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第八話 異世界人

神崎の作ったポーションは確かに性能的には上級

ポーションと呼ばれるほどの回復効果を見せた。


「お父様、これはすごいことではありませんか?

 是非、販売ルートを確保して売り出すべきです

 わ」

「アンネ、待ちなさい。少し落ち着いて話をしよ

 うか」


アンネと違って領主様は少し思うところがあるよ

うだった。


この場には娘のアンネと、護衛のエリーゼ、神崎

と領主様の4人しかいない。


アンネの興奮するような声音に一旦、お茶が差し

出された。


「まずは落ち着きなさい。それで、カナデくんは

 これを販売しようと思うのかね?」

「あ……もし俺が作ったものが売れるのなら……

 まだ書物を読んだばかりなので、あまり上手

 くはできませんが、それでもこれで助かる命が

 あるなら安くてもいいので販売できませんか?」


神崎の言葉に、エリーゼの盛大なため息が聞こえ

てきた。


まさか……まずい事を言ったのでは?

神崎は少しあわてて弁解する。


「あ、いや、でも…こんな粗悪品売って、領主様

 の評判を落とすようなら……俺は……」

「はぁ〜…そうではない。これは市販で売られて

 いるものよりも効果が高いんだ。聖教会で高い

 お布施を払わないと手に入らないほどの上級品

 と同等と言っているんだ。」

「上級…品?」

「知らないようだな。ポーションはそもそも神聖

 術という魔力とは別の何かとされている。それ

 を伝授された者のみが作れる神のミワザとも言

 われているんだよ、だから、高いし庶民には手

 に入らない。」


言っている事が大きくて、少し戸惑ってしまう。


「こんな事が誰でも出来るとなれば、製法が疑わ

 れるのだ。それも、私の書物から見てやったと

 言ったな?」

「はい、この屋敷の本を読んで……ダメでしたか?」

「いや、それはすなわち、誰でも手に入る物とい

 う事だ」


領主様の言葉に不思議と疑問を感じる。

出来たのだから、何がおかしいのだろう?


するとエリーゼさんがいきなり跪いたのだった。


「領主様に言わなければならない事がございます」

「なんだ?」

「それは……カナデは異世界から召喚された者な

 のです」

「それは…まことか?」

「……」


一斉に視線が向くと、一瞬戸惑ってしまう。

記憶がないと嘘を言っていたのがバレてしまうか

らだ。


「…はい…確かに俺はこの世界の人間ではありま

 せん。だから、この世界の事が全く分からない

 のです。ですが……この姿はこの世界にきてか

 らなのです。いきなり森の中で目が覚めて……

 それで……」


いままで、起きた出来事を啄んで話した。

いきなり呼び出された事や、姿が変化していた事。


そして、年齢も違う事。


「では、性別は…」

「性別は男です。今もですが…」

「そうか…、苦労したのだろう。ゆっくりしてい

 けばいい。ただ、この事は城へ報告すべきか悩

 む所だ……」

「お願いします。黙っていてくれませんか……」


神崎はこの前あった長野を思い出す。

クラスメイトにあっても、きっといい事はない。

それに、神崎の能力は結局は他人頼りなところが

多い。


信用できない人間となど組みたくはない。

ましてや、自分を虐めていた相手や、それを見て

見ぬふりをしていたような連中となど一緒にいた

くはなかった。


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