その10 第四話 最後まで遊びたい
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第四話 最後まで遊びたい
持ち点200でやるべき事。それは手役探しだ。
基本に忠実な、リーチに頼らない手順。これが私は面白いと思ってて。形だけ整えてリーチでいいっていう麻雀は正直言って面白味に欠ける。
4面子1雀頭作りの効率だけ考えるなんてのはもはや慣れれば頭を使わないでもできるものであり、工場で仕分け作業をやっているような気分にすらなる。遊んでいるはずが、何も楽しくないのだ。
だがここに例えば七対子の可能性とかが加わると急に選択肢が増えて面白くなる。そうつまり、手役との兼ね合いを天秤にかける麻雀こそが難易度が高くて面白いのである。
「難しい……」
私は思わず呟いていた。でもその顔は笑ってたみたいで涼子から「発言と表情が一致しなくて気持ち悪い」と指摘された。気持ち悪いとはなによ。傷つくわ。それ言ったら涼子だって「気持ち悪い」と言いつつ嫌そうな顔してないじゃない。
難易度の高い手を間違えることなく進めて行きイーシャンテンまでこぎ着けたが、捨て牌は既に3段目。これが流局したら負けだ。
「ポン!」
ジャガフの切った白をマタイさんが鳴いた。これでマタイさんはテンパイしたろう。テンパイノーテンでも飛ばされる私は必ずテンパイしないといけない。
もちろん、ここで飛ばずともこの点差でオーラスになれば逆転トップは不可能なわけだけど、そういうことじゃなくて。私のせいでオーラスまで行かないで終わりになる、ということをしたくはない。みんなだって最後まで遊びたいはずだ。
しかし、このイーシャンテンがテンパイしない。
ミズサキ手牌
三四伍③⑤13555789
3段目になってからは4索と④筒はチーしようと思ってたけどそれもできない。
ついに山に残った牌はあと5枚。ハイテイは上家のマタイさんだから私に残されたツモ回数はあと1回。たった1回のチャンスでテンパイさせなければならない。できるのか?
(テンパイだけでいいの。せめて鳴ける牌切って!)と祈りながらマタイさんの打牌を待つ。すると。
打7
(鳴ける。けどそうじゃなくてー)と思ったがこれは一応。鳴く。
「チー」
後ろ見していたキュキュやカー子は(なにそれ)って思ったかな。ネルビイ。天才のあんたは理解した? ハイテイずらしとかそういうのじゃないって。わかったかしら。ちょっと難しいかな。
ミズサキ手牌
三四伍③⑤35557(チー789)
◆◇◆◇
(ねえねえ、キュキュ。ミズサキはなんでいまの牌を鳴いたんダロ?)
(……それは……なんだろう。僕にもちょっとわかんない。ネルはわかるかい?)
(ああ、これは絶対チーがいいよ。ミズサキはさすがだよ。麻雀の仕組みを完全に把握してる鳴きだ)
ネルビイの言う『麻雀の仕組み』とはなんなのか。緊張の南3局は山の枚数残りあと4枚。




