妖怪事件と銃少女後 2
こちらは妖怪事件と銃少女の舞台裏となっております。
重大なネタバレあり。
※ 妖怪事件と銃少女にまつわる重大なネタバレになりますので
まだ読まれていない方はまず、そちらを読了してください。
「はい! 妖怪事件と銃少女
お疲れ様でしたー!」
「お疲れ」
「お疲れ様でした」
「疲れたー」
「蝶亡、そんな登場してないのに
疲れるの?」
「そりゃ、疲れるわよ
だって跳躍ジャンプだの、弾丸避けだの
針で心臓刺されて殺されるわ
ワケの分からない宇宙空間の檻に閉じ込められるわ
割と疲れる目にあってるでしょ、これ」
「言えてる笑」
「ていうか、あんた呑気に笑っているけど
凶悪過ぎない?
大雑把にアンタの役割を説明すれば
超悪質な借金の取り立て屋じゃない、
私、借金の返済に遅れただけで殺されたんだけど?」
「ごめんごめん、殺さなきゃ私が誰か忘れられるじゃない?笑」
「だから笑っている場合じゃないでしょ・・・」
「まあ、そこらへんにしてやれ蝶亡
私なんかもっと惨めだぞ、
豆腐メンタルと呼ばれても反論出来ないくらい
こいつのせいで気が触れて自殺させられたんだぞ?
しかも、死後になって自殺しなきゃよかった
と思うようなモノを見せ付けられるし」
「豆腐メンタルなのは事実じゃない」
「ああ?」
「何この醜い、比べ合い」
「「・・・」」
「あ、はい
諸悪の根源、黙ってろって目ですね
ワカリマス・・・」
蝶亡、パーバション、ラルーは親友同士と呼べるが
その関係は
蝶亡・パーバション>ラルー
のように、謎の上下関係が出来ているのであった。
~蝶亡の殺戮斬刀について~
「ところで聞きたいんだけど?」
「何かしら、ラルー」
「蝶亡のお気に入りの刀・・・」
「殺戮斬刀ね」
「・・・その名前は何?
狙っている?笑」
「この刀が妖刀って事は知っているわよね?」
「あ、スルーですか・・・
はい、妖刀って作中にも出てたしね」
「通常、妖刀というのは
凄まじいばかりにずば抜けた名刀が
膨大な人間を殺し、その怨念と血と命を吸い上げ
偶然に成り果てるものなの」
「ほう」
「けれど、この殺戮斬刀に限って
話が変わってくるわ」
「あら? どうして?」
「何故なら、この刀は・・・
最初から“妖刀”として作られたものだからよ」
「・・・!
妖刀って、意図的に作れるものなの?」
「原来、意図的に作れるものではないわね
名のある匠が作った名刀を、更に名のある剣士が使い
100、1000と人の命を同じ刀で奪い続けてやっと
出来上がる狂気の代物のはずなのだけど・・・
この殺戮斬刀については
詳細の来歴が分かっていないの
何百年も昔に私の手に渡ってきたわけだから
今から、この刀について調べようとすればもっと苦労すると思うわ?」
「まあ、今分かっている事だけで十分だわ
もっと教えて頂戴?」
「物好きね
私が知っているのは、この妖刀は妖刀になるべくして“作られ”
そして“使われた”事とこの妖刀が紛れもない名刀だという事だけよ」
「・・・使われた?」
「作中でも言っているでしょう?
