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『恋愛・結婚』

『身近でリアルな夢と現実』

作者: ミオ
掲載日:2026/07/02

航が高校生だった頃、兄は結婚した。


義姉は美人で、愛想もよく、誰からも「いいお嫁さんね」と言われていた。


だが、結婚を急いでいたのは兄ではなく義姉だった。


「二十六までには絶対結婚したいの。」


その言葉を、航も聞いていた。


当時は深く考えなかった。


早く結婚したい人なんだな、くらいにしか思わなかった。



---


兄が結婚して数年。


義姉の口癖は変わっていた。


「私ばっかり損してる。」


「もっと稼いできてよ。」


「家族なんだから当たり前でしょ。」


兄は仕事を増やし、小遣いを減らし、休日は家事と育児に追われた。


それでも義姉は満足しなかった。


兄の誕生日は忘れるのに、自分の記念日は当然のように祝わせる。


兄が体調を崩して寝込んでも、


「病院行けば?」


その一言で終わり。



---


ある日、航は兄に聞いた。


「兄ちゃん、義姉さんのこと好き?」


兄は少し困ったように笑った。


「好きだったよ。」


"だった。"


その過去形だけで十分だった。



---


航は気づいた。


義姉が好きだったのは兄ではない。


"結婚"だった。


結婚という肩書き。


安定した生活。


周囲から「奥さん」と呼ばれる立場。


その相手が兄だっただけ、なのだ。


もちろん、最初は多少好意もあったのだろう。


だが、愛する相手だから結婚したというより、結婚したかったから兄を選んだ。


そんな印象が、年々強くなっていった。



---


それ以来、航は女性を見る目が少し変わった。


「結婚したい。」


そう言われても、航は喜ばない。


「どうして結婚したいの?」


と相手に理由を聞くようになった。


「あなたと一緒に生きていきたいから。」


そう答える人や、


「年齢的に。」


「子どもが欲しい。」


「安心したい。」


と、答える人。


同じ"結婚したい"でも、その中身は人それぞれ、まるで違った。



---


兄の結婚は、幸せな家庭の身近な手本にはならなかった。


けれど、一つだけ航が学んだものがある。


相手の言葉より、行動を見ること。


「結婚したい人」と、「あなたと人生を歩みたい人」は、似ているようで、全然違う。


兄はその違いに気付いていなかった。自分は後者で相手も同じ思いで結婚すると思っていたら、相手は最初から前者だった…みたいな…。


だからこそ航は、相手が「結婚」というゴールだけを見ているのか、それとも「一緒に生きる相手」として自分を見ているのかを、時間をかけて見極めようと決めた。


兄の結婚は報われなかった、かもしれない。


でも弟にとっては、人を見る目を養う最高の教材になった。

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