1-4 5歳 分かり始めた事
5歳になった。
この世界における常識が分かり始めた。
まず母親の名前はクロン・ウォーカー
そして父親の名前はロンド・ウォーカーだ。
つまり僕の名前はライズ・ウォーカーである。
そしてこの世界において個人が使える魔法には上限がある。
水槍や炎の玉などがあるものの、
周り一帯を炎にする為の炎渦などの
一定以上のレベルの魔法は本当に一握りの国家魔道士しか使えないのだ。
そしてその国家魔道士などの英雄譚もあまり出回っていない。
理由は単純
彼らに出会って帰ってきた人が少ないのだ。
そしてそれらの魔法という強力な武器を使わずに世界の果てまで探検していくのが
この世界の冒険者なのだ。
そんな冒険者として活躍しているのが僕の両親!
階級はEこれでも結構高い方なのだ。
大体は小隊長として扱われる階級であるのだけど父と母の役職の正式名称がめちゃ長い。
小隊長であれば○○部隊所属の○○小隊隊長として記されるのに
両親は前線ではなく補給経路の管理や物資の補充などを担当してる為、
正式名称は
ドモール国西部第三線補給経路Dー13地域管理人
凄く長い。
要するにドモール国の西部に位置しているエリア13の一部を管理している人
らしい。
その「管理人」という仕事が、
僕には最初、いまいちピンと来ていなかった。
戦わない。
魔法をぶっ放すわけでもない。
派手な戦果もない。
……じゃあ、何してるの?
そう思っていた。
だけど、ある日の朝。
その認識はひっくり返った。
がたん…がたん…
幼い頃から聞き慣れていた、荷車の音。
あの音が、久しぶりに家の前で止まった。
外に出ると、そこには三人の冒険者がいた。
一人は肩に包帯を巻いている。
一人は足を引きずっている。
もう一人は、ほとんど喋らない。
顔色は全員、良くなかった。
なんとか帰還したという様子だ。
父と母はすぐにその人たちに肩を貸した。
「中へ。座れるか?」
父が肩を貸し、
母が水袋を差し出す。
僕はその様子を、少し離れたところから見ていた。
包帯の男が、水を飲んで、息を吐く。
「……すまない
本来予定されていた場所へは行けなかった。
前日の雨によって複数個所の崩落と陥没、
多数のぬかるみでもう既定の道は使えん」
その一言に、父は静かに頷いた。
それから、机の上に地図が広げられる。
父が質問する。
「崩落はどこだ」
「三日目の谷だ。印をつけた場所のさらに奥」
母がすぐに炭筆で線を引き直す。
「ぬかるみは?」
「雨で…広がってる。魔道空車による強行突破でしか先に進めなかった…」
「後魔物が結構いた。
生息域を前日の雨で変わったのか、大人数で移動してた。
この傷も崩落よりも魔物との戦闘の傷の方が多い。
魔物はまだ移動してるだろうから正確にどこの位置にいるかはまだ分からん」
母は別の線を描き足す。
父はそれを見て、小さく言った。
「……補給線を三本、切り替えよう…」
それは、すごく地味な作業に見えた。
地図を見てただ線を増やすだけ…
でも僕は、そこで初めて気づいた。
この人たちは――
次に行く人を安全に向こう側にいかせる為にやっているのだと。
もしこの情報がなければ、
次に同じ道を行く人たちは、崩落に巻き込まれるかもしれない。
ぬかるみに足を取られて、動けなくなるかもしれない。
魔物に襲われ命を落とすかもしれない
だけど、父と母が線を引き直せば――
その危険は、少しだけ減る。
ほんの少し。
でも、その少しで、命は変わる。
その事に気づいたとき僕には夢が出来た。
冒険者になるという夢を…




