1、どうも、西洋ファンタジーから逆輸入された転生者です
地球は日本の九州に生まれ落ちた一般人。
趣味は異世界転生物のライトノベルを読むことと、食べ歩きっす。
誰のことかって、そりゃもちろん、俺ですよオレオレ。詐欺にはあらず。
『ゲギャッ!?』
魔力を纏った靴履きの爪先が跳ね上がり、こん棒片手に突っ込んできた小学生くらいの背丈の濃い緑色をした人型の顎を蹴り上げる。
すると威力が過剰なのか相手の首から上がグリンと背中に当たる程度まで折れ曲がり、頚椎が折れたのだろう鈍い音を立てて、致命傷一丁上がりだわ。
勢いそのまま背中から地に倒れ、幾ばくかの痙攣を見せた後に絶命する。初めて見たときはちょっとビビり倒したけど、毎回こうだとさすがに見慣れるなーと心の中で思いつつ、まだ二体残っている同種が襲ってくるのに軸足をそのまま蹴り上げた足をクイッと膝で曲げ戻し、ジャブのように素早く二度蹴り出せば、先ほどの光景がリフレインされて、都合三体の人型の何かの躯が目の前に転がっていた。
「ふむ、だいぶ慣れたなー。ゴブリンも楽な相手になってきた」
残心しつつも周囲から敵意脅威がなくなった事を納得し、構えていた我流の型を解く。すると目の前の床に転がっていた緑の小鬼と一般に周知されていたダンジョンモンスターの躯が息絶えた順番にフワッと光の粒子になって霧散していくのを見届けた。
「お、ポーションじゃん、ラッキ」
するとその場所に三つの黒い水晶体と、小さなガラス小瓶に赤い液体を満たされたのが残っているのを見て、俺は上機嫌にそれを拾い上げると腰に巻いていたポーチを開けて中に落とし込む。
水晶体は『ゴブリンの魔石』で、小瓶の液体は『ローヒールポーション』という。探索者協会の買取窓口では、前者が一つ百円、後者が一つ二千円で買い取ってもらえるのだ。
つまり今の数分程度の短時間で、社会に出てまっとうに働くよりも効率的な時給を得ることができる、素敵な放課後アルバイトの真っ最中である。
なおミスると命を失いかねないハイリスクハイリターンなそれである事も記す。
あ、自己紹介がまだだった。
俺はこれこれこういう者です。
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氏名:栗子氏 天
年齢:17歳
性別:男
レベル:5
職業:高校二年生/武闘者
職能:一般教養、武芸百般(我流)、魔力制御
称号:一般人(転生者)
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以上、ステータスカードからの抜粋。一部表記は何故か隠蔽されていて鑑定されても気づかれない模様。フシギダネ?
つまりはそう、どこにでもいる一般人な学生さん。まあ、あえて人と違うところといえば。
現代社会では空想の産物なはずの、西洋ファンタジーな異世界で生きた前世の記憶を持ったまま転生しちゃったというくらいのものじゃて、ほっほっほー。
なお死因は年取っても通っていた娼館にて、腹上死だった模様。有終の恥を飾ったものじゃよ、あっはっはっは……くっ、殺せっ(すでに転生済み)。
とはいえ、こっちの世界にも十分にファンタジーなダンジョンとやらが存在している世界線だったけどもね。俺にとっては前世でそれなりに馴染みのあるモンだったからいいけども。
うん、生きることに問題はないな、という程度の差異ですの。




