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その3 第伍話 テレパシー

23.


第伍話 テレパシー


「ガー ガー」


(ん… カー子が鳴いてる……。起きる時間か〜)


「おはよう、カー子。今日もありがと」


ジリリリリリリリリ


 カラスに少し遅れて目覚まし時計が鳴る。


カチ 


「今日はカー子の勝ちだったねえ」

「ガー!」


 あたりは夕焼けに染まり人々の一日が終わろうとする中で私の一日がまた始まる。

 いつも通りの日常だ。……と思っていたのだが、今日は違った。


 起きて、さあ支度をするぞと動き出した次の瞬間、聞いたことのない声がしたのだ。


[おはようございマス。そろそろ機

は満ちましたネ]


「誰?!」というか、どこから聞こえてきてるんだ? 


[ダレってことはないでショウ。ワタシですよワタシ、カー子デス]


「ハァ? えっ、ハァ!?」 


 いや、あれ? まだ夢の中? 実は起きてなかったのか私?


 何が起きてるのかわからない。大体この、アタマに直接話しかけるような声はなんなんだ。


[そんなに動揺しますカ……? 今までだって会話は成立してたじゃないでスカ。変なカラスだな。普通じゃないな。トカ思ったでしょうに……]


「いや、それは思ったけども。でも、カラスは賢いって言うしさ」


[賢いからって人間の言葉をマスターする鳥はいなくないですか? まして野鳥ですヨ?]


 う、それは確かに……


「いや、でもさ……もう、わけがわからん。どういうことか説明してくれるんでしょ?」


[思ったより混乱してるようなので、説明に時間が必要かもしれませんネ。たしか、今夜働いたら休みでしょう? 明日イチから説明しますカラ。今日はとりあえず仕事に行っちゃってイイですよ]

「そりゃ助かるわ。明日は涼子も休みだし。……涼子も呼んでいい?」

[いいですけど、あまり大騒ぎしないで下さいネ?]

「わかった。約束する」




────

──


 本当に何がなんだか、まるでわからない。テレパシーみたいな能力でカラスが話しかけてくるとか、誰にも相談できるわけない。

 でも、きっと涼子は分かってくれる。カー子が人語を理解することを涼子だけは知っているし。


 ……それにしても、やっぱ荒唐無稽にもほどがある。事実をまだ受け入れられないでいる自分もいるし。事実? 事実ってなんだ。本当の本当に事実なのか。カラスが脳に話しかけてくるとか。


「店長、今日のミズサキなんとなく変じゃないか? ソワソワしてるというか、どこか落ち着きがないというか」

「青澤くんもそう思いますか。なんか今日は彼女おかしいんですよ。急にボーッとしたり同じグラスを永遠と洗ってたりと」

「早いとこ帰してやれば?」

「……そうですね」


 私はなんだか誤解をされたようで、その日は早めに帰された。



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