この殺戮斬刀は舞台となった古い町に起きた
侍三百人斬りにおいて使われた、と・・・・」
「誰がそんな事をしたのかとか
誰が意図的にその“妖刀”を作ろうとしたのかとか
それも知らないの?」
「ええ、残念だけれど・・・」
「まぁ、随分と曰くのある刀だって
よ~く分かったわ・・・」
ラルーは思った。
何でこんな明らかにヤバイ刀を好き好んで
蝶亡は愛用しているのか、と。
ラルーは思った。
「・・・幽霊よりも、人間が怖いわ・・・」
「口に出てんじゃないわよ
しかも、私は人間じゃないし」
「・・・ナイスツッコミ~」
「貴女という“人間”が一番、不可解よ」
~パーバションの戦闘スタイルについて~
「ハロー、パーバション」
「エセ英語を話すな、狂人」
「はいはい、分かった分かった・・・
で、聞きたいんだけど・・・」
「私の戦闘スタイルについてだろ」
「よく分かったわね! 遂に心で通じ合えるように・・・!」
「蝶亡からの流れを見れば分かるだろ
お前は他人を馬鹿にしすぎだ、アホが」
「・・・教えて頂戴」
「・・・ご覧の通り
私は分厚いコートを着ているが、
この下には大量の銃を仕込んでいる
戦況や場所、敵の状態や
場面によって最も最適な銃を自在に使用できるように
私が考えた戦い方だ
最も、潜入とかには物凄く不利だ」
「まあ、確かに不利ね
潜入するようなところなら当然
武器を隠し持っていないか、チェックか入るだろうし
貴女はあまりにも大量の銃を体中に仕込んでいるせいなのか
火薬の匂いがするのよ、その道の人間が嗅ぎ逃すわけがないわね」
「私はあくまでも
攻撃特化の人間だからな・・・」
「もう死んでいるけどね!
生前も、まさにバーサーカーだったから
死んでいるようなものだけど」
「あ?」
「・・・でも面白い戦闘スタイルだと思うわ
一見、貴女は子供だし
外見で騙せるわけだし
先手を打ちやすい点は非常に良いわ」
「そりゃ、どーも」
「・・・愛想の無いガキね」
「言っておくが、お前より年上だからな?」
「・・・はっ」
「お前自身、自分が13歳と忘れているのか・・・
悪質だな、おい」
「ただ、分からない事があるのよ
どうして銃なの?
ナイフとか、もっと手頃な武器なら沢山あるのに」
「・・・対人間ならナイフが良いだろうが
生前の私の仕事を忘れたか?
私は数々の化け物と戦っていたんだ
超接近戦を挑めば、私のような子供は呆気なく返り打ちにされる」
「一撃必殺が狙える銃を選んだわけね?」
「銃は必要最低限の筋力と知識、技術さえあれば
私のような子供でも使いこなせる
そして幸いにも
筋力も知識も技術も、練習を積めば確実に得られるものだ」
「・・・パーバション、子供とは思えない
プロの風格を持っているわよね」
「なんだ?」
「いや、なんでもない
うん、私と近いようで遠いわ・・・」
パーバションは地道に練習を繰り返し
高い射撃技術を得た、努力家だが
ラルーは天才的な才能にモノを言わせる
これまで努力や練習などした事がないような人間である。
~ラルーと蝶亡~
「それはそうと、最近
刀を擬人化させるとかいう高等な遊びが
日本人の、主に女性の間で流行っているそうよ」
「え、本当に何その高等な遊びは・・・
何が面白いのか分からないのだけれど」
「なんでも、刀を自分好みのイケメンにするんですって」
「・・・いけ、めん?」
「・・・嘘でしょ、蝶亡
イケメンを知らないの」
「・・・大真面目にどういう意味なの」
「えーと、美男子の事よ」
「・・・美男子をどうしてイケメンと言うのかしら」
「知らなくても誰も困らないわ」
「ええ、それもそうだけど・・・
どうして突然、そんな話題を持ち出したのかしら?
既に展開が読めているけど・・・」
「じゃあ、どうしてわざわざ聞くの
まあ、単刀直入に言えば
貴女の殺戮斬刀を擬人化させてみない?」
「本当に止めてくれる?
刀を擬人化させたら、戦闘の時
どうやって戦えば良いのよ」
「蝶亡には鬼火を投げつける攻撃が残っているじゃない」
「鬼火は投げつけるものじゃないわよ!?」
「え? 投げつけるものじゃないの?
じゃあ、何のために蝶亡は自分の周りに鬼火を漂わせているの」
「・・・照明代わりかしら?」
「どこの女優よ
それなら、鬼火を投げつける方がマシよ」
「絶対、鬼火は投げつけてはならないわ
彼らだってそんなの嫌なはず」
「彼らって・・・鬼火、意思があるの!?」
「あるわよ! れっきとした妖怪なのよ!?」
「本当に存在意義の分からない妖怪って多いわ・・・」
「うるさいわね
それに、攻撃手段が普通の斬撃しかないように思われているのが
最も聞き捨てならないわね」
「あら?
