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月希姫の物語後。

初めましての方が居れば、久しぶりの方が居るでしょう。

ラルーです。ええ、殺し屋で殺戮中毒の恐らく最強のラルーです。

うん、なんかナルシストじみてきたなぁ・・・。

まぁ、それは置いておいて・・・。

突然ですが


後 、一 時 間 と 二 十 分 で お 兄 ち ゃ ん が や っ て く る


どうしよう、どうしよう・・・。

別に私はお兄ちゃんが嫌いな訳ではないのだ。

むしろ、大好き過ぎて勝手に発信機と盗聴器を仕込んでいるくらいだ。

おかげで後、どのくらいで久しぶりにお兄ちゃんが帰還するかが解る。


私の大好きなお兄ちゃん・・・。

とても自由気ままな人で、ろくに家に帰らずどこかを彷徨う、

私と兄弟なだけに、私と同じ殺戮中毒の殺し屋で武器に大鎌を使う

私と弟のナラスだけのイケメンなお兄ちゃんです。


では、何故そんな大好きなお兄ちゃんが久しぶりに帰ってくる、

とても喜ばしい事のはずなのに、私は困り果てているのか・・・。

それは単純。


今の私の惨状を知られたくないと言うだけの事だ。


月希姫の物語を知っていれば解る事だ。

(解らない人は別の作品の、“束縛と自由の狭間の少女は・・・。”を

読んでください・・・!)


私は最近、あの不愉快で憎らしい邪魔男の事を考えるだけで、

殺したくて殺したくてめちゃくちゃに・・・。

更には、カルムの事もある・・・。

・・・。やはり隠しきるなんて到底、不可能だ・・・。

ならば・・・。説明好きな私が出来る事は!説明するしかない!

あ、後の説明はいらなかったわね・・・。


「狐!猫!アントニー!カルム!リビングに集まりなさい!」


私は大声で皆を招集する。

ちなみに私はリビングのやたら大きなテーブルの上に立ち、

胸を張って腰に手を当て、堂々とカッコつけている。

カルム辺りがツッコミを入れる事を期待して・・・!


「何だ・・・。ラルー・・・?って、えええええ!?

何、テーブルの上に土足で立っているんだよ!?

これは一体、どういう状況!?」


予想通りにカルムが一番乗りでやって来た。

眠たそうに目を細め、頭を掻いていたが私の姿を見て驚き、

目を見開き、ツッコミを入れる。どうやら眠気もすっ飛んだようだ。

フッ、これも予想通り・・・!


「カルム!この由々しき事態を理解出来ないとは、まだまだ浅はかね・・・。」


私はビシッとカルムを指差し妖しげに笑う。

それにカルムはポカーンとしている。


「そんな余裕で満ちている笑みを浮かべて言うか?

全然、由々しき事態には感じないぞ・・・?」


そしてカルムは正論を言う。

む、刑事さんと家庭教師君の影響かな?

影響を受けて、カルムが正論を語るようになったよ・・・?


「ご主人様~。いかがなさいましたか?」


「もしかして客人ですか・・・?」


そして狐と猫がやって来る。

・・・。私の立ち位置に関してはスルーか・・・。つまらない。


狐と猫は私と契約を交わし私に付き従う使い魔的な?・・・。うん、

使い魔じゃなくてペットだね、こいつ等。

胸ほどの長さの黒髪で黄金の瞳を持つ猫耳少女が猫。

腰ほどの長い金髪の金色を帯びた黒い瞳を持つ九つの尾の女が狐。

その正体は化け狐と化け猫だ。

ちなみに狐はかつて世を騒がせたかの有名な“白面金毛九尾の狐”である。

故に実力的には狐の方が上で猫が下だ。

だが時々、どっちが上なのか下なのかが分からなくなる時がある。

何故なら、狐はイヌ科生物で猫はネコ科生物・・・。なので狐は私をご主人様と呼び

私に忠誠心を示しているのに対して、猫は甘えるときは私をご主人様と呼ぶが

それ以外の時はラルーと呼び捨て。時々言葉の端に刺を感じる時がある・・・。

その為か地位的には猫が上で“白面金毛九尾の狐”が下という普通ではありえない状態が形成された。


「客人以上よ、猫。お兄ちゃんが後、一時間と十分後にやって来る。」


「お兄様ですか!?とても久しぶりですね~。」


「何ヶ月ぶりよ、その間どれだけ大変な事になってたかも知らないで・・・。気ままにも程がある、

あ、これは私が言える事じゃないね・・・。」


お兄ちゃんだと聞くと狐はとても嬉しそうに尾を振る。

お前、本当にあの“白面金毛九尾の狐”・・・?


「え、ちょ、どういう事だよ!?ラルーはナラス以外に兄弟がいたの!?」


「誰がいつ他に兄弟はいないって言ったのよ、ちゃんとお兄ちゃんにも優しくしてね?

