その4 第一話 いざ、マージへ
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ここまでのあらすじ
『麻雀こじま』の遅番として働くミズサキは人語を理解する謎のカラスと出会い、それを『カー子』と名付け、生活を共にする。
月日は流れて約半年後。
ある日、カー子はミズサキの脳に直接話しかけてきた。カー子の正体は別世界の神だと言うのである。
神に選ばれたミズサキたちはこことは異なる世界へと呼び出されることになった――
【登場人物紹介】
水崎真琴
みずさきまこと
雀荘『こじま』の遅番メンバー。
麻雀が好きなのと働きたくないのがリンクして雀荘遅番という職業につくことを選んだ現代に生きる遊び人。最近はしっかり打てるようになり1人前となりつつある。
小島涼子
こじまりょうこ
雀荘『こじま』の店主の娘でミズサキの親友。とても真面目な見た目と裏腹にかなりふざけた性格をしてる。
パズルには弱くてアタマは固いほうなので麻雀はあまり向いてないが、それでも次第に上手になってきた。柔軟性の化身のようなミズサキ惹かれるものがあるようだ。
カー子
かーこ
人語を理解するカラス。その正体はなんと異世界の神だった?! マージという世界で神をやりつつ雀荘を経営している。
その4
第一話 いざ、マージへ
「うわああああああ!」
「きゃああああああ!」
「大丈夫だから安心して掴まっててヨ。この時のために怪力魔法をわざわざ買ってきたんだカラ」
「そ、そんなこと言われてもおおおお」
時空を超える穴の中は暗闇で、落ちたら二度と戻ってれ来ないだろうという直感があった。怖い。早く出たい。
「あとどんくらいかかるのーーー!」
「もう50秒くらいですヨ」
「早いような! 遅いような!」
手が痺れてきた…… つらい!
「まーだー!?」
「見えました。アレです」
無限の暗闇の先に光が漏れている穴があった。あの先が異世界か――
スポン!
「ふう、到着デス!」
「わっ、たっ、とっ 急に手を離さないでよ、もう!」
反射神経のいい私はなんとか着地したが、涼子は転んでいた。
「イタタタ……」
「りょうちゃん大丈夫?」
「うん、イタタタと言ってみたものの
不思議とあまり痛くなかった」
「多分重力が違うんだと思う。少しだけ軽く感じる。つまりこれは本当に異世界に来たのねー」
「つ……疲れマシタ……もーダメ。怪力魔法は私向きじゃナイから疲労がすごい……も、二度とやんない……」そう言ってエルはその場にしゃがみ込んでしまった。二度とやんないって、私達はいずれ帰るんだけど? 最低限あと一回はやってもらうよ?
「ちょっと。疲れてるとこ悪いけどここからどうしたらいいのよ?」
するとエルは力なく正面を指差した。
「アノ、3階建ての建物の……日が当たらない側の角部屋が私の部屋デス。まずはあそこに移動しまショウ……」
「ホントだ。日が当たってない部屋がある」
日当たりと言っていいんだろうか。そもそもこの世界は太陽がない。太陽ではない何か別の少し小さめな黄緑色の星によって光を得ている。ここは何もかもが違う異世界だった。
「まずは部屋で休みマショ。私はもう、限界なんデ」
魔法が疲れるというのはどうやら本当のことらしい。怪力魔法はエルには不向きな魔法だとか言っていたが、これが属性というやつだろうか。
「ふぅん。おもしろそーじゃん」
全てが初めての環境に不安もあったが、それ以上に私はワクワクしていた。