それ以外の攻撃手段があったの」
「あるわよ
私は現存する妖怪の能力を一時的に借り受ける能力を持っているの
強力な妖怪の妖力を借り受けるだけでも十分だわ」
「へぇ~、関心したわ
で、話を戻すけど殺戮斬刀を擬人化させましょう」
「だから、嫌だって言っているでしょ!!」
このあと、蝶亡が頑なに殺戮斬刀、擬人化を拒んだため
擬人化出来ず。
割とラルーは最近のトレンドにも関心があり
逆に蝶亡はそれに物凄く疎い。
ちなみに、パーバションと比べて蝶亡の方がラルーとは仲が良い。
~ラルーとパーバション~
「へいへいへーい!!」
「なんだ、撃っても良いという合図か」
「パーバション、どれだけ私の事が嫌いなのよ」
「大嫌いだね
何度、蜂の巣にしても足りない」
「でも、その嫌いな人間に頼らなければ
貴女は地獄に堕ちるわけだけれど・・・
どんな気持ちー?」
「私が確実に地獄に堕ちるように追い詰めたのは貴様だが?」
「・・・」
「私が地獄に落ちたのはラルーのせいだと
神に訴えれば、天国に行けずとも
お前には何らかの天罰が下るやもしれないな?」
「それはないわ」
「何故、それだけは断言した・・・?」
「だって私、神様から嫌われているんだもん!
既にうざいくらいに神の裁きを受けてるわよ!」
「ほあああああああああ!!!?」
「パーバション、冗談のはずが
だいぶ的を得た話でびっくりしちゃった?笑」
「・・・この女、つくづく何者なのか分からなくなるな・・・」
「あっははははは!」
「・・・」
「ふふふふふふ・・・・!!」
「・・・」
「くしししし・・・・!」
「・・・ムカつく」
このあと、ラルーは綺麗なヘッドショットを決められたとさ。
~ラルーと人に化ける妖怪たち~
「やっほー! ねえねえ狐知らない?」
「狐ですか? さっき書斎にいるのを見かけました!」
「ありがとー・・・君誰?」
「兎ですよ!」
「・・・うん、ありがと、兎」
『常に人間に化けてくれて、接してくれるのは良いけど・・・
どいつもこいつも、すぐに別の人間の姿に変えるから
誰が誰なのか分かんねぇな・・・』
「さて、書斎に来たわけだけど・・・
この中に狐はいるかしらー!?」
「「「知りませーん!」」」
「何でだよ!
貴様ら、同じ人間に化ける妖怪なんだから
お互いの区別ぐらい付いてるだろ!!」
「・・・付いてませんよ?」
「付いてないの!」
「ええ、相手が誰か分からなくても
同胞な以上、困る事なんてほとんどないじゃないですか」
「・・・狐はどこにいるか分かる?」
「狐なら厨房で見かけました」
「うん、ありがと
えっと・・・君は・・・?」
「猫です」
「ああ、パーバションに撃たれて川で溺れてた黒猫ちゃん?」
「いえ、それは別の猫ですね」
「・・・」
『くっそ・・・ただでさえ、見分けが付かない上
同じ種類の動物が何匹も被っているから
猫違いだの、狸違いを起こすんだけど、めんどくさ!』
「と、厨房に着いたわ
狐ー! いるー?」
「はーい!」
「やっとか!」
「あれ、随分と探してくれていたんですか?」
「そうよ! ずっと探し回ったんだから!
それで聞きたいのだけど・・・」
「はい、なんでしょう?」
「人に化けるプロと見込んで聞くけど
人間の姿のまま、尻尾とか耳だけ生やしたり出来るかしら」
「え、出来ると思いますが
下手くそなヤツだと、むしろその姿を維持するのに
苦労すると思いますよー?」
「よし、それでいい!
狐、人に化ける妖怪を広間に集めて頂戴!
重大な話があるわ!」
「は、はい! ラジャー!」
・・・10分後
「お前ら、姿を変えすぎ!
ややこしすぎ! 適当すぎ!
これより“人化中 元耳尾出の令”を出す!
人に化ける際は本来の耳や尻尾を出せ!
それと、人間に化ける際は常に同じ人間の姿をしていろ!
ちょくちょく別人になるな!
