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「やっぱマスコットはフェルト生地よね〜♪」
前世で葵衣とお揃いで作ったマスコットも、フェルトで作ったものだった。
推しぬいや葵衣の服を最初に作ろうとしたのだが、如何せん材料がまだ揃わないので、取り敢えずマスコット作りに移行する。
前回と同じように型紙を作り、生地をざかざかカットしていく。
「今回は五人分!」
青のナオ、赤のジョー、白のショウ、緑のリュウ、紫のラン。
デフォルメなので、衣装も簡略化出来る。
「これはソロ曲の衣装にしてみようかな」
それぞれの衣装を描き起こし、フェルトを切って各メンバーごとに並べる。
大人の掌サイズのぬいぐるみ。
前に作った時は細かった作業も、子供の手ならばサクサク進む。
「ミシンがあれば、楽なんだけどな〜」
ブツブツと呟きながらも、細かく丁寧に仕上げていく。
「やっぱり推し活って楽しくって素晴らしい♪」
これが世界中に広がれば、平和になるのにね。
なんて微妙な世界平和を考え、アンナは斜め上思考に爆走するのである。
「⋯⋯これは?」
「クリームシチューだそうで⋯⋯」
「これもアンナローズ?」
「左様です」
白くもったりとしたスープ。
こわごわと口を付けると、ミルクの優しい味と独特の旨味が口いっぱいに広がる。
「⋯⋯美味しい。ミルクはあまり得意じゃないけれど、これは好きだな」
野菜やキノコも沢山入っていて、パンにもよく合う。
「それはようございました。お嬢様に⋯⋯」
「いや、僕から伝えるよ。聞きたいこともあるし」
「⋯⋯左様ですか」
アドニアスはゆったり笑った。
兄妹が仲良くなるのは良いことだ。
特にこの屋敷は家族縁が薄いのだから⋯⋯。
ようやく妹に興味を持った次期辺境伯。
それが吉と出るか、凶と出るかは未だ誰も分からない。
「アンナローズ、入るよ?」
何度かノックしても応えのない部屋。
扉に手を掛けそっと中を伺うと、妹は大量の布に囲まれて一心不乱に何かと格闘していた。
「ーーアンナローズ?」
「ぁ゙?」
思いがけなく低音ボイスで反応する妹に、驚いて一瞬怯む。
「んだよ⋯⋯邪魔すんなし」
ポツリと呟かれた言葉は兄には聞こえなかった。
「何か用かしら?お兄様」
無表情で問うてくる妹。
自分と同じ翠色の瞳には、感情が浮かんでいない。
「⋯⋯最近どうしたの?色々と出かけたり、料理したりと」
こてりと首を傾げると、自分よりも濃い琥珀色の髪がさらりと流れる。
「⋯⋯それ、お兄様に関係ありまして?」
「え⋯⋯と?」
言葉に詰まり、視線が泳ぐ。
「ーーただ単に馬鹿らしくなっただけですわ」
「は?」
「何で大人しくしなくてはならないのです?」
「それは⋯⋯」
「いい子で大人しくいたって、何も変わらないのならば、好きにしたっていいではないですか?」
言っていることは分かるが、意味が分からない。




