その3 第九話 旅立ちの日
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第九話 旅立ちの日
「行く前に聞いておきたいんだけどさ。その、異世界と現世って何度も行き来できるの?」
[可能です。でもその都度大きな魔力を使うので回数は控えたいですネ(私が大変だから)]
「はい」と涼子も手を挙げた。
[なんでショウ]
「今回、カー子さんは目的の時代に来れなかったわけですが、なぜ調整してまた移動しようとはなさらなかったのですか?」
なにげに涼子の言葉遣いが丁寧になってる。神様って聞いたからかな。意外と真面目なとこあるな涼子。
[ンー、微差だったから。このくらいなら成長するの待ってりゃいいかなって思いまシタ]
「おそれながら。カー子半年くらい前からいるじゃんか。微差じゃないっしょ」
私もわざと『おそれながら』とか使ってみた。一度言ってみたかったのよね、おそれながら。ふふふ。
[なんでしょう……感覚の差? 私は3000年くらい生きる種族なので時間の感じ方が人間とは違う可能性がありますね。こう見えて神ですカラ]
こう見えて神。……おそれながら、どっからどう見てもカラスでございます。
「なるほど、つまり微調整してぴったりに時空移動するのも可能ではあるけどそうなると魔力も使うし、ほとんどベタピンだし、そこまでしないでもいいか……と思ってしなかっただけということね。いや、帰ってくる際にキチンとしてないと不便だなと思って」
[そういうコトです。じゃあ、とりあえず行きまスカ]
そう言うと、カー子は器用に窓を開けて外に出た。そして
ボワン!
「わわっ! カー子から子供が出てきた!」
カー子の身体から小さめな女子が出てきた。それは銀髪ロングで耳が尖っていていかにもファンタジーといった具合の美少女だった。
「子供じゃありませんヨ! こういうサイズの種族なんでス! 私はカー子改め『エル』。こことは違う世界『マージ』の神をやってます。よろしくお願いしますネ」
「耳が長くて銀髪。エルフっぽいね。エルフのエルで覚えやすいわ」
「顔の造形が良い。大きくなったら美人になりそうね」
「私はモウ成人してますヨ」
「で、神様。こっからどうやって行きゃあいいの?」
「ンッ!」
エルが念じると急に空間にズズズズズと穴があいた。
「コレに入ればマージに行けます。とりあえず私にしがみついてればOKです。出口を出る時は少し高さがあるかもしれないので気を付けてくださいネ」
「オッケー」
「私たち2人抱えたりなんか出来るの?」
「大丈夫、怪力の魔法を持ってますカラ。魔力もごはんたっぷり食べて満タンになってマスシ」
(魔力ってごはん食べてたまるんだ)
「魔法か、便利なもんね」
「そうでもないデスヨ。とんでもなく疲れるシ」
「そうなんだ」
「忘れモノないですカ。何往復もしたくないですからネ」
「多分ないと思う。あ、ノートと筆記用具だけ持って行こーかな。」
てか、何を持っていくべきかが分かんないし。何せ行き先は異世界だ。勝手がわかるわけがない。とりあえず私はリュックにノートと筆記用具とトマトジュースを詰め込んだ。
「カー子(本体)は?」
「あの子は普通のカラスなんで、野に帰るデショウ」
「んで、ようは異世界でも雀荘メンバーやってやりゃいいんでしょ。でもそれなら条件があるよ」
「それはなんでスカ?」
「私は遅番ね。早番は性に合ってない。もちろんりょうちゃんも一緒で」
「なるほど、涼子サンもそれでイイですか?」
「……仕方ないな〜」
こうして話はまとまり、私たちは異世界へと旅立つ事になった――




