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ティーワゴンの上に用意された茶器は、この家の物としては安物の部類だが、平民からしたら少し高級な部類に入る。
その茶器を緊張した面持ちで扱う見習い娘達。
今日はお茶の淹れ方とマナーの授業だ。
お茶の種類によってお湯の温度は変わるし、合わせるミルクやフレーバー、果物やジャム、ハーブなど主人の趣向に合わせなければならない。
記憶力や知識がものをいうのがお茶だ。
「まぁ、ぶっちゃけ私はコーヒーの方が好きなんだけどね⋯⋯」
こちらではまだコーヒー豆が見つかってないので、いつかタンポポコーヒーやチコリコーヒーを試したいと思っている。
「作り方は知ってはいるんだよな〜」
動画配信サイトでチラリと観たけれど、意外と簡単だった気がする。
ただ時間がかかる。
うーん⋯⋯と唸っていると、それに気付い見習い娘達が首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「いえ、コーヒー飲みたいって思って」
「こぉひぃ?」
そりゃあそんな反応よね。
「飲むまでに時間もかかるし、あとでコーヒー作りしましょうか」
タンポポ掘らないといけないし⋯⋯。
というか、タンポポってあるのかしらね?
「ーー普通にあった」
庭園の片隅でタンポポを発見して驚いた。
「お嬢様が探していたのって、ダンテだったんですか?」
ダンテライオンでダンテかーー。
名前とか似てるものが多いな⋯⋯。
「そう。これを使うの」
さっそく庭師から借りたスコップを根元に差し込み、ザクリと掘り起こす。
タンポポって汁が落ちにくいのよね〜。
傷付けないように慎重に掘り、根っこの周囲を柔らかくしてから引っこ抜く。
「⋯⋯えっと、根っこですか?」
「そう。これの根が必要なの」
全員でタンポポを掘り起こし、根っこを籠に山盛りにする。
「これを綺麗に洗ってから薄切りにして、天日干しするのよ」
「意外と手間がかかるんですね」
「あら、普段飲むお茶よりも手間はかからないわよ」
何せこれは蒸したり発酵させたりはしないのだから、紅茶よりも楽にできる。
まぁ、今日作ってすぐ口にする。が、出来ないだけだが。
タンポポの根を処理しながら、話に花を咲かせる。
「街の人は普段はハーブティー?」
「そうですね。あとは豆茶とか」
「豆茶?」
「炒った豆にお湯を注いで作るんです」
「あぁ、それなら知ってるわ」
前世でも小豆茶や大豆茶などがあった。
ノンカフェインの健康茶としてだけど。
同じ健康茶として、いつか麦茶も作りたい。
暑い日に飲むと最高なのよね、麦茶。あとはお風呂上がりとか。
まぁ、お風呂上がりはコーヒー牛乳も捨てがたいのだけれど。
タンポポコーヒーはノンカフェインだし、子供でも大丈夫なはずだから、楽しみにしているのだコーヒー牛乳。
フルーツ牛乳とかも作りたいが、作り方を知らない。あれはただ牛乳にフルーツを入れるだけじゃ駄目なのだ。
色々なフルーツと牛乳が絶妙な配合で作られていて、まさに日本の企業努力の賜物。
味や香料だけを抽出する技術は、この世界ではまだ未熟なのだ。
香水やアロマオイルはあるにはあるが、精製技術のせいかかなりいい値段がする。
「動画で流し見したような気はするんだけどなー」
大量の花からオイルを抽出していたっけ。
確か器具を使っていた気がする⋯⋯まぁ、ほとんど覚えてないけどね!
その日はタンポポを天日干しするまで作業した。
乾燥がとても楽しみだ。




