1話 私と魔獣と調査団と
『ねえ、ミカ。大事なお話があるの』
『実は、ミカには魔力が無いの』
『だから、皆と同じように魔法を使ったりすることができないのよ──』
私が5歳のとき、母にそう言われた。
いつも快活な笑顔を見せる母が、この時ばかりは険しい顔をしていた。
私自身がどんな顔をしていたかと言うと、その記憶は無くて、母の真剣な眼差しをただ見上げていた気がする、ということしか覚えていない。
一つだけ、確かに覚えているのは──
普段なら、口角を上げているはずの母の唇が、震えていた、ということ。
それは、10年弱経った今になっても、決して忘れることのできない出来事だった。
昼下がり。
大海原を前にして、私は佇んでいた。
そしていつものルーティーンを行う。
少し色褪せている教科書を、パラパラとめくって目的のページを開く。
もう何度も見返した記述だが、一文一文律儀に目を通して、実行する。
1、片腕を前に突き出す。この時、もう片方の腕は、突き出した方の腕に添えても良いし、何もしなくても良い。尚、この手順は両腕で行っても良い。
2、身体の魔力の流れを意識する──らしい。
人によっては瞼を閉じると意識しやすいそうなので、目を閉じる。
3、身体の中に流れている魔力を、突き出している手へと集中させる──らしい。
4、魔法のイメージを思い浮かべて、発射する。
以上の工程を行えば、魔法が撃てる──らしい。
そう、らしい。
一般的には、この手順通りに進めれば魔法が使える。
しかし残念なことに、私は一般的ではなかったようだ。
目を開いて、自分の手を確認する。
私の手の平からは、何も出てこなかった。
いつもと同じ結果にため息をつき、腕を力なく下げ、空を仰ぐ。
晴れた青と、真上に佇む太陽から注ぐ優しい光が、憎らしいほどに眩しく思えてくる。
何故私は魔法が使えないのか。
簡単な話だ。
私に魔力がないから。
もちろん、これは昔から分かりきっていることなので、今更でしかない。
それでも、と。
微かな希望を持って、誰にも見られない場所で、一人密かに魔法の練習をしている私を、笑う人がいるだろうか。
いや、いるにはいる。大勢いる。それはもう数え切れないほどに。
しかし中には、私の思いを尊重してくれる人もいる。
……片手で数えられる程ではあるが。
私は魔法が使いたい。
でも、私は魔法が使えない。
魔法を使って人の役に立ちたい。
でも、私は魔法が使えない。
私は普通に生きていたい。
でも、私は魔法が使えない。
酷い話だ。
きっと、私はこのジレンマを解決することはできないだろうし、この先書かされるだろう進路希望調査の用紙が、真っ白になることは決定している。
厳しい世界だ。
……魔法が使えていたら、こんな事考えなかったのに。
「キャルルゥ〜♪」
皆さんは、知らぬ間に獣に押し倒されるという経験をしたことがあるだろうか。
私はある。
今経験した。
魔獣。
何百年か前から発生し、獣人、半獣人含む私達人類(私は除く)と同じように魔力を持ち、魔法を使い、ときには人間と友好的に接し、ときには人間を襲うこともある獣たちのこと。
みたいなことが、なにかの教科書に書かれていた気がする。
この獣が、どこからどうみても魔獣であることは明白だろう。
青色のまんまるい目が、こちらの顔をしっかりと見据えている。
その白い毛皮は、触らずともモフモフとしていることがわかる。バサバサという何かをはためかせる音が聞こえることから、羽が生えていることが推測できた。
そして、その立派な四肢をもって私の上に覆いかぶさっている、ということらしい。
まさか、一人砂浜でたそがれていたら、魔獣に出くわすだなんて思いもしないだろう。
背中に砂の感触がする。
現在の私は仰向きに倒れているのだから、このキャルキャル鳴いてご機嫌な生き物をどうにかしないと、動くことはできない。
このモフモフが温厚な性格で、人間に危害を加えないような魔獣ならどうということは無いのだが、これが肉食動物とかだったら私の人生は詰みだ。
ピクピクと揺れる大きな耳が可愛らしい。
が、僅かに空いた口から見える牙にギョッとした。
──この獣は、紛れもない肉食動物だ!!
