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有限は無限に語りだす。  作者: 向日雪音
本編
3/11

『忘却』

はい、おはこんばんちはです!

今日はお外が雨で外出が出来ないと思っていた矢先に、小説の方が捗っているのである意味強運なのかもしれません。えっ、違う……違う、そう?

と、とにかく、二話です二話!

今回は『忘却』に関するお話です。

皆さま、最近忘れポッポ区内(忘れっぽくない、と書きたかったのです!)ですか?

私は忘れっぽいです、よく色々忘れています。

今まで出来たことが出来なくなるというのも忘却機能の仕業、さぁ忘却機能なんて要るかな?

なんて思った方、是非読んでいってください!

(なお、何か効果があるとは言っていません)

私が考える忘却とは、こういうことですm(__)m

 人は機能として〝忘却〟を兼ねています。

 私も魔女ですが、人です。

 だから、忘れます。

 例えば……フェンリル君のごはんとか?

 時たま、物事を完全記憶してしまい、忘却機能を失っている人もいますが、特例はさておき。


 人が持つ〝忘却〟は、何故行われるのか?

 不完全性である要因の〝忘却〟を忘れた人とは?

 それは、ただのご都合主義なのかもしれません。

 人なんて、不完全であることが完全なのですから。




     ◇◇◇




 ――カランコロンと乾いた音がする。

「いらっしゃいませ」と奥の店主が事務的な挨拶を述べる頃、

 茶髪の小さな店員が腰まで頭を下げて、お客様を出迎えておりました。

 一頻りの恒例業務を終えるとお客様はゆっくりとした歩調で、

 薄暗い店内のカウンターへと歩いてきます。

 カウンター越しに相対するのは私――シャルロットでございます。


「すみません」


 本日来店のお客様は冴えない表情を浮かべ、医者みたいな白衣を着た黒髪に白髪の混じったおじさまでした。

 声色も、あまり元気がなさそうです。


「いかがなさいましたか?」


 私は、あくまで事務的に受け答えます。


「薬を一つ、お願いしたいのだが、よろしいかな?」


「えぇ、勿論」


 それが私のお仕事、薬屋さんとしての義務なのですから当然です。

 しかし、おじさまの口籠る姿は、注文を言いにくいお客様そっくりでした。

 仕方なく、私から切り出します。


「どのような薬を処方して欲しいのですか?」


 すると、意を決したのか俯きがちな顔を私の方へと向けて、


「〝忘れる〟ことを〝忘却〟する薬が、私は欲しい」


 こう言ったのでした。


「わすれることをぼうきゃく?」


 ポーションの瓶を拭いていた私の弟子――アスカは疑問符を飛ばしながら、自分のわかる言葉で咀嚼(そしゃく)しようとしますが、難しかったようです。

 私は弟子に分かりやすいように、


「忘れることを忘れたい……と言うことですか?」


 言い換えることで、言葉を直してみました。


「いいえ、忘れるだけじゃダメなのです。忘却したいのですよ」


 しかし、頑なに言葉を変えることはありませんでした。

 カウンターの向こうで余計に唸る可愛い声が聞こえてきます。

 非常に可愛いですが、疑問を解決させてあげられなかったのが師匠としては残念です。

 キュートなので、もう少し聞いていたいですが……だ、ダメですか、そうですか。


 それにしても、とても極端なことをいうお客様です。

 忘れることを完全に忘れ去りたいと言うのです、忘れることにこだわりがある様子なので、


「そんなに忘れたいモノがあるのですか?」


 ヒヤリングタイムです。本当に必要な薬を選ぶにあたって、聞くことは最重要なのです。

 純粋に私自身が気になるだけ、という点もありますが、

 多少の興味本位なのは悪しからずご了承頂ければと思う所存ですね。

 様々なお客様と出会う、これも楽しみの一つですから。


「はい、私は忘れたい。忘れることを忘却したいのです」


「その心をお伺いさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 思う節があるのか、黙考の末にゆっくりと言葉を紡ぎ始めました。


