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「っあ〜〜!!もうっ最高だった!!」

「だよねっ!!あ〜これで明日からまた頑張れる!」

「1年に一度のお楽しみだもの!」

「あ〜このまま夢見心地のまま死にたい!」

「ちょっと止めてよ。来年のライブまで生きて!気持ちは分かるけど!」

 一際派手で大きな団扇を振りながら、二人は幸せそうな笑い声を上げた。

「ってか、絶対ジョーこの団扇に気付いたよね!」

「いいなぁ〜手で♡してくれたよねー!ナオはこれ気付かなかったのかなぁ〜?」

 団扇には『NAO♡バーンして☆』と指の絵まで付いている。

「ナオは照れ屋さんだからー」

「知ってるけど!ファンサは欲しい!」

 ケラケラと明るく笑ったその時、正面から来た酔っ払いの男が、わざとらしく二人に近付き、勢い良く肩をぶつけて来た。

「⋯⋯え?」

 グラリと傾いだ体。

 今日のためにと新調した靴が仇となった。普段は履かない5センチのヒール。

 咄嗟に体勢を立て直すことが出来なかったのだ。

 ドサリと倒れ込む体。

「杏奈!!」

 親友の叫び声に顔を上げると、眩しいライトの光とクラクションの音。

「葵衣⋯⋯」

 親友の名前を口にした瞬間、通り過ぎた大型車。

「いやあぁぁぁっー!!杏奈!杏奈ーっ!!」

 朦朧とする意識の中で聞く親友の声。

 同じアイドルが好きで仲良くなった親友。

 推しは違ったけれど、他の誰よりも一緒にいた。

 大好きで大切な親友⋯⋯。

 死にたいなんて冗談でも言わなきゃ良かった。もっともっと一緒にライブやイベント行きたかった。

 ごめんね。大好き。

「ぁぉぃ⋯⋯」

 ーー私の大親友⋯⋯。

 掠れる視界が最後に映したものは、踏まれてぐしゃぐしゃになった団扇。

 NAOの文字や指のイラスト頑張ったんだけどなぁ⋯⋯。

 自然と零れた涙がアスファルトに落ちる瞬間、杏奈の意識は途切れた。


 鷹島杏奈

 享年23歳


 こうして私の人生の幕は下りた。



 ーー筈だった。


 


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