人生が詰んだかもしれない!!
「キャル」
赤い舌が、獣の口から伸びる。
私の人生も、もはやここまでか。
そう思った矢先──
「キャル!」
赤い舌で頬を舐められた。
「は……?」
驚いているのも束の間、私があっけにとられている間に顔を舐め回される。
「え、ちょ、なになになに!」
どうにか両手で獣の顔を押し返そうとするが、獣はこちらの抵抗をものともせず舐め続けている。楽しそうな鳴き声を出されても困る。この、モフモフな手触りをしやがって。手が離せないじゃないか。
ええい、ご機嫌な声を響かせるんじゃない。ワシャワシャと撫でる手が止められなくなってしまうでしょうが。
両手が塞がってしまい、この白いモフモフに対抗する術は、もう無くなってしまった。
いったいどうしたものか。
と、途方に暮れていたら。
「うわあぁ!!?だ、大丈夫ですかー!!?」
若い男性が、大声を上げながらこちらに向かって走って来ていた。
「申し訳ありません、うちの魔獣が……」
「い、いえいえ、こちらもたくさん撫でてしまいましたし……」
紺色の制服を着た男性に、深く頭を下げられる。
大人に謝られてしまうと、どう対応していいかわからなくて、狼狽えてしまうのでやめてほしい。
「民間の方に安易に近づかない。そう教えた筈だろ」
男性が白いモフモフに語りかける。
「キャルル……」
先程まで私の顔を舐め回していたモフモフが、分かりやすく耳と尻尾を下げている。
あの状況だと、このモフモフが私を襲っているようにも見えたのだろう。そうだとしたら、よほど心臓に悪い光景だったに違いない。
「全く、肝が冷えたよ……」
そう言いながら男性はモフモフの頭を撫でる。
すると、モフモフはすぐに機嫌を直したようで、元気に尻尾を振っている。
なんともかわいいものだ。
……それにしても。
この紺色の制服には見覚えがある気がする。
制服の胸ポケットのあたりの──知らない人はいないだろうと言っても過言ではない──胸章に気がついて、すぐに理解した。
それなら、男性が口にしていた『うちの魔獣』という言葉にも合点がいく。
舐められている時には気づかなかったが、モフモフ─もとい魔獣につけられている、金色に輝く首輪。
この胸章に、金の首輪の魔獣を連れた、紺色の制服と言えば。
「あの、もしかして……アルガリア調査団の方ですか?」
思い当たる節を、口に出してみる。
「ええ、申し遅れました。私は、アルガリア調査団第2部隊所属、アーロン・パピスキーと申します」
「あぁ、ご丁寧にありがとうございます」
返答は予想の通りだったが、急にビシッとした敬礼をされたので、おずおずとしたお辞儀で返してしまった。
アルガリア調査団といえば。
主に魔獣関連の調査を行う、超有名な調査団である。なんでも、遥か昔から存在し、魔獣調査だけでなく、様々な分野の調査を行い、今日までの研究に大幅に貢献しているのだとか。
また、魔獣研究の一環で、魔獣を訓練して調査に協力させたりするなどの活動も行っているらしい。
この調査団がなければ、人類の技術はここまで発展しなかった、なんて言う人も多くいる。
その名声は世界に轟いており、この調査団への入団を熱望する人は後を絶たない。
危険な仕事ではあるが、その分福利厚生も給料も良し、さらにあの名高い調査団とくれば、入団すれば周りから羨望の眼差しを向けられることとなるだろう。
「……凄いですね。私、調査団の方とお話をしたのは初めてです」
「いえ、私はそのように謙遜される身分ではありませんよ」
今さっき声を張り上げながら走っていた人と、同一人物とは思えない程の丁重さだ。
なるほど、アルガリア調査団の団員ともなると、物腰の柔らかさも求められるのだろう。
人々の憧れの的になるのもわかる。
……きっと、私のような人間がなれるものではない。
