その10 第三話 そんな奇跡があってもいい
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第三話 そんな奇跡があってもいい
(まさか三倍満が出るなんて……)
ツモられたら役満だったから親だった私としては三倍満横移動で終わってまだ良かったけど、でもこれで私にはもう親がない。この点差、どうしてくれようか。
そんな事を考えていたけど、ここで私に来た配牌が「まだ頑張れるよ」と言っていた。
涼子手牌 ドラ②
一⑨22356678889
これはすごい! 清一色リャンシャンテンの配牌なんてもらったのは生まれて初めてかもしれない。
必要な手牌が最適な場面で配られる。そんな奇跡があったっていいわよね。異世界で最初の、そして私たちには最後の、麻雀大会なんだから。
3巡目
ツモ2
ツモる牌もその期待に応えるように必要牌が来た。
たった3巡でメンチンのイーシャンテンだ。
涼子手牌
一222356678889
468索引きでテンパイ。でもどれを引いてテンパイしても愚形だわ。理想最終形とは言えない形ね。問題は鳴きを入れるかどうか。満貫で満足していいかどうかは巡目との兼ね合いもあるわ。まだ鳴くのは早い――
◆◇◆◇
涼子が明らかにやる気を出している。私は急いでアガリを目指さないといけないとは思うのだけどどうにも手が進まない。飛び道具も持ってこないしハラハラしながら打つ。絶対に大物手をやってる人がいると分かっているのに打つ手がない。勝てるわけがない装備で戦場に放り出されてるかのようだ。武器はこの際いらない。安全牌を貯めこもう。せめて防具は持っておかないと。
「リーチ!」
打8
やばい。ついに涼子からの渾身のリーチが来た。私はもう守る以外やる事がない。逃げ出したくはなかったがここで戦わないのも最後まで奇跡を信じているからだ。
――数巡後
「ツモ」
涼子手牌
2223456677889 6ツモ
「4000.8000」
(やばっ、147369待ちのこれでも安目ツモか)
1索引かれてたらピンフイッツーで飛ばされる所だった。2局連続で三倍満なんてやられたらたまったもんじゃないよ。
涼子 32500
マタイ 15800
ミズサキ 200
ジャガフ 51500
なんとか生き延びて親番をむかえた。が、これはもう生き延びたと言ってもリーチ棒すら持ってない(競技麻雀大会だけど飛びはゲーム終了の決め)。そんな状況だ。仮死状態みたいなもの。
「うふ、うふふふふ」
「ちょっ、マコトどーしたの。壊れちゃった?」
「りょうちゃんには言ってなかったっけ。私、実はリーチ棒すら持ってない状況が一番好きなの」
「はっ、ハァ? なにそれ、変態なの?」
「そうじゃなくて。なんか、レートとか全く関係なく、このノーテン罰符すら払えない状況って一番ドキドキするじゃない? 一瞬のミスも許されない。その場面がなんかロープ一本命綱なしの綱渡りをしてるみたいで。すごく、楽しくて」
「何が『そうじゃなくて』よ。それがつまり変態ってコトよ」
「えっ、そうかな」
こうして、私は残り点数200点で南3局の親番をやる事になった。