「私は、見ても分かるとは思うが――医者なのだ。

 生まれてからずっと人を助けることに従事したくて、念願かなって今の仕事に就いた。

 もう三十年は経つだろうが、この年になって物忘れが激しくてな、

 忘れたくないものを忘れてしまっている。

 カルテの場所、患者の癖、処方する薬。

 今はまだうっかりミスの類で済んでいるが、これ以上は忘れたくないのだよ。

 私はこれからも、走り続けなくてはいけない。

 何故、わざわざ忘れたくないものを忘却していくのか、私には分からないのだよ」


 演説を目の前にしているようで、

 節々に年を感じさせない力を、

 頑なに我が道を進む力を、

 他の言葉を寄せ付けない力を感じた。


 まるで、独裁者のようでもあり、年ゆえの独白でもり、

 夢を見続けたい悲痛な心の叫びにも、失礼ながら聞こえてしまった。

 それは私が同じ〝患者〟を相手にしているからなのか、一縷(いちる)の共感を覚えなくもなかったのです。

 ――私には、目の前のおじさまが小さく見えてしまいました。


「お客様」


「なんでしょう?」


「何故、記憶力の向上よりも忘却にこだわるのです?」


「それ故に人は〝不完全〟だからだよ、魔女さん」


 なるほど、そうですか。


「ふかんぜん、できがわるいこってこと?」


(変なトラウマを呼び起こすようなことを……)


 いつの間にか隣に来ていたアスカが、遠く先を見据えるように呟いる姿は、何処か痛ましく見えてしまったので、


「ある意味合っているけど、違いますよ。

 それ故に人は人なのですから」


 咄嗟に言葉を紡いでしまいました。

 今回は明確な答えを出すつもりはなかったのですが、


「どういうことですか、おししょうさま?」


「私にも、お聞かせ願いですな」


 二人の視線が集まります。


「勿論、語らわせて頂きますとも」


 私は、諦めと共にいつもの調子でお話を紡ぎます。

 今日は今日の答えを、携えて。




     ◇◇◇




「前提として、人は誰もが不完全な生き物なのですよ」


「それって、みんなできがわるいこってこと?」


「そうですよ、人は皆出来が悪い」


 ――それは、魔女らしい人への一言でした。


「勿論、私も魔女である前に人なので、出来が悪いことになります」


「でも、おししょうさまはそんなことはないとおもいます。

 わたしよりも、ものしりだし」


「そういう意味ではないのですよ、アスカ」


「?」


 アスカは小首を傾げ、よく分からないといった様子で私の言葉を待ちます。

 お客様は分かっているのか、分かっていないのか、複雑そうな表情を浮かべているのでした。


「神様は、最初から人を完璧に作る気はなかったのですから、ねっ――フェンリル君」


 ぼんやりと私がこの場に居ないワンコの名を呼ぶと、それはどこからともなく蠢く影が姿を見せ、


「なんだよ、呼んだか?」


 白々しく私とお客様を挟むカウンターに姿を現したと思えば、定型文を大根役者みたいに言ったのでした。

 急に現れたフェンリル君にお客様は小さな悲鳴を上げ、アスカは「わんわんだ」と手を振っています。私は彼が〝最初から〟いたのに、全く姿も現さないので不満が堪忍袋いっぱいに溜まっていますが、今は緒を切らす場ではありません。

 ちなみにファンサービスには応えるようで、アスカに向かって小さくウィンクをしています、ブサ可愛い。


「呼びましたよ、私たちの中で一番神々に近い覗き魔さん」


「言葉に悪意しか感じられねぇなっ!」


 本日も絶好調なワンコさんですが、今は業務中なのです。


「そんなツッコミは後から幾らでも捌いてあげますから、

 話の続きを一番説得力のある貴方がしてください」

 

 なので、私も辛辣です。うん、フェンリル君にはいつも辛辣ですか、そんなことはないですよ。

 飴と鞭の比率は一対九ですから、えぇ。


「まぁ、話は全部聞いていたからよ。話してやる、全く仕方ねぇなぁ!」


「あのぉ、いきなり手品を見せてもらって面白かったのですが、

 この話すぬいぐるみの戯言を聞く暇はないのだが……」


「「ぬいぐるみ……」」


「お前らなぁ、何かフォローぐらい入れろよな!」


 ノリノリで話し出そうとするフェンリル君に、つまらない手品を見せ付けられたと思っているお客様に、思わず吹き出しそうになる私とアスカでしたが、お客様の目の前では失礼です。


「まぁまぁ、そう言わずに――こう見えても彼は〝冥界の番人〟であり、死の神に近い存在でもあったのです。あなたの思う〝完全〟に、私たちの中で最も解答に近い彼をのけ者にして、話などできませんよ」