ああ、人と話しているのに、勝手に陰鬱な気分になるのは私の悪い癖だ。
アーロンさんのお仕事の邪魔をしないうちに、さっさと撤退してしまおうと、別れの挨拶を告げようとするが──
「……失礼ですが、中級学校の生徒さんですか?」
聞き捨てならない言葉が聞こえて、とても帰ることはできなかった。
「……なぜ、それを」
「驚かせてしまい、すみません。そちらの教科書は、貴方のものですよね?」
はっと気づいて、自分の足元を見る。
そこには、『魔法学 中級学校編』の教科書が転がっていた。
……紛れもなく、私の所有物だ。
「いやあ、教科書が擦り切れるほど読み込むなんて、よほど魔法学に興味がお有りなのかと思いまして……」
少しはにかみながらアーロンさんが言う。
興味がある、なんてものじゃない。
教科書が擦り切れて色褪せているのだって、どうにかして魔法が使えないかと、隅から隅まで読むという悪足掻きをしたせいだ。
嬉しそうに言われた言葉に何も返せなくて、ただ口をつぐむ。
目を合わせられなくて、自分の爪先を見下ろした。
私とアーロンさんの間を、風がひゅうと通り過ぎていっていた。
どうか、これ以上聞かないでほしい。
これ以上、踏み込まないでほしい。
そう願いながら、握りこぶしに力が入った。
「ああ、ところで。学生さんがこんな昼間から出かけてていいんですか?」
聞こえてきた声は予想だにしなかったものだった。
「へ?」
思わず顔を上げる。
「ほら、今頃授業時間でしょう」
「……今は、春休み期間なんですよ」
「は、春休み……!ああ、そんなものもありましたね……」
肩を落としながらも、納得した素振りを見せる。
そういえば、春休みが始まったばかりの時、お父さんが似たようなことを言っていた。働き始めてしまうと、長期休みという存在が無くなってしまうらしい。
大人というのは、大変な生き物なんだなぁと、その愚痴を聞きながら思った記憶がある。
「ははぁ。でしたら、時間は沢山あるということですね」
「えっと…、それがどうかしましたか?」
話の展開が読めなくて、素直に疑問を言葉にした。
「ふふ、魔法学にここまで関心がある人はあまり見かけたことがなくてですね。ぜひともお話したいと思ったんですよ」
これでも、学生の頃は魔法学の成績は上位常連だったんですよ、と言う。
決して興味が無いとは言わないが、学問としての関心があるかと言われたら正直NOだ。
私は、ただ魔法を使いたいだけに過ぎないのだから。
「あの、お仕事は大丈夫なんですか」
単刀直入に、別にしたくないですなんて言えるわけがないので、遠回しながらもその気持ちを混ぜる。
「本日の業務は既に終わっていますから、気にする必要はありませんよ」
ニコニコとした笑顔で返された。
……どうにか話を反らしたい。
「えっと、魔法学も良いですけど──」
何かないかと視線を動かせば、青色の瞳と目が合った。
「……私、魔獣のことの方が気になります」
「キャルッキャウ〜!」
モフモフがこちらに駆け寄ってくる。
「あっ、こら!オルグ!」
オルグと呼ばれた獣は、一瞬動きを止めたが、すぐに歩みを再開した。
「キュル!」
そして私の目の前にお行儀良くお座りをしたかと思えば、私の手に鼻面をぐいぐいと押し付けてきた。
「オルグって名前なんだね、君」
「キュルルルゥ~♪」
お望み通り顔の周りをワシャワシャと撫でてやると、満足そうな声が聞こえてきた。
ちらとアーロンさんの様子を見てみれば、信じられないと言うような顔でこちらを見ている。
……オルグくん、果たして私の手の平は、ご主人の声掛けを無視するほどの価値があるのかい。
いや、これはご主人に許可を取りもせずに撫でまくる私も悪いかもしれない。
「あの、勝手に撫で回してしまってすみません」
「いや、良いんですよ。そのまま撫でてあげてください、オルグも楽しそうですから……」
