表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/14



 アドニアスに町へ行くと伝えたら、困惑混じりの渋い対応をされた。

「それは屋敷に人を呼ぶことで済ませられないのですか?」

「済ませられないから言ってるのだけど?」

 なんで推しのグッズを作るのに妥協しなきゃならんのだ?

 あの衣装は軍服のようなスタイルで、細かい箇所にかなりの装飾が必要なのだ。

 全員分作るのだから、それぞれの色や装飾なんかも必要だ。

「アドニアスじゃ埒があかないなら、勝手にするわね」

 片手を挙げて踵を返すと、焦ったようにアドニアスが止めに入る。

「分かりましたから。準備を致しますので、お部屋で少しお待ち下さい」

 ーーやれるなら、最初の時点でやれよ。

 アンナは呆れたように鼻を鳴らすと、自室へと戻った。

 一方アドニアスはアンナローズの豹変に付いていけずにいる。

 アンナローズは大人しく静かな子供だった。

 どこか淡々として、表情も暗く、あまり喋ることもない。子供としては色々欠けているのだろうが、こちらの手を煩わせることがない子だった。

 それがどうしてこうなったのか⋯⋯。

 ついこの間熱を出して寝込んでいたと思ったら、まるで別人のようになっていた。

 今までになかった冷徹な眼差しと判断、そして厨房での行動。

 これまで一切の片麟さえ見せなかったというのに⋯⋯。

 何か空恐ろしい物を感じつつ、アドニアスはアンナローズの指示通りに動くのだった。


 玄関前に停められた馬車の横には四人の護衛と侍女一人。

「護衛は二人くらいでいいわ、あちこち行く予定はないし、抜け出すような馬鹿な真似もしないのだから」

「⋯⋯しかし」

「私が愚かな無茶をするような幼子に見えるのかしら?」

「いえ⋯⋯」

「もしそれで拐かされたとしても、それは全面的にお父様の責任なのだから、貴方達が悔いるものでもないわ」

「⋯⋯は?」

「だってここの領主はお父様なのだから、それを排除出来なかった責任はお父様にある訳でしょう?」

 確かにそうだ。

「まぁ、それで死ぬことにでもなったら、この世界から淘汰されたのだと思って諦めるわ」

 5歳の言葉とは思えず、ポカンと絶句する護衛ら。

 確かに前と変わられたが、突き抜け過ぎて諦めきった感じがひしひしと伝わる。

「もし原因を聞かれたのなら、こう答えてあげればいいのよ」

『マトモに領主しなかったテメェの責任だろ!』

「ってね」

 いや⋯⋯いやいやいや!

 無理です!不敬が過ぎます!

 何ですかその極論!

「要は民から好かれるのも嫌われるのも、その領主次第ってことよ」

 確かにそうですけどもーー!

 固まる護衛らを無視して、アンナは誰の手も借りることなく、馬車へと乗り込んだ。

「ほら、行くわよ。時間は無限ではないのだから」

 えーーっ!?









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