 私は敬意を払いながら、彼の可愛い頭をもふもふと触り、言いました。

 お客様は「むぅ、それなら」と半信半疑な回答ですが、それもこれもフェンリル君が小さいワンコになっているのが悪いのですから、尊厳もへったくれもないのです。


 早く――執行猶予期間が過ぎればいいのですけどね。


「はぁ、それで俺は話してもいいのか?」


 既に登場時よりテンションが五割強、低くなっておりますがそれでも、


「そうですね、よろしくお願いします」


 店の居候をする限りは、仕事もこなしてもらいます。

 ぷすんと吐息を一つ零して、


「忘却っていうのはな、死と同じなんだよ」


 フェンリル君は語り始めます。


「それは、つまり」


 お客様も言葉に反応を見せていきます。


「情報というモノを、脳という小さな箱にしか詰められない。

 でも、箱には容量が決まっているだろう。

 だったら、中に詰めた古い情報を外に出すなりしないと、

 新しい情報が箱に詰められないだろ。

 その時点で、古い情報は死んでしまっていんだよ」


「なら、箱を大きくすることで覚えられる情報量は増えるし、

 そもそもこの世にいらない情報なんてないのだ、

 わざわざ箱から出す必要性が全く感じられない」


「――なら、その箱は〝人間〟の年齢で何歳に出来上がる?」


 諸説ありますが、

 人間の脳が出来上がると言われている年齢は――おおよそ十二歳だと言われています。

 お客様も知ってか知らずか、苦渋を舐めた顔を浮かべておりました。


「情報だってそうだ、今の常識と昔の常識が違うだろう。

 お前は今の常識があるのに、昔の常識に脳の容量を割こうとするか?」


「……」


「あんたならそれぐらい分かっているだろうよ、お医者様」


 妙な間が店内を支配し、刹那的に――時よ止まれと、聞こえた気がした。

 彼は、苦労したのだと思います。


 これは、ただの想像です。


 だけども抗いたい現実がある。

 老いと言う名の抗えない事実を目の前に、人の〝不完全性〟を言い訳にして機能である忘却を、必要な忘却を、全て忘れ去りたいという。

 なんて、傲慢なのでしょうね。


「分かっているさ、だからこそ私の知らない〝魔法の世界〟なら、どうにかなるのではとも思ったのだ」


 少しだけお客様の表情が優しくなった、気がしました。


「阿呆か、そんな便利なモノあるんなら、俺たちがとっくに使っているわ」


 フェンリル君もそれを察したようで、苦笑交じりに言葉を返していた。


「そうか、やはりないか。でも、だからこそ私は忘れることを〝忘却〟する、

 これは医者として――諦められないのだ」


「お前なぁ……」


 諦めの悪いお客様のようなので、




「そんなに言うなら、試してみますか?」




 ワンコの言葉を遮り、ここでしゃしゃり出てくるのはこの私。


「おししょうさま?」


 心配そうに、私のローブの裾を掴むアスカには笑顔を向け、再度お客様に向き直る。


「あるのですか、そんな薬が」


「ありますよ、私は一度も薬がないとは言っていませんし」


「なら……!」


 お客様の瞳が怪しく煌めきます。


「但し、条件があります」


 一人と一匹の視線が集中する中、私は魔女としての仕事を果たすのです。

 儚い夢を抱いた人への手向けとして――〝有限の魔女〟は、有りし限りを作り出す。

 全ては、相対する者への祝福として。




     ◇◇◇




 ――私は、望んだ境地へと至った。

 生まれてからずっと望んだ世界の一つ。

 羨望を抱いて、遥か彼方の黄金郷をずっと睥睨(へいげい)していたのだ。


「そう、これが……!」


 そうだ、知識が逃げ出さない。

 人は常に情報に浸り続け、それを〝忘却〟という無駄な処理を行うことで、人類が生み出してきた英知をどんどんと逃していく。

 私には考えられなかった。


 だがそれも、今日で終わりだ。


 何故か、相対した魔女は条件を二つ提示し、私は要求を呑んで薬を手にした。

 まぁ、魔女の世界にも面倒な形式か何かが存在したり、または人によっては薬が合わなかったりするケースもある。

 私も医者だ、言いたいことは分からなくもないので、今しばらくは我慢する時だろう。

 こんな思惟に耽っている間にも、情報が零れ出ることはない。

 脳がブラックホールのように情報を吸い尽くしていく。

 人物・色・本の配置・表情・音……立ち振る舞い一つですら、脳は敏感に記憶処理を行い続けている。


 素晴らしい、素晴らし過ぎる。


 私は、私は今ここにある全てを記憶した。

 これこそ、人類が目指す英知だとも確信しよう!