お父さん?」


「まぁ、別に構わないが、今までどこにいたんだよそのお兄さんは、」


「最初はアメリカで一ヶ月滞在して、次にイギリス。その後はヨーロッパ辺りをフラフラ彷徨って、

家があるフィンランドに先日到着したばかりよ。放浪癖があるのかしらね?」


「・・・。仕事は・・・?」


「私と同じ殺し屋よ?ちなみに殺戮中毒な所も武器に大鎌を使う所とかも同じよ?

いやー、さすがは血のつながりって所ね!」


「・・・。ごめん、頭が痛くなってきた・・・。」


「どうしたの?吸血鬼なんでしょ?何で頭痛がしてくるのよ?」


テーブルに手をついてカルムは額を押さえる。

絶対、頭痛は嘘だ。苦悩を主張しているのだ。


「ガチャ!!」


「アントニー遅い!え?何?仲間の鎧拭きに手間取ってた?なら仕方ないわね・・・。

って言うと思った!?アントニー後でダンスホールの掃除をなさい!!」


ようやく遅刻のアントニーがやって来る。

玄関に壁に沿って武器を掲げてた鎧だ。

中に人は入っていない。玄関にある鎧全てが動き出す事が出来るがその中は空。

すなわち、ひとりでに動いているという事だ。

あの鎧にはかつての所有者の思念がこもっており、主に忠誠の限りを尽くすという想いから

私に従う。ただし言葉を話す口がない為、他の人からはアントニーの伝えたい事が伝わらない。

私がその思念を読み取り通訳しなければならないのがちょっとした欠点である。

うん、私が霊が見える人で良かったよ。


「さて、皆集まったので、直ちに命じます。

狐!猫!宴の準備をなさい!アントニー!仲間全員を総動員して屋敷を綺麗にしなさい!

カルム!お兄ちゃんの説明をするから心して聞くように!では!解散!」


そう私が大きな声で皆に命令をする。

そして私の「解散!」を合図に慌ただしく皆は自分の仕事に励む。

ナラスを呼びたい所だけど・・・。今はとても気まずいのよね・・・。


「ラルー、そのお兄さんの事を教えてくれるんだろう?」


「ええ、お兄ちゃんの名前はルクト

私と同じ、アルビノ・・・。なのだけれど、ある実験の実験台にされたために髪は黒く、

瞳はそのまま・・・。イヲナと同じシリーズの一人、イヲナと同等の力を持っているわ。

性格は私と似通った点が多いわね!

だけど違う所があるとすれば顔を隠さず瞳を青に見せているってトコだね・・・。

勇気があるのよね・・・!いつだって格好良いし、優しいし・・・!」


「なぁ・・・。ラルーはブラコンか?」


「え?なんて言った?聞こえなかった。」


「いや、なんでもない・・・。」


お兄ちゃんがいて、親代わりの誰かがいるなんて本当に私と月希姫は似ているのだよね・・・。

月希姫も宴に招待しようかしら?うーん、でもお兄ちゃんを独占したいし、やめておこう。


「ラルー、随分と盛大にやってるなぁ・・・?そんなに僕が待ち遠しかったの?」


「ええ、お兄ちゃんがとっても待ち遠しいわ・・・。

というより、とっても愛おしいのよ!早く会いたいわ!」


「そっかそっか、

こんな絶世の美女な妹にそんなに愛されているなんて僕はなんて幸せ者なんだろうな!」


「・・・。ん?あら・・・?」


「ん?今更気付いた?」


「・・・。予想時間より圧倒的に早いってどういう事ッ!!?猫!狐!宴の用意は出来てるの!?

早くして!もうお兄ちゃん来ちゃったじゃないの!!」


私は後ろの人物が何者か悟ると影から投げナイフを取り出し、

猫に向けて投げる。急かしているのだ。


「え!?もう!!?早い!」


そう叫ぶと、猫は飛んでくるナイフを目前まで迫った所で手で掴み取る。

持ち手の部分を器用に掴んだので、無傷だ。


「狐!ご馳走はまだ!?アントニー!掃除はいいから歓迎の旗をッ!!」


猫はリーダーシップを発揮して、適切な命令を下す。

将来、私がいなくなっても猫にこの屋敷の管理を任せれば安心だ。


「お、お兄ちゃん・・・!い、今さっき私が言ったセリフ・・・。

忘れてくれないかしら・・・?」


私は緊張のあまりお兄ちゃんに振り向けないままお兄ちゃんに聞く。


「今の最高に嬉しい言葉を忘れろって?酷いなぁ・・・。

別にいいじゃないか?それともラルーは恥ずかしがっているの?」


「恥ずかしい、なんて感情はとっくの昔に忘れたわ。

忘れて欲しい理由はお父さんの誤解を招くようなやり取りだからよ・・・!」


「・・・!?お父さん!?まさか、この吸血鬼、ラルーの記憶の・・・・!?

