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黄との出会い

ある日♪森のなか♪熊さんに♪…ではなく小さな子供に出会いました。


そこは一面木々に囲まれていながらも、葉の隙間から月の光がキラキラと金色の髪をした子供に降り注ぎ、その一帯はまるで一枚の芸術的な絵画のようで、しばらく目を奪われた。


俺がゴブリンになってから初めて見た人間。それも弟と同じ年くらいの子供。この世界の美醜が前世と変わっていなければ、この子供は今は可愛い系の顔立ちをしているが、将来確実にモッテモテなイケメンになるであろう顔をしている。


すっっっごく!羨ましいが、どこかで見たような顔をしているんだよなぁ…。どこで見たんだっけ?



「うぅ…」


やばい。ぼ〜っとしていた。顔に見とれていて気付いていなかったが、その子供はとても痩せていた。まるで何日も飯を食べてないみたいに…。そして、服の隙間からちらっと見える、紫を通り越して黒くなっている殴られたかのような複数の痣。


DVでもあったのか?いやでも、来ている服はザ・貴族って感じのやつだし…。もしや魔物に?この森色々と生物がいるっぽいからそれか?いや、こいつこんなにちっこいし襲われたなら喰われたり噛まれたり引っかかれてたりして怪我とかしてるはずだからそれは違うか。一体、この子供になにがあったんだ?


そんなことを考えながら見つめてると、視線を感じたのか子供は目をゆっくりと開け、俺の方を向いた。子供と目があった。その瞬間、彼は目を見開きながらびくっと大きく体を震わせた。逃げるようにもぞもぞと体を動かそうとしているが、動けないのだろう。彼は何かを諦めたかのように目を瞑った。


これって俺に殺されるとか思ってる?ええ〜?俺、何もしないんだけどな。元人間だから殺す行為自体嫌だし。う~ん。どうしようかと迷い、きょろきょろと辺りを見渡した。すると視線の上の方、目の前の木に何かの実がなっているのが見えた。


おおっ!いいのがあるじゃん!


その木に生えていたのは、リコム(父ゴブリンから逃げているとき、妖精っぽいちっさい奴等が食ってたときに名前を言ってた)の実だ。リコムの実は、赤や紫など毒々しく食欲が失せそうな見た目だが、お腹と背中がくっつきそうなくらい腹が減っている時に我慢できなくておそるおそる食べた際、林檎と桃を足したような味で非常にうまかった。


俺はリコムの実がなっている木の下まで近づくと手と足を駆使し木に登り、リコムの実を二つ捥ぎ取り、俺はこのくらいの高さならそのまま降りれるだろうと、地面へと向かいジャンプした。


スタッと華麗に着地した俺は手に持っている二つの実のうちの一つを子供へ向かい差し出した。


『ほら、食えよ』


子供はしばらく目を瞑っていたのだが、鼻先に感じる果物の匂いを感じたのだろう。彼は恐る恐る目を開き、俺が手に持ってる物を見るときょとんっ、と間抜けな顔をした。俺は動かずに実を持っている方の手をもう一度少年のほうへぐいっと差し出すと、少年は困惑した表情で俺を見た。


「えっと、くれ…るの?」


『おう!』


俺の言いたいことが分かったのだろう。少年はどうすればいいか悩んでいるようだったが、お腹からクウゥウウ…と音が鳴り恥ずかしかったのか少し顔を赤くしながら俺のほうへと恐る恐る手を伸ばし、リコムの実を受け取った。まだ食べていいのか迷っているようだったので俺は自分の分のリコムの実をかじった。ぱく、しゃり…。半分ほど食べ進めていると、彼は俺の顔と受け取ったリコムの実を何度か交互に見ながら目を瞑り、口を大きく開けてその実へとかじりついた。彼は顔を下に伏せたまま二口目、三口目…と勢いよく食べ始めた。


無言の空間の中、しばらく二人の咀嚼の音だけが辺りに響いていたが彼は食べる勢いを止めると、ぽろっ、ぽろぽろ…と、静かに涙を流し始めた。


『なっ!?』


な、なんだ!?どうしたんだ!?俺、なにかやっちまったのか!?

衝撃で食べていたリコムの実を手から落としてしまったが、もうそんなのはどうでもいい!弟と同じくらいの少年が泣いていることが慌てていると、彼は泣きながらゆっくりと喋りだした。


「うっ…ふえっ、え、あ、ぼ、ぼく、こんな、やさし…ひっく、…初めて、で」



彼がゆっくりと顔を上げ、ピタッと、俺と彼の視線が重なった。そして彼は少し怯えの色を目に宿しながらも、俺の目をじっと見つめた。



「ありがと…」



そしてほにゃっ、と彼が笑った瞬間俺は思い出してしまった。どっかで見たことあるような子供だとは思っていた。思ってはいたが…まさか、ここ、ここは…あの、大人気乙女ゲームである『虹ファン』の世界だったのか!?

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