こっちがどれだけ混乱すると思ってんだ!? いいか!!」
「「「「ラルーがガチギレしていらっしゃる・・・!?」」」」
以降、猫違いとか起きる事は無くなりました。
ちなみに妖力の少ないもの
人に化けるのがただでさえ苦手だったものは
この日から人に化ける必要がなくなったので
むしろ、喜んだそうです。
番外編 ~番人とラルーと雪女~
「はぁ・・・」
「どうしたんだい?
すっごい重いため息なんかついて」
「いや、うちの番人が
番人のはずが賄賂を受け取ればホイホイ
家に侵入者を上げるから、どうしようか困って・・・」
「割とひどい悩みじゃないか、そんな不真面目な番人なんか
クビにしてしまいなさい
そんなヤツを放置していたら、いざという時
もっと大変な事になりそうじゃないか」
「そうは言ってもねぇ・・・
信用の出来る番人は他にはいないしなぁ・・・」
「なら、私がそいつの代わりをしてやろうか?」
「・・・まじすか!!」
「そんなヤツに門を任せるなんて
この屋敷に住んでいる私だって不安だよ
自分の家なんだから、全力で門番の役目を果たすよ?」
「・・・これは、良い話ね・・・!
アイツをクビに出来る良い機会かしら?」
「ちょっと待った!!!」
「やっぱ沸くと思った」
「話は聞かせてもらった!!
って、予測されてしまいましたか・・・」
「ほう、アンタが噂の番人かい」
「貴女の噂はかねがね聞いていますよ?
雪女さん、貴女の戦闘術は素晴らしく
特に塗り壁と協力したときは完璧だそうで・・・」
「ええ、どっかの賄賂を受け取って簡単に人の侵入を許す
門番よりも遥かに私の方が優れているだろうね?」
「・・・・くっ」
「ちょっと、少しは反論しなさいよ番人
何、呆気なく論破されちゃっているのよ情けない」
「そもそもラルー
どうしてこんなヤツを番人にしているだい?」
「ん・・・契約しているんだよ」
「契約?」
「コイツ、一応、本物の死神なんだけど
人間の魂を刈り取るよりも
人間界の小銭を集める事を優先してしまうから
いつも集める魂のノルマが不足して大変な思いをしているんですって」
「どれだけ金が欲しいんだい・・・」
「そもそも、コイツ魂を刈り取るのが下手くそで
その上この性分でしょ?
だから、しょっちゅうのように魂を奪っては
無駄に散らすだけの私とコイツで契約したの
私が殺めた魂をコイツが引き取って自分の収益とする代わりに
コイツは私の魂を“死”から遠ざけてくれるって」
「・・・え、死から遠ざけるって・・・」
「まあ、詳しい事は知る必要はないわ
ただ、私の魂を死から遠ざける事として
コイツは自らこの屋敷の番人に名乗りを上げたわけ」
「なるほど・・・
・・・重大な契約違反をしていないか、こいつ」
「うん、私にもそう見えるんだけど・・・」
「ちゃんと大事な時は真面目に働いてますよー!」
「と、こんな感じに主張するわけ」
「なるほどなるほど・・・
悪知恵の働く死神だねぇ・・・」
「それぐらいなければ、こうして存在は出来ていませんよー!」
「へぇー、まあ関心するけど・・・
賄賂を受け取って簡単に侵入者を見逃すのは許せないね」
「・・・殺気・・・!?」
「死神なら、死なないんだろう?
なら、こうしよう決闘で勝ったものが
門番の座を得ると・・・大丈夫、私だって死なないんだ
戦って損はないはず・・・!!」
「・・・売られた喧嘩は、買うしかありませんねぇ・・・!!」
「・・・何この、白熱した門番権争い・・・
私、どうしたらいいわけ?」
・・・・1時間後
「ふっ・・・確かに、素晴らしい薙刀使いでしたよ
雪女さん・・・」
「くっ・・・銃娘を思い出すねぇ・・・!」
「え、うそでしょ
まさかすぎる展開だわ・・・!
番人が勝つなんて・・・!」
「じゃ、門番権は私のもので良いですね?」
「・・・物凄く解せぬ・・・
何なんだこいつ・・・」
死神番人は本気出したらすごく強い人でした。
ただ、本気は出したがらない人なので
相当追い詰められなければ戦いません。
雪女は決して弱いわけではないのですが・・・哀れ。