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15話 冒険者を誤解しないであげて下さい。


 んん……うるさいな……

 俺は騒々しい音で目が覚めた。そうだ、俺たちは昨日とんでもない事をダレスさんから聞いた後ギルドの寝室で寝たんだった。昨日のが夢であって欲しかったが、残念ながら現実は甘くない。下の騒がしい音に慣れてきた頃、次々とアオイ、ジュンが目を覚ました。

 

「んーなんだ……下が騒がしいな……もうちょっとだけ……」

「うん……まだ眠い……僕も……」


 こんなうるさいのによくまだ寝られるな。そんな事をぼんやり思っているとモネの姿がないことに気がついた。瞬間目が冴え2人を叩き起こした。


「おい!起きろ2人とも!モネがいない!」

「え!」

「何!」


 二度寝しようとしていた2人もようやくその事に気づき、俺たちはすぐにモネを探し下の階へ降りて行った。

 昨日のこともあって嫌な考えが頭をよぎる。1人で逃げた?いやモネはそんな奴じゃない。じゃあ攫われた?誰に?そもそもギルド内でそんなこと起きるのか?色々な最悪の想像をしてしまう。そして俺たちは寝癖も気にせず向かった一階で一際騒がしい部屋に向かった。


「なぁ、モネちゃん!ダレスなんかと組むより俺たちと組まない?」

「おいずりーぞ!そもそもお前のパーティに新米でか弱いモネちゃんには荷が重いんだよ!」

「何だと!」

「あはは、皆さん朝から元気がいいですね!でも私は……」

「まあまあ皆さん落ち着いてください!」


 ここは食堂か。それにしてもなんだこの状況。一旦モネがいる事に安堵し、それから状況を整理しよう。絵に描いたようなザ冒険者みたいな屈強な男達が、モネとダレスさんの卓を囲って何やら言い合ってる様だ。この騒がしさの中心はモネかよ。

 俺たちはドアの前でその状況に唖然とし、突っ立っていると、モネがこちらに気がついた。


「皆起きたんだね!こっちこっち!」


 モネが立ち上がりこちらに手招きしている。その瞬間俺のスキルが発動した。言わずもがな無数の敵意に満ちた目でこちらを睨む冒険者達にだ。こんな事でも発動するのか。はあまた厄介に巻き込まれるなと半ば諦めながら俺たちはモネとダレスさんの卓へ向かった。


「あん?何だお前ら?見ねー顔だな。野郎には興味ねーんだ、帰った帰った。」

「いやいや、モネは俺らの友達なんで」

「友達だぁ?冒険者ギルドで友達ごっこってか。ぷっ、あっはっは」


 なんだこいつら。ずいぶん横柄な態度だな。冒険者は皆こんなクズばっかなのか。モネを見るとさっきまでの上機嫌はどこへやら。今にも1人殴りかかりそうになっていた。だが、モネが動く前に1人限界を超えた奴がいた。アオイだ。


「なんだおっさん達、冒険者ってのは女1人に寄って集る様な虚しい人生しか歩めてない可哀想な人がなる職業なのか?」


 言われっぱなしは癪だが、それにしても煽りすぎじゃ無いか?ほら、くるぞ。


「いい度胸じゃねーか小僧!おらぁあ!」


 アオイに殴りかかろうと1人が詰め寄ると同時にここにいる全員が一瞬にして動きを止めた。いや正確には動けなくなったと言った方がいいか。俺はその原因に目を向けた。


「皆さん、ちょっとおいたが過ぎますね。ピシットさん彼を殴るなら私は貴方を制圧しなければなりません。冗談はその辺にしてください。私は彼らと朝食を食べにきているだけです。どうかお静かに。」


 そうダレスさんが言うと、今まで横柄だった冒険者達は、その圧で何も言うことができずそそくさと食堂を出て行った。


「あーあ、後ちょっとだったのに!ダレスさんが止めなきゃ正当防衛で一発殴れたのによ!にしてもダレスさん、あんた何者なんだ?」

「あはは、勘弁してくださいよぉ。アオイさんが殴ったらピシットさん死んじゃいますってぇ。それに言いましたよね?これでも私は満月級冒険者でそれなりに実力もあるんですよ!彼らは私に敵わないと知ってますから。」


 冗談混じりにそうな事を言うと、ダレスは俺たち3人分の食事をとりに行ってくれた。それにしてもモネは大丈夫だったんだろうか。大丈夫と言うのは絡まれた事についてではなく、ダレスさんと2人きりだった事について。モネをチラチラ見ていると察したのかダレスさんが戻ってくるまでに軽く話してくれた。


「えーっと、お腹が空いて起きちゃって食堂に行ったらダレスさんがいたの。気まずくって出て行こうとしたら呼び止められて改めて心からの謝罪してくれたの。その態度である程度怒りも収まったよ。そして気づいたら周りに人だかりが出来てたの。へへ。いい人たちだったけど、トオル達にあんなこと言うんだもん信じらんない!」


 昨日の夜の時ダレスさんは状況を説明するために出来るだけ感情を度外視して話してくれていた。だがそれでも思うところがあったのだろう。本当はそこまで冷酷な人物ではないのだろう。帰ってきたダレスさんと一緒に朝食を食べ始め、少しした頃ダレスさんがこれからのことを話してくれた。


「これからのことをざっくりお話ししますね。まずしばらくは皆さん私の下である程度戦える様に修行をして貰います。差し当たって急務はモネさんのスキルの発現ですね。そしてそれが叶ったら次はエルフの国へ行く事にします。理由はそこで大長老に謁見し、予言の詳細をお聞きできればと。時間はないですが今のところこれが直近の目標ですかね。あちっ!」


 スープに舌を火傷させながらダレスさんが教えてくれた直近の目標に俺たちは皆頷き、異世界初のまともな朝食を平和に食べたのだった。

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