そう言いつつも、アーロンさんはすっかり項垂れてしまっている。
オルグくんがくるっと首を回してアーロンさんのことを見ていたが、首を少し傾げるだけだった。
お願いだから、もうちょっと興味を持ってあげてほしい。
「……ふ、ふふ、いいでしょう。魔獣の話をしようではありませんか」
「あ、え、大丈夫なんですか?」
「ええ、問題ありません」
「知りたいことを知れる機会があるなら、積極的に活用すべきですからね!」
そう言われて、思わず目をパチクリとしてしまう。
「学生さんの本分は、知ること、学ぶことですから。そのお手伝いができると言うのなら、いくらでも協力しますよ!」
魔獣のことを知りたいと言ったのは、咄嗟の言い訳だ。
できることなら今すぐ家に帰りたいし、素性の知れない人と話し込むのは避けたい所だが──。
「キュル?」
丸い青色の瞳が、上目遣いでこちらを見てくる。
「……今なら特別に、話せる範囲だけですが、調査団としての調査の実体験も交えてお話しますよ」
これがダメ押し、というやつだろうか。
……まあ、素性が知れないといっても、アルガリア調査団の人だし。
魔獣のこともちょっと気になるし。
──話を聞いてみるぐらいなら、いいかも。
─────────
「──それでですね、その瞬間、何十匹もの鮮やかな鳥たちが飛び上がったんですよ。そしたら──」
「──その魔獣の親子を保護して、一週間ほど様子を観察していたんです。そうしたら、幼獣の方の身体が光り始めて──」
「──面白いことに、その翼竜はオルグと仲良くなってくれましてね。それから救援が来るまでの間、その翼竜の巣で生活していたんですが──」
面白い、面白い、おもしろい!
厳しくも、雄大な大自然の中で生きる魔獣。
その魔獣を間近で調査して、何故そのような生態をしているのか、その魔獣の周りで何が起きるのか、起きているのかを調べる。
それは、決して留まることのない新たな発見の連続であり──
調査団はその発見を世に広め、生かすために存在しているのだ。
胸の鼓動が鳴り止まない。
魔法が使えていたなら、私はきっと──
それほどまでに、アーロンさんが話す内容は魅力的であった。
そうやって呆けていたら、右頬になにか温かいものが触れた。触れた、というか舐められた。
この感触には覚えがある。
「キャルッ!」
アーロンさんの話に聞き入ってしまって、すっかりオルグを撫でることを忘れてしまっていた。
じと、と見つめられる。
機嫌を損ねてしまったらしい。
「ごめんね、気づかなくて」
「キャル♪」
わしわしと撫でたら、すぐにオルグは尻尾を振り始めた。
「……それにしても、この、オルグくんでしたっけ。すごく人懐っこいですね」
目を細めるオルグの首元をかきながら言う。
「いや、そうでもないですよ。オルグが私以外に擦り寄っているのなんて、初めてですから」
その言葉に戸惑った。
こんなに甘えん坊な魔獣が?
ほら、こんなに尻尾を振っているのに。
オルグとアーロンさんを交互に見返す。
「私もビックリです。まさか、こんなに魔獣に懐かれる人がいるだなんて」
「珍しいんですか?」
「大抵の魔獣は警戒心が強いので、初対面のものにはまず近づきません。なので、凄く珍しいんですよ」
不思議で仕方がありません、なんて言われても、私には心当たりがない。
近所の牧場の家畜に懐かれている、ということが、せいぜいである。
「これは、紛れもない才能です」
その言葉が、強く耳の中で響く。
才能。
言うなれば、私には魔法を使う才能がないわけだが。
その代わりに、別の才能を貰ったとでもいうのだろうか。
「……この才能って、何かに使えるんでしょうか」
才能とまで言うのなら、使い道がほしい。
人の役に立てるものなら、尚更いいだろう。
もし私にもできることがあるのなら──!
