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その2 第四話 メンバー制約

第四話 メンバー制約


 昭和平成の雀荘にはメンバー制約というものがいくつかあった。メンバー、つまり雀荘従業員であるならば卓上でもあくまでサービス業。お客様が嫌がるアガリはしない。という趣旨の決め事だ

 これはどの雀荘にもあるもので、主に以下のようなものがあげられる。


1.開局時流局の禁止(9種9牌、四風子連打)ただしオーラスのトップ確定時のみ可能。


2.二着やめの禁止


3.地獄単騎リーチの禁止


4.アガラスの禁止


5.モロ引っ掛けリーチの禁止等々…。この他にも様々な禁止事項がありますが、このような店の決め事を忠実に守るのがミズサキという女の良い所であった。



◆◇◆◇


 ――事件は何の前触れもなく唐突に起こりました。


 

ミズサキ手牌(配牌)南家 ドラ④

二四六八③⑤⑤⑧3578南 三ツモ


 私の手はけっこう良くてメンタンピンドラ1くらい行けそうな配牌だなーって思いました。第一ツモで三萬を引いてこれたのはかなり大きい。とりあえず第一打は南切り。そこに迷いなどあるわけがない手なのだけど……今回はちょっと事情が違う。


東家 捨て牌

第一打


 そうなんです、親が南切りからスタートしていたんです。つまり私も南を捨ててしまうと『四風子連打』の可能性を残してしまうということ。それはメンバーとしては御法度とされている。確かに、対面には涼子もいるので私が南を捨てて、下家も南切りにしたとしても最悪涼子が違う牌を切れば阻止できるのでここで合わせても問題はないだろう。だけど……


ミズサキ

第一打


 それであっても私は制約を守った。後続にもメンバーがいる場合は制約が解除されるなどというルールは無いからだ。理屈の上では大丈夫なのかもしれない。だけど、私はメンバー。それはすなわち卓上の警察官ということだ。警察官が自ら法を犯すなどあってはならないでしょう? だったら、この⑧筒切りはそれと同じ理由だ。すると下家の第一打はなんと南!


(危な! 南南南と続く所だった!)


 そして、対面の涼子の第一打は――



「……ん。ちょっと待って……ん~~……」

「どうしたの? 早く切りなよ」

「うん、リーチ!」


涼子

第一打

⑦リーチ


「えぇ!?」

「マジかよー」

「ちょ、りょうちゃん早すぎ!」


 とは言ったものの私にはこの2枚切れの南がある。こんなのは現物とほぼ同じだ。一発放銃にだけはならない。

(制約守っておいて良かったぁ~。おかげでとりあえず1巡は凌げる……)


ミズサキ

打南


「ロン!」

「はっ!??!!?」


涼子手牌

一一二二三三①②③789南 南ロン(一発)


「12000の1枚」


 まさかのダブリー一発チャンタ一盃口。それも地獄単騎。ちょっとまって。私はメンバー制約を守ったからこそ南を切れないとし残しておいて。涼子はメンバー制約あるって言ってもダブリーだしチャンタだから仕方ないじゃんで地獄単騎の南を選んだ。結果一発放銃ってこと? 可哀想すぎない私?? 普通に私が南捨ててたら涼子は南がカラになってるテンパイだから仕方なしに仮テンにしてたであろうものを?


「……ハッ! ハッハッハーーー! おかし、こんなことあんの!」


 私は思わず笑いだしていた。理不尽なことってあるなぁ。しかし、配牌でチャンタなんてみたことないよ。涼子がリーチしたくなるのもよくわかる。


 結果、この放銃が響いてこの半荘は負けた。あとで負け方が理不尽だったので店長に「あなたの娘さんに理不尽にやられたから何かわびを下さい」と言って、仕事終わりに商店街に立ち寄って、ここらじゃちょっと有名な肉屋さんで高級な牛肉を買ってもらった。今日はお家に帰って1人焼肉フェスティバルだ。少しだけ得したかもしれない。


◆◇◆◇


「うん! おいしーーー!!」


 カー子が食べたそうに見てたので、ほんの少しだけわけてあげた。






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