 数秒と言う時間の中で、英知への扉に足を踏み入れたこと、これを授けてくれた者に感謝の意として述べよう。


「あ……あり、あっ――」


 そうしたいが、出来ない。

 おかしい、明らかにおかしいのだ。

 言葉が、出ない。

 忘れた訳ではない。

 情報の奔流に、言葉が押し潰されている。

 流れは止まりはせず、全てを瀑布(ばくふ)へと飲み込んでいく。




 これではまるで――赤ちゃんと同じではないか。




     ◇◇◇




「おししょうさま、そろそろとけいのながいはりがいっしゅうします」


「分かった、ありがとうね」


「いえっ、とんでもないです!」


 あぁ、可愛い私の弟子……いっそうちの子にしてしまいたいぐらいです。

 勿論、冗談ですよ?


「しかしよ、結果が分かっていて、どうして薬を飲ませたんだよ」


 怪訝(けげん)な顔を浮かべるフェンリル君に、私はこう言います。


「それは〝私達〟が、でしょ。

 お客様は結局、忘却機能が何故存在するかを理解していなかった、

 ただそれだけです」




 あの後、私はお客様に二つの条件を出して、お客様に忘れることを忘却する薬を提供しました。


 一つは、使用量の制限。

 一時間しか効果が出ない分量で、お客様には飲んでもらいました。


 一つは、店の中で使用して〝身体に何もなければ〟お持ち帰り可能。

 理由としては、今のお客様の状態に関係しています。

 薬を飲んだお客様は、飲んですぐは歓喜に溢れて色々な言葉を口走りながら、興奮冷めやらぬ状態が続いていましたが――数分後には立ったまま言葉を話せなくなり、その更に数分後には昏睡状態になりました。

 居合わせていた私達は、すぐに店の奥にあるベッドにお客様を寝かせて、容態を見守っていたのでした。


「でもよ、忘れることを忘却したら、

 情報の奔流に押し流されて今まで覚えた処理をアウトプット出来なくなるなんて、不出来にも程があるな」


 けらけらと笑いながら悪態を吐くのはフェンリル君。

 不出来かどうかはさておき、お客様が何故薬を飲んで倒れたのか?


 それは、記憶のオーバーヒートです。


 忘却機能が機能不全に陥ったせいで、記憶が蓄積され続けて、脳がアウトプットの処理を行えなくなった結果、外界からの情報をシャットアウトし、強制的にスリープモードになった状態が今のお客様の状態です。

 なので、薬の効力が切れると自然とお客様は目を覚ますので、決して怪しい劇物を飲ませた訳ではないのでご安心ください。

 フェンリル君の言葉に、アスカがむぅと唸ります。


「だからこそひとなのだと、わたしはおもいます」


「おぅ、確かに俺もそう思う。

 でもよ、確かにあのお医者様が言っていたことも分からなくはないぜ。

 忘却機能がある人は不完全だってな」


「なに、そんなこと?」


 ベッドの傍に備え付けられている椅子の上に、ちょこんと座るフェンリル君に笑顔を向けます。


「不完全じゃないと、物事に集中出来ないのですよ、人って生き物は」


 完全である存在なら、人は神に成り得てしまう。

 なら、一つの事をしていれば、自然と結果が付きまとい続ける。

 極端な例だけど、豊穣の神様なら雨を降らしたり、風を起こしたり、気候をよくしていれば、神様としての存在価値としては確立されます。

 それでもって、人々の信仰が神様にとってはご飯と等しいエネルギーの供給も同時に行っているので、例外を除けば――それに特化した方がいいのが神であり、それ以外する必要ないのが神であります。


