あなたといっしょに
小さな女の子の傍には、いつもツインテールのメイドロボットがいました。
「もう、おとうさんとおかあさんには……会えないんだね」
涙を拭きながら、けれど、まだあふれる涙に女の子の瞳は濡れていました。
『はい、もうお会いすることはできません。人はそれを、夜空の星になったと言います』
「そっか、おとうさんとおかあさんは、お星さまになったんだね」
それを聞いた女の子は、毎日夜空を見上げました。
「おかあさんに会いたいな……」
そんなとき、メイドロボットは。
『きっとあなたのお母様もそう思っていることでしょう。この写真の入ったペンダントをつけて眠れば、きっと夢で会えることでしょう』
そういって、女の子と両親の写真が入ったロケットペンダントを渡しました。
女の子は嬉しそうにそれを首から下げて眠り……。
翌日の朝。
「おかあさんがぎゅってしてくれたの!」
嬉しそうに笑っていました。
「おとうさんに肩車して欲しかったな」
そんなときもメイドロボットは、女の子を抱き上げて、自分の肩に乗せました。
『お父様にはなれませんし、背も低いですが、うーんと走ってあげますよ』
女の子を足をしっかりと持って、楽しくご近所を走ってあげました。
「わあ、すごーい、はやーいっ!!」
女の子の顔にまた、笑顔が浮かびました。
「おとうさんとおかあさんがいなくて……寂しいの」
くまのぬいぐるみを片手に、パジャマ姿の女の子が、メイドロボットの所にやってきました。
『それでは、あなたのお父様とお母様がしていたように、優しくぎゅっとしてあげましょう』
静かに眠るまで、メイドロボットは女の子を抱きしめながら、背中をとんとんしてあげました。その寝顔はとても幸せそうでした。
女の子が寂しそうな顔をするたび、メイドロボットはずっと傍に居続けました。
「いつもありがとう」
女の子が言いました。
『いいえ、あなたには、笑顔が一番似合うと思っているので、そうしているだけです』
メイドロボットは言います。
『私にも心があれば、あなたの悲しみを理解できるのでしょうが、私には、その心がありません。ですから、あなたの笑顔になるようなことを、もっともっとして差し上げたいのです』
その言葉に女の子は、いいことを思いつきました。
「わたし、ずっとあなたに元気づけられたの。だから、私もお礼したいな」
にこっと一番の笑顔で続けます。
「だからね、旅に出ようと思うの」
『旅、ですか?』
メイドロボットは悩みました。
女の子は両親が亡くなって、一度も外に出ませんでした。
ですから、これは元気になるチャンスです。
でも……それが旅となると、ちょっと大変なことになります。
近所に買いに行くよりも、危険があることでしょう。ましてや、一人旅など、女の子には早すぎます。
『どうして、旅に出かけるのですか?』
まずは理由を聞くことにしました。
外に出たいという女の子の願いを聞いてあげたいと思ったのです。
「だって、あなたに“ココロ”をあげたいと思ったんだもの。ロボットの“ココロ”なんて、この近所じゃ売っていないでしょ?」
そして、女の子はメイドロボットの手を引いて、にこっと笑います。
「わたし、一人じゃ行けないから、一緒に行きましょ!」
女の子の首には、あのペンダントが輝いていました。
『はい、喜んで』
こうして、女の子とメイドロボットは、旅の準備をして家を出ました。
久しぶりの外の陽の光に、女の子は瞳を細めて、嬉しそうに片手をあげました。
「しゅっぱーつっ!!」
『進行です』
果たして、一人と一体は、“ココロ”を手に入れられるでしょうか?
それはまた、別のお話……。




