死体の怪
「なんで俺だけ、こんなに忙しいんだ!」
誰も居ない深夜のオフィスに
その声は虚しく響く・・・
山田浩23歳
独身 一人暮らし
趣味:映画鑑賞
去年 大学を卒業後、設計事務所に入社
今日も残業だった・・・
昨日も一昨日もだ・・・
そして明日も残業だろう・・・
仕事が出来るようになって来た俺に
上司は山ほど仕事を押し付けてくる
その上司は定時で
「お先。」
と一言、言い残して帰って行った。
無能な上司を持つと苦労する・・・
「明日の会議の資料位、自分で作れよ!」
と心の中では思っていたが
「お疲れ様でした!」
と、引きつった笑顔で挨拶していた
自分が嫌になる・・・
こんな自分が嫌いだった
このアホ上司が
押し付けて来たのは
会議の資料作りだけではない
今年、入社した新入社員の
教育係だ
新入社員の教育は
1年先輩の社員が担当するのだが
よりによって
俺の担当の新入社員は
小林一だった!
数人 入ってきた社員の中で
小林一を俺に あてがうなんて
上司の陰謀なのか?
女子の担当か
最低でも
普通の人間を
割り当てて欲しかった
小林一は100キロ以上は、あるであろう
デブだった!
近くに居るだけで暑苦しい
それだけなら良いのだが
こいつは、全く使えない
さっき言ったことは、すぐに忘れる
メモは取らない
話は聞いていない
作業は遅い
ガサツ・・・
言い出せばキリがない
そんな小林一にも取柄があった
飯を食う事だ
食堂に行く速さ
飯の量
食う速さは
おそらく社内№1
食う事に関しては
小林一は優秀な社員だった
その日もクタクタだった
アホの上司と
使えない新入社員の
おかげで帰宅は
毎日終電だった
電車から降りると
アパートへと歩く
アパートへ向かう道は
閑静な住宅街で
こんな時間は
もう人通りなど無い
「今日も疲れた。」
そう囁き
重い足を引きずる
ようにして歩いていた
アパートの近くまで来た時
街灯の下に誰か立っている
目を凝らして
よく見ると、男の子だ!
何してるんだ、こんな時間に?
もう1時近いぞ
俺は不気味に思いながら
足早に通り過ぎようとする
その時・・・
何か喋っている
その男の子が
小さな声で何か喋っている
男の子「・・・・・・・」
男の子「・・お・し・・・」
男の子「・・・おしっこ・・・」
微かに聞こえて来た
俺は迷ったが
勇気を出して
聞いてみた
「お、おしっこ したいのかい?」
したいのかい?
したいのかい
死体の怪
・・・・・・・・
完