 でも、人は違います。

 ありとあらゆることに順応しなければ、生きていけないです。

 それには適度に記憶を〝忘却〟し、今対面する何かの問題に注力するエネルギーを割ける方が、人としては出来上がっています。

 要するに〝忘却〟は一種の整理整頓なのです。


「だから、忘却も記憶もします。

 それは不完全じゃないとこの世に順応出来ないから、

 これが人に備え付けられた唯一性でもあると思うの――だから」


 一旦、言葉を切って小さな椅子に座るアスカに寄り、栗色の髪を優しく撫でてあげます。


「気にすることはないのですよ、出来が悪いなんて……皆がそうですから、

 その心を忘れずに頑張ればいいのです、分かりましたか?」


「はい、おししょうさま!」


 いつかの物憂げな表情は霧散し、満面の笑顔を浮かべる姿に私も自然と笑みを浮かべてしまいました。

 ただし、一匹だけ言い足りないことがあるようで、


「でもそうなると、一部地域で完全記憶人間っているけどよ。

 ある意味では完全な存在って言えるよな?」


 また面倒なことを言い始めました。

 完全記憶人間とは、文字通りなんでも記憶してしまう人のことです。

 私の言ったこと通りになると、確かにそうなりますが、


「ちがいますよ、おぼえることがいっぱいできても、

 ほかにけってんがあるのがにんげんなのですから、

 そのひともきおくはかんぜんでもひととしてはかんぜんじゃないはずです。

 でないと、そのひとはかみさまになっちゃいます!」


 確かに記憶が完璧でも、憶えたこと全てを問題に注力出来るとは限りませんし、それが出来るのなら全能の神に近い存在になってしまいます。

 嫌みのようにアスカに問いかけたフェンリル君でしたが、神に近い存在を自負するからこそ手痛いカウンターだったようです。

 純粋だからこそ、出てくる言葉なのかもしれません。

 私は自然と微笑んでいました。


「そ、そうだな。ところでシャルロットさんよ。

 なんで俺が説明する羽目になったんだ、

 お前『語らわせて頂きましょう』とか言っておきながら、

 ほとんどの説明を俺にさせやがって、どういうつもりだ?」


 なので、火の粉はこちらに飛び火を決め込んだようです。


「それはね、私が説明すると意味がなくなるからです」


「同じ〝患者〟を見る者としてってか?」


「そう、じゃないと私――同情していたと思います」


「お前に限ってそれはないだろう」


「案外私だって〝人〟ですよ?」


「そうですよ、おししょうさまがこまっているのならたすけてあげるのが、

 いそうろうのしゅくめーです!」


「そういう意味じゃねーんだけどなぁ」


「それよりも、二人ともお客様の前だということを忘れてない?」


「「あっ」」







 

 少しして、騒がしい周りのせいなのか分かりませんが、お客様は目を覚ますと元の忘却機能を取り戻しておりました。

 実体験を通じてお客様は、


「人として当たり前のように処理されている機能は、人が踏み入れてはいけないタブーのようなものがあるのかもしれんな」


 なんて言いながら、忘却を諦めて自分の在るべき世界に帰って行かれました。捨て台詞は言って行かれましたが、まだまだ表情は諦めていない様子なので、是非頑張って頂きたいものです。

 他人事?

 勿論、これが一期一会の出会いというモノです。

 意外と完全記憶って人間が欲しい能力の一つなので、一生かけて挑む命題としては面白いでしょう。

 あっ、お代は忘れず貰っていますよ、なにせ薬を通じて人に良くなってもらうのが私の役目ですからね?

 それすら忘れてしまったら、私は人よりも不完全になってしまいます。

 なので、今日も私は程よく物事を忘れます。


「そう言えば、フェンリル君のご飯買い忘れちゃった」


「はぁっ、お前いい加減にしろよっ!?」


「きょうもふぇんりるくんは、おそとでうさぎがりですね!」


「意気揚々と言うなっ!」


 ……別に、フェンリル君の反応が楽しいからやっている訳じゃないですからね。ほんとですよ、ほんと。


読了お疲れさまでした!

えっ、なんで労うのかですって?

それは当然、読む側も疲れるからです。

自分の時間をどんなに割いてもいいですが、他人に割いてもらった時間を無駄にするのはいけません。なので、読んで頂いた皆様には貴重な時間を使って頂きありがとうございますですね!

さて、本日はここまでになりますが、問題は次回更新の日程ですね。

次回は今日から二週間以内に上がるかと思います、早ければ一週間以内……ねぇ、頑張って書こうね私?(脅迫)

そう言えばもう一つ書いておきたいことがっ!

私は魔女が大好きです、すごく好きです。

というか、魔法も大好きなのです!

なので、どこかの魔女のお話に影響は受けております。

ただ一話ずつの完結じゃないと気力が持たないと思ってこのような形式のお話を紡ぐに至りました。

連続したお話ではないので、今後も「あっ、またこいつ書いてるな!」ぐらいの気持ちで、フラッと寄れるコンビニ的な小説になればいいなぁ~と思ったりしています。(ちなみにこの辺も影響受けていたりするのは秘密。後、いつかは長編も書いてみたいと思ってもいたり、いえ……なんでもあr)


ここまでお付き合い頂いた皆様、私の割いた時間にお付き合い頂きありがとうございます。それではまた、近々お会いできればと思います。

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