そう言われてみればお前はあのカルムだな!?」


目の前で呆然とお兄ちゃんと私のやり取りを見て固まっているカルムは、

突然、私を突き飛ばした。

は?突然何すんのよ!?と怒ろうとしたけれど、次の瞬間その考えはすっ飛んでしまう。

私の頭上を横切る大きな刃・・・。これは・・・。お兄ちゃんの大鎌の刃だ。

その刃はカルムの首を狙ってカルムに迫っていた。

何で、お兄ちゃんがお父さんたるカルムを殺そうとするのか?

そんな事を考えるのを後回しにして、私はお兄ちゃんの大鎌の刃を止める為に、

お兄ちゃんの大鎌の持ち手の部分を掴み、大鎌を止めた。


「お兄ちゃん!何でカルムを殺そうとするの!?最後に生き残ったお父さんなんだよ!?」


「それでも、僕は許さない!

お前は記憶を失っていたとしてもラルーに酷い暴力を振るった!

たった一撃だけで!ラルーの心は病んで歪み、そして壊れた!粉々に砕いたんだ!

あの途方も無い絶望が!

壊れてもう何も残らない空っぽの心を満たす悲しみを!

お前が味わせたんだ!

そして、白く神のように美しかった彼女を黒く狂気満ちる死神に貶めたんだ!

その後もずっとずっと苦しませて!!散々、傷つけたクセに!

今更、記憶を取り戻して僕やナラス、ラルーのお父さん?

何様だよッ!?謝罪の一言もないのかよ!?あの邪魔男が最も最低なクズ野郎だけど、

その次に愚かなのはお前だよッ!!」


「・・・・!?」


「止めてよ!ルクト・・・!

カルムは記憶を消されてたんだよ・・・?

仕方ないじゃない!あれはカルムの本心ではなかったのよ!

ねぇ、許してあげて・・・?許しの心を忘れてはいけないって、

あれほど言ったじゃない・・・!」


私はお兄ちゃんに抱きつきながら、必死に訴えた。

カルムまでを失ったら私にもルクトにも何も残らない。

残る物は世にもおぞましき狂気と怨みだけ・・・。

だから、許して欲しかった。カルムを許して、私達の失った時を取り戻したい・・・。


「俺は・・・。確かに図々しかった・・・。

今まで散々、苦しめてきたのに父親ヅラって・・・。

悪かった・・・。けど・・・。ラルーを一人にしたくはないんだ。

ラルーはずっと一人で耐え続けたんだ。その傷は決して癒えず、

痛ましさを残したままラルーは戦うんだ。誰にも同情されず、

ひたすら当然の報いだと罵られ、誰にもその心を理解されない・・・。

だから・・・!やっと、その心を理解出来た俺は!ラルーを出来る限り守りたい!

かつての俺がそうしたように、ラルーのためなら何だってする。

せめて・・・。今までの俺のした事は許さなくても、ラルーと一緒にいる事を

どうか許してくれ・・・!」


「カルム・・・!」


「・・・。だったら・・・。僕を見返す気でラルーの父親として、

・・・。僕たちの家族として、生きろよ。ラルーに笑顔を取り戻させろ、

空っぽになってしまった空虚のラルーの心を幸せで満たせ、

僕達の・・・。失った時間を・・・。取り戻せ、それで・・・。

許してやる。その・・・。父さん、」


「・・・!!」


「お兄ちゃん・・・!」


お兄ちゃんが・・・。カルムを許してくれた。

幸せになるために・・・!


「あぁ、よろしくな、ルクト。」


「よろしく、カルム。」


「あれ!?父さん呼びは!?」


「なんかあの邪魔男を思い出すからヤになった。」


「何でだよ!!?俺、結構、嬉しかったんだけど!!」


「そっか、残念だったな。あれでもう最後だ。」


「最後って、酷過ぎだろ!?父さんって初めて呼んだ次の瞬間、

呼び捨てになってるってさ!?」


ちょっと、結構いい雰囲気になってたのに、次の瞬間それをぶち壊す方がずっと

酷すぎるわ。しばらくあの雰囲気に浸りたかったのに・・・。


「あの~、ご主人様。宴は・・・?」


「あー、狐。宴はちゃんと開くわよ。というか、もう始めちゃってよ、もう、」


「え!?もうですか!?ええと!!これからルクト様・・・。

お兄様の歓迎の宴を開きます!!はい!アントニー!クラッカー!」


狐は突然の無茶ぶりに慌てて宴の開幕を宣言し、

アントニー率いる鎧軍団のクラッカーの合図を送る。


パンッッ!!!


そして同時にクラッカーの音が響き渡る。

今夜はとても楽しい宴の夜になりそうだ・・・!



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