改めて思い直すのでした。


「たはは、だけどね。

 おじいちゃんは『優しい嘘はばれなきゃいい』とも言っていたよ。

 『勿論、帳尻合わせは待っているがな、がはは』って」


「――一度、お会いしてみたかったものです」


 自然と零れた言葉に、はたと既に叶わぬ夢の話を紡いでいました。多分、魅力的で豪快な御爺様の御話を直にお会いして、聞いてみたかった。たとえ、イリスには酷な話でも素直に言葉にして、本当を伝えることの重要性を知った私が今日出来る償いだと信じて。


「……うん、会って欲しかった。

 おじいちゃんにお師匠様、きっと頑固者だから最初は無口かもだけど、

 お師匠様なら大丈夫な気がする。

 私のことを分かってくれた人だから」


 照れた顔で頬を掻き、微妙に顔を横に向ける姿は姿形など関係なく、存在自体が美しく、よく出来た弟子を持ったと感慨深くなってしまいます。


(アグニアが溺愛するのも分かりますね)


 優しく紡がれる言の葉に、柔和に微笑みます。

 似た者同士、だけど生き方が違う。

 天才と天才。

 二人は天窓から差し込む日差しを浴びて、今日もお互いに語り合います。

 信ずるモノを求めて、師弟は今日も生きるのです


 真実と嘘。

 嘘は人を騙す言葉の毒。

 ですが、良薬は口に苦し。

 時には毒も薬と変わることもございます。

 但しご負担は御自身の身体によって果たされます。

 臓器が疲れぬ程度に飲まなければ、やはり毒は毒。

 最後には死にも至ります。

 真実も嘘も同じ。

 嘘は毒です、万物を殺せれば良薬にもなります。

 使い方は自由です。

 薬は私のような人間が処方します。

 でも嘘を処方するのは貴方です。

 御自身に見合った適量の薬を服用して頂ければ。

 私達も幸いです。

 なんて言いながら、私も今日まで分量を間違えてきたので、以降は注意しなければ。

 あくまで適量です、或いは嘘を吐かないのが一番でしょう。

 まぁ嘘が吐く人がいる限り、不可能でしょうけどね。


「さぁ、今日はここまでにしましょう。

 イリスの誤解も、私の誤解も解けたみたいですし」


「そうだね、あっそういえば最近新しい作品作ったから、

 お師匠様には見てほしいかも!」


「いいですよ、但し魔法も怠らない様にだけしてください。

 でないと、私……アグニアに怒られちゃいますから」


「えぇ、嫌だと言いたいんだけどなぁ」


「問答は無用です」


「そんなぁ~」


でも、気付いてくれる人がいる限りは安泰でしょう。




     ◇◇◇




 いつか夢を見た。

 好きな二人が出会う夢。

 現実は遠い理想郷の彼方ということは知っている。

 故に見た、イフの世界。

 見たかった。

 立ち会ってみたかった。

 一方はぶっきら棒、好きな人にしか話さない頑固者。

 一方はコミュニケーションが苦手な人、偽りの仮面を着けて人の顔色ばかり窺う癖に、本当の自分を知ってもらおうとする。

 どちらも大切な人。

 だから私は残念で仕方がない。

 二人が会えないこと。

 二人に――あと一つ気付いてもらえないこと。

 私が、大嘘つきなこと。

 一番の嘘つきが真を語るなんて。

 滑稽だね。

 そう、とても愚か。

「ねぇ、気付いてよ」と言いたい。

 言えない、私すら気付いていないから。

 今、思考に割いた瞬間の記憶すら残されない。

 記憶に収納されないのなら、展開する術すらない。

 だが私は今も願う。

 いつか、いつかきっと。

 私の呪いを解いてくれる人が現れると。

 それまでは常闇の世界で――。


「嗤おう」



如何だったでしょうか?

今回は書き殴った形跡がいくつも存在して、内容が散漫になっていたかもしれません。申し訳ございません><;

さて皆さん、嘘ついてますか?

最近私は大きな嘘つきになりました。

優しさから、未来の為、なんて偽善者気取りで大嘘を吐いたのですが、

まぁ~しっぺ返しが後からいっぱい出てきます。

皆さまは嘘など吐かれぬよう生きてください、そっちの方が生き難いですけど、素直に生きてはいけます。そちらを目指してください!

さてさて、この後の御話を少し。

17時よりもう一本サイドストーリーを掲載しようと思います。

内容は、これまたお師匠様の御話。

色々と、雑多に書いたのは先の未来に濃い内容で、ジグソーパズルが如く埋め合わせして頂くと「あそこはこう繋がるのかな?」と思って、書いていた訳ではありませんが、楽しみ方の一つとしてはありありかと思うので、その辺は静観して頂ければ(ガクブル)。

イリスもアスカもフェンリル君もお師匠様も。

そして、お師匠様を構成する4人の最重要人物。

いつかちゃんとだします。

それまで楽しみにしていただければと思います!

今回は更新が遅れて申し訳ございません、次はこのようなことが無いように努めていこうと思いますので!

それでは、また次の御話でお会いしましょう。

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