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「ジョーの衣装この間のライブの衣装にしたいけど、詳細が公開される前に死んじゃったのよね〜」
ナオの衣装がそりゃもう大変素晴らしく似合っていて、ジョーまで目が回らなかったのが本音なのだが⋯⋯。
「新曲の衣装にするか」
先ずは紙に衣装を描き起こす。
「この衣装、歌番組録画して舐めるように観察したんだよな〜覚えてるかなぁ私⋯⋯?」
この衣装で五人が一斉にターンすると、ホントに綺麗でカッコ良かったんだよな〜。
推しの尊さにうっとりしつつ、ざかざかと衣装を描いていく。
「これリーダーの衣装が結構豪華なんだよね」
あぁ、もう!五人の人形作って並べようかなっ!!
幸い幼児で時間もあるし?
どうせ、誰も構わないのだし⋯⋯。
「暇つぶしが推し活とか最高かよ!」
これで推しがこの世界にもいて、写真なんかあったら言う事ナシ!
「あ、でも歌も聞きたい!」
ホント各々歌が上手くて、その中でも飛び抜けてたのがナオだった。
初めて聞いた時は、全身に鳥肌が立ったほどに衝撃を受けた。
あの歌声にあの顔、スタイルも良くて、ダンスも上手いとかどんだけ神様に愛されてんだよ!
まぁ、トークはイマイチというか、静かにメンバーの話を聞いているタイプだったけど。
そんなナオが好きだった。
因みに私は《大好きだけど、遠くから眺めていたい》派だ。
決して近付きたいとは思わない。
一応自分の容姿が平凡である自覚はあった。
こんな平凡があんなキラキラに近付ける訳がない。
ファンの子でも良く《結婚したい》とかいう人もいたが、あんなキラキラが隣にいたら、毎日自分と比べてしまうだろう。
そして落ち込んで自分を追い詰めてしまう。
こんな予測が出来るからこそ、遠くから眺めているだけでいいと思ってしまう。
夢見がちなんだか、リアリストなんだか分からん!なんて、葵衣には笑われたけど⋯⋯。
きっと自分は臆病なんだと思う。
彼氏いない歴=年齢。いいじゃないか。
ほどほど平凡な人とほどほどな家庭を持つ。
こんな人生設計で、自分はちょうどいい。
今世もきっとこんな感じで過ぎて行ければいい。
出来れば、推し活を認めてくれる人であれば、自分にとっては最高である。
「出来た〜♪凄い!ちゃんと覚えてた私!」
五人の新曲衣装を描いてみて、思わず自画自賛。
「やっぱりこれって、全員分作れってコトかな♪」
布、足りるかなぁ?
アドニアスが持って来た布を検分して思った。
布はあるけど、色がない!
装飾品だって必要だ。
「せめて推しカラーだけでも充実させないとじゃんか!」
地味な色味ばかりで、衣装作りには程遠い。
「これは生地屋さんかな⋯⋯」
初めての異世界探索は生地屋になりそうです。