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第七話 試作のポーション

横たわっている兵士の脇腹には深い傷跡があった。


訓練中に事故でこういった怪我が起こる事は、稀

にあるという。


部外者からしたら、怖いと思ってしまうが、兵士

達にはそんな感情を持つことさえも危険なのだと

言う。


それは、護る為に戦うのであって、自分の命をか

けれなければ、護衛対象すらも危なくなるという。


怖ければ逃げればいい。

なんて言葉は通用しない。


騎士となったからには命令された事は完遂しなけ

ればならない。

それが、仕えると言う意味だとエリーゼさんが話

してくれた事があった。


魔物にも、ましてや相手が人間である事もあると

言う。

少し前に獣人国との戦があったと聞いた。

その時私兵を連れて領主様も出陣なされた。


結局は今回も賢者と言われる魔法のエリートが全

て解決したと言っていた。


『あれは戦争ではない……虐殺だ……一体王は何

 を考えているのか…』


酒を飲みながら愚痴を溢していたのを思い出す。


国同士のいざこざで、国ごと滅ぼしていては、そ

のうち立ち行かなくなるとも言っていた。


人種族以外の種族とも仲良く出来れば、もっとよ

り良い関係を築き、お互い栄えさせれるのに…。


こんな考えはきっと、異世界からきたからこそ思

うのかもしれない。

それでも、目の前の人が傷つくのはみたくない。

ましてや、死ぬ事など……


「これを使ってみてもいいだろうか?」

「もちろんですわ。いいですわよね?カナデ?」

「あ……はい、大丈夫です。ちゃんと治るといい

 のですが…」


不安に駆られながらもエリーゼがポーションを

負傷していた兵士に飲ませた。


変化らしい変化はない。


「失敗か……」

「ですわね……」


そう思った時、傷口が光り輝くと、みるみるうち

に塞がっていったのだった。


そして、出血が多かったせいで顔色が悪かったは

ずだが、息も次第に整うと、顔色も良くなってい

った。


「すぐに運べっ!それと医療班にすぐに診察させ

 るんだ」


エリーゼの判断は凄まじく早かった。


「この場にいる者に緘口令を敷く。今見た事を誰

 にも話すな!いいな?家族にもだぞ!」


「「はい」」


一斉に声がハモる。


ここではエリーゼさんの言葉は絶対だった。


兵士達の信頼も厚く、頼りにもなる。

本当に、神崎に毎回護衛としてついてきてもらう

のが心苦しいほどだった。


「カナデ、これは成功ですわ。早速お父様に直談

 判しますわよ!」

「アンネっ!ちょっと待ってよ!」

「待ちませんわ。そうだ、もう一個作っていきま

 しょ」


アンネが言うと、神崎の手を引いて部屋に戻って

いく。

エリーゼはそのまま兵士に付き添って行った。

残ったナルサスはと言うと、自主トレーニングに

励み出したのだった。

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