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31話 神話時代について知りなさい。(2)



「大長老様……流石に度が過ぎるのではないでしょうか……訂正して頂けませんか?」



 震える声で大長老さんにお願いしているダレスさん。

ダレスさんは根っからのルイナ様信者だ。ルイナ様のことを悪く言ってはないがまさか神に対してルイ姐呼びは流石にダレスさんは許せなかったみたいだ。



「あはは!そうかダレちゃんはルイ姐の事を心底崇拝しておるんじゃな!あの時代は皆その呼び方だったからついな。今はその呼び方は不敬じゃったかの?だがのダレちゃん、ルイナ様をルイ姐として思い出せるのももう妾だけじゃ。」


 優しく、そして悲しそうにそう言う大長老さんにダレスさんは下を向き何も言わない。

 


「今でこそ女神だなんだと祭り上げられておるが当時は本当に一目見ただけでルイ姐が神だって分かる奴はおらんかった。それくらいルイ姐は人間味があり妾達に優しく、そして綺麗じゃった。妾の中では未だに神というよりかはただ綺麗で優しくついでに凄まじく強い姐ちゃんなんじゃ。神とわかっていてもこれは変えるつもりはないの。当時を知る者の特権じゃすまんの!」



 最後に口角を最大に上げて笑いながら言う大長老さんにダレスさんも折れたのか苦笑いで答えた。



「出過ぎた真似をして申し訳ございませんでした。続けてください。」


「そうじゃな、続けるぞ。ルイ姐が現れ状況は一変したんじゃ。壊滅寸前の討伐隊の数人とルイ姐は一つ目の厄災者(ラクシャ)であるオルフェクスをなんとか封印する事ができた。と言うのもルイ姐もまた()()()()が使えたんじゃ。そのおかげで僅かな討伐隊でも勝利を収める事ができたんじゃ。」



 まぁ救世主で神様だからそんな力を持っていても不思議じゃない。……未知の力?ん?

 俺が気づいた時にはすでにダレスさんが口を開いていた。



「ちょっと待ってください!それじゃまるでルイナ様もラクシャだと言っている様に聞こえるのですが……」


「ん?そう言っておるのじゃが?」



 きょとんと、さも当たり前みたいなふうに言う大長老さん。どんな心境で言ってるんだ。俺たちは、いや人類皆ラクシャを敵として認識してるんだぞ。そんな中でよくもまぁ、そんな軽く言えたもんだな。



「しかし、先ほどラクシャは概念、魂や意志などは存在しないと仰っていたじゃないですか!ルイナ様は人間味があり、優しいとも仰っています。だからラクシャの未知の力ではなく別の神の力があったんじゃないんですか?」


「んー、ダレちゃんの言いたいこともわかるがの、別にこれは妾が勝手に言ってるわけではないんじゃ。ルイ姐本人が私はラクシャだって言っておったからの。何故概念であるルイ姐が意志を持ってたかも、人類に味方し同類の存在を封印していったのかも妾は知らん。まぁルイ姐が特別だったってことじゃの!あはは!」



 それから大長老さんの話では、一つ目のラクシャを封印してまもなく人類は魔法を手に入れ、ルイナ様と一緒に次々とラクシャを封印していったと語った。ダレスさんはショックが大きいのかその後何も聞き返しをすることなくただただ下を向いているだけだった。



「とまぁ簡単にあの時代はこんなもんかの。なんか気になるところはあるかの?メガネくん。メガネくんじゃなくてもよいぞ?」


「じゃ、じゃあ自分いいっすか!」


「おー今度はそこの意気のいい少年じゃな!なにかの?」


 普段人の話の8割も聞いていないアオイが珍しく質問か。なんか気になったところがあるのか。


 

「自分はアオイって言います!俺が気になってるのは、ランさんはどうしてそんなに綺麗なんですか?」



 アオイに期待した俺がバカでした。こいつはそう言う奴だ。さっきまで真剣に聞いてたのは振りだったのかよ。



「あはは!アオイか!嬉しいこと言ってくれるの!そうじゃろ?綺麗じゃろ?」


「はい!めちゃ綺麗です!ただいくらエルフ族(シルヴァリアン)が長命種だからと言って4,000年も生きられるんすか?見た目もなんならシノネの姉さんより若く見えるんだけど……ですけど。」



 まぁ、確かに気になりはする。正直。明らかにエルフとしても異質だ。



「そうじゃな、まぁこれは次の予言のことにも繋がってくるからの。ちょうどよいか。」



 なんか繋がったー!無意味な質問かと思ったがそんなつながり方することあるんだ。アオイ、バカって言ってすまなかった。



「どう言えばいいかの?そうじゃな、簡単に言うと妾も封印されておる状態じゃな。確かにエルフ族(シルヴァリアン)と言えど4000年は流石に無理じゃ。」


「簡単にされ過ぎて逆にわかんねーっす。」


「あはは!悪かったの!要は一つ目のラクシャ、オルフェクスの封印の際妾は誤ってその封印術式を踏んでしまったんじゃな!すぐに討伐隊の仲間が引き剥がしてくれたんじゃが遅かった。オルフェクスみたく完全に封印されはしなかったが少し影響を受けての。つまり歳を取れなくなったんじゃ。所謂不老じゃな。」



 なるほど、封印の影響で当時の姿で今まで生きてきてるのか。それは大長老さんに他の人類が会えないわけだ。エルフですらこの姿は信じられないと思うのに、多種族なら尚更だ。でもこれが予言とどう関係しているのかはまだわからないな。



「ラン様、これが私たちが聞いた予言とどう関わるんですか?」


「やっと喋ってくれたの!可憐な子よ!元気ないのかと心配しておったぞ?元気ならそれでええじゃがの。その質問の答えはの…………」


 モネからの質問にテンションが上がっているのか、無駄にためが長い。気になる、早く!


「事故とは言え不老になった妾にルイ姐が最後の遺言として残した言葉。それが予言の言葉じゃ。封印は完璧だったがいずれ緩み必ず復活してしまう。いつになるかわからないから妾に託したのじゃろうな。」



 えええ!!予言って月読みの予言者って人がしてたんじゃないの?



「大長老様……では私がお会いした月読みの予言者とは一体?」


「それは妾が世間に広める為に用意した者達じゃ。妾自身が言っても良かったんじゃが下のジジイ共が反対してな。苦肉の策じゃ。」


「世間に広める?どう言う事ですか?この予言に関してはごく少数の人物しか知りませんよ?」



 途端に大長老の顔が険しくなったのを見逃さなかった。



「まぁこんな時まで見つけられなかったことを考えるとやはりあのジジイ共、情報を開示しておらんかったか。人類皆で協力して探せばもっと早く見つけられたかもしれんのに……」


 パニックを起こすことを考え保守的になったエルフ族(シルヴァリアン)のご老人の考えもわかる。大長老も理解できないわけではない様だからそこまで追求してなかったのかもな。



「予言に関してそれだけじゃの。お主らが現れることくらいしか妾も知らんぞ。それにしても8人中4人とはなんとも心細いの。」




 神話戦争の話、予言についての話、残るはこのエルフ族(シルヴァリアン)の国シルヴァリエに封印されているラクシャの場所についてか。

 これも長くなりそうだと俺は改めて姿勢を直した。

 

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