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第六話 訓練中の事故

初めてで出来てしまった事に、神崎自身が驚きを

隠せかなった。


「これって、ちゃんと出来てるよね?」

「では試しに行きましょう」

「試しにって……どこに?」

「さぁ、早く行きますわよ」

「アンネっ!ちょっと待ってよ……」


ポーションを掴むと神崎を急かすようにアンネが

走り出す。


向かった先は訓練場だった。

ここでは兵士達が日々厳しい訓練に明け暮れてい

た。


「エリーゼ!エリーゼはどこにいますのっ!」


アンネの声に、近くにいた兵士が手を止めると、

奥へと案内してくれた。


そこではナルサスとの一騎打ちの勝負中だった。


どう見てもナルサスの方だけがボロボロになって

いる気がした。


「エリーゼ!ここにいましたのね」

「アンネ様、どうしてここへ?」

「あぁ、これは失礼しました。ナルサス様ですわ

 ね。わたくし、この屋敷の主、領主の娘、アン

 ネ・ルイーズですわ」

「アンネ様、このような者に挨拶など不要です」

「いいえ、エリーゼ。この方はカナデを護る騎士

 なのでしょう?挨拶は大事ですわ。それと。忘

 れるところでしたわ。これを使って欲しいので

 す」


アンネが差し出した小瓶はポーションにしては色

が少し薄い気がする。

透明度が高く、薄く色がついている感じだった。


だが、表示は回復ポーションとなっていた。


「こ、こんな高価なものを?」

「いえ、これはカナデが今作ったものですわ。試

 しに使って欲しいのです。効果が高ければそれ

 でよし。低ければそれまでですわ」


アンネが言う事は理解した。

理解した上で、エリーゼは悩んでいた。


神崎のバフは規格外に強力だった。

では、神崎が手ずから作ったポーションはどれほ

どの効果を示すのだろう。


もし、規格外だったら?

市場に出せるのだろうか?


いや、その前に誰に使うのか?


普通なら、怪我一つないエリーゼが使う理由はな

い。

だから、ナルサスに使うべきなのだろうが……。


なぜか胸騒ぎがしてならない。

今、ナルサスに使うべきではないと第六感が告げ

ていたのだった。


「主人の試作品なら俺が飲みますよ?」

「いