表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/50

第四十話 現状確認




「さすがに今日は疲れた……」


 その日の夜。

 ようやく一人になれた私は、ベッドの上でうつ伏せになりながら大きな息を吐く。


 文字通り、これまで経験してきた中で一番大変なパーティーだった。

 一日の間に、ここまで多くの人と話した経験は記憶にない。

 本来なら一人一人の情報を覚えておくべきなのだろうが、残念ながら私の記憶力では不可能だった。ごめんね。


 ちなみに今日は、来客の多くがスタグレーゼ邸に宿泊している。

 遠方からやってきた人たちも多いので、当然の対応ではあるのだが。


「なんだか、いつもよりも屋敷が賑やかな感じはするわね」





 なんとなくだが、人がたくさんいる気配を感じ取れる。ような気がする。

 知っているからそう感じるだけかもしれないけれども。


「ネル姉様とも、もっとちゃんとお話ししたかったのだけど……」


 結局タイミングが合わず、あまり話すことができなかったのが悔やまれる。

 人徳の差なのか、こういうパーティーの場だと人が押し寄せているイメージがある。


「……十歳、か」


 改めて、これまでのことを思い返す。

 転生した時はどうなることかと思ったが、案外なんとかなっている。


 一番の懸念だったユウリとの関係は、極めて良好だ。

 そもそも、あんなに可愛い義弟をいじめるなんて考えられない。

 それも、前世での経験があってこその感覚ではあるのだろうけど。

 原作との性格に乖離が大きくなっているのが、ちょっと気になるところではあるくらいか。

 それでも何かあったら相談くらいはしてくれるだろう。


 その次に危険度が高いのは、婚約者のクロスだ。

 彼との関係は、原作よりは少し良くなっているか? といった程度か。

 一発顔面をぶん殴った割には、相当に健闘しているのではないだろうか。

 なぜか今は、私との婚約を前提に色々と動いている節もある。

 まあそれもレティシアと出会うまでの話だと思うので、その時が来たら全力で理解を示し、迅速に身を引けばそれで多分大丈夫。問題ない。


 シュルトと出会ったのも驚きだった。

 原作では彼と出会うのは学院で、しかも大して関わりがないはずだったのだが、どうしてこうなったのか……。

 今日のように、隙を見せると何気ない顔で高価な物を渡してきたりするのがたまに怖い。

 幸い悪感情を持たれているわけではなさそうなので、適当に付き合っていけばいいのではと思っている。


 カイについては、正直ほとんど面識がないと言っていいレベルだ。

 一応今日マカロンを渡してあげたが、今のところ本当にそれだけ。

 母親があのドルレッサなので、苦労しているのだろうとは推察できる。

 彼については残念ながら、あまりこちらから接触しない方がいいのでは? とも思う。

 いろいろと、母親絡みでややこしいことになりかねないからだ。


 原作ではまったく描かれていなかったエメリアとの関係も良好だ。

 魔法についても最近は少し伸び悩んでいるが、火属性中級魔法はそのうち習得できるはずという手応えはある。

 その一歩が遠いのだが……頑張るしかない。


 父ヘイルとの関係も、原作とは比べ物にならないほど良くなっている。

 今日も泣いていたが……正直に言うと、あんなに感情豊かな人間だと思っていなかった。

 あまり思い上がるのもどうかと思うが、それも私の変化による物だととても嬉しい。


「私にしては、頑張ってる方よね……」


 一応、もし何かあってスタグレーゼ家が爆発四散した時のために、農業の勉強もしている。

 あとこれは誰にも秘密だが、いざという時のためにへそくりを少しずつ貯めている。


「あとは、今日のことも日記に……」


 そんなことを考えながら、私はいつの間にか意識を手放していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