「使えますよ。とある職業にね」
「っ!教えてください!!」
食い気味にアーロンさんに迫る。
「それは──」
それは──?
「アルガリア調査団です」
この人は、何を言っているのか。
体の力は、完全に抜けてしまった。
「……冗談ですよね?」
なんとか、声を絞り出す。
「いいえ、冗談ではありません」
きっぱりと言い切られる。
「っでも、調査団なら魔法の才能も必要ですよね!?」
図らずも語気が強くなる。
「ああ、非公式の調査団学校が謳っているやつですか」
「ひ、非公式……?」
「アルガリア調査団からの認可を受けていない、という意味です。近年、増加しているようですね」
「そ、そうなんですか……」
そんなこと、知らなかった。
ああ、じゃあ、それなら。
それだったら。
西日が、私とアーロンさんに差し掛かっている。私の左頬は、既にオレンジ色に焼かれてしまっていた。
心音が、耳のすぐそばで聞こえる気がする。
声が震える。
喉は既にカラカラだ。
こんなことを聞いてどうする?
いったい何になる?
……いや、弱音を吐いてばかりでは、どうにもならない。
少しの希望も、逃してはならない。
だから、ここで聞かなければならない。
一度だけ、息を吸う。
「あ、あの──」
「魔法が使えなくても、調査団を目指してもいいんですか」
最初の威勢は良かったが、段々としりすぼみになってしまった。最後の方など、ほぼほぼ聞こえていないだろう。
それでも、アーロンさんは優しく微笑んだ。
「いいに決まってます。アルガリア調査団が求めているのは、志を持った人ですから!」
活路は見えた。
こんな私でも、この世界を生きていけるかもしれない。
拳を握りしめる。
顔を上げて、前を見据える。
「……いい顔をしますね」
アーロンさんと目を合わせる。
その人の右頬は、私と同じようにオレンジ色の日差しを受けていた。
それから──
この人の瞳は、綺麗なオレンジ色をしていたのだということに、この時初めて気づいた。
「せっかくですから、貴方に丁度良い調査団学校をご紹介しましょうか」
「え、本当ですか?」
「もちろんですよ」
そう言うとアーロンさんはメモを取り出し、何かを書き終わると、こちらに差し出してきた。
それを両手で受け取る。
私の母校なんですよ、と言いながら手渡されたメモを確認する。
見れば、そこにはかの有名な調査団学校の名前があった。
「ああ、そういえば、お名前を伺ってもよろしいですか?」
メモを見ながら唖然としていたら、そんなことを聞かれる。
「……ミカ、です。えっと、なんで名前なんか……」
「未来の後輩の名前は、知っておきたいものですよ」
アーロンさんの顔を見上げる。
そこには、満面の笑みを浮かべる人がいた。
新学期。
クラス替えがあって、始業式が終わって。
親友たちと、帰路につく。
「いやー、まさか二人と同じクラスになるなんてね!」
「ああ、純粋に嬉しい」
「リオンったらー、あたしたちと一緒でそんなに嬉しい?」
「おや、私とミカが教室に入った途端に、飛び出してきたのはルナじゃなかったか?」
「待って、今のナシ。思い出すと恥ずかしいからやめて!」
片や、一つに束ねた桃色の髪を揺らしており、もう片やは、先端が黒い毛に覆われた黄金色の長い尻尾を揺らしている。
どちらも、親愛なる友人たちのチャームポイントである。
「あ、てかミカ!言いたいことあるって言ってたよね!聞きたいんだけど!」
「そうだったな。言うタイミングはミカの自由だが、私も聞きたい」
二人がこちらを振り返る。
マゼンタの瞳と、黄金色の瞳から見つめられる。
「……聞いても笑ったりしない?」
「誓おう」
「明日遊ぼうとかじゃなければね」
「流石にそんなんじゃないよ」
くす、と自然と自分の口からの笑みが漏れる。
この二人なら、きっと大丈夫だ。
「私、アルガリア調査団に入団したいの」




