表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

秋原短編集

あなたといっしょに

作者: 秋原かざや

 小さな女の子の傍には、いつもツインテールのメイドロボットがいました。

「もう、おとうさんとおかあさんには……会えないんだね」

 涙を拭きながら、けれど、まだあふれる涙に女の子の瞳は濡れていました。

『はい、もうお会いすることはできません。人はそれを、夜空の星になったと言います』

「そっか、おとうさんとおかあさんは、お星さまになったんだね」

 それを聞いた女の子は、毎日夜空を見上げました。


「おかあさんに会いたいな……」

 そんなとき、メイドロボットは。

『きっとあなたのお母様もそう思っていることでしょう。この写真の入ったペンダントをつけて眠れば、きっと夢で会えることでしょう』

 そういって、女の子と両親の写真が入ったロケットペンダントを渡しました。

 女の子は嬉しそうにそれを首から下げて眠り……。

 翌日の朝。

「おかあさんがぎゅってしてくれたの!」

 嬉しそうに笑っていました。


「おとうさんに肩車して欲しかったな」

 そんなときもメイドロボットは、女の子を抱き上げて、自分の肩に乗せました。

『お父様にはなれませんし、背も低いですが、うーんと走ってあげますよ』

 女の子を足をしっかりと持って、楽しくご近所を走ってあげました。

「わあ、すごーい、はやーいっ!!」

 女の子の顔にまた、笑顔が浮かびました。


「おとうさんとおかあさんがいなくて……寂しいの」

 くまのぬいぐるみを片手に、パジャマ姿の女の子が、メイドロボットの所にやってきました。

『それでは、あなたのお父様とお母様がしていたように、優しくぎゅっとしてあげましょう』

 静かに眠るまで、メイドロボットは女の子を抱きしめながら、背中をとんとんしてあげました。その寝顔はとても幸せそうでした。


 女の子が寂しそうな顔をするたび、メイドロボットはずっと傍に居続けました。

「いつもありがとう」

 女の子が言いました。

『いいえ、あなたには、笑顔が一番似合うと思っているので、そうしているだけです』

 メイドロボットは言います。

『私にも心があれば、あなたの悲しみを理解できるのでしょうが、私には、その心がありません。ですから、あなたの笑顔になるようなことを、もっともっとして差し上げたいのです』

 その言葉に女の子は、いいことを思いつきました。

「わたし、ずっとあなたに元気づけられたの。だから、私もお礼したいな」

 にこっと一番の笑顔で続けます。

「だからね、旅に出ようと思うの」

『旅、ですか?』

 メイドロボットは悩みました。

 女の子は両親が亡くなって、一度も外に出ませんでした。

 ですから、これは元気になるチャンスです。

 でも……それが旅となると、ちょっと大変なことになります。

 近所に買いに行くよりも、危険があることでしょう。ましてや、一人旅など、女の子には早すぎます。

『どうして、旅に出かけるのですか?』

 まずは理由を聞くことにしました。

 外に出たいという女の子の願いを聞いてあげたいと思ったのです。

「だって、あなたに“ココロ”をあげたいと思ったんだもの。ロボットの“ココロ”なんて、この近所じゃ売っていないでしょ?」

 そして、女の子はメイドロボットの手を引いて、にこっと笑います。

「わたし、一人じゃ行けないから、一緒に行きましょ!」

 女の子の首には、あのペンダントが輝いていました。

『はい、喜んで』

 こうして、女の子とメイドロボットは、旅の準備をして家を出ました。

 久しぶりの外の陽の光に、女の子は瞳を細めて、嬉しそうに片手をあげました。

「しゅっぱーつっ!!」

『進行です』

 果たして、一人と一体は、“ココロ”を手に入れられるでしょうか?

 それはまた、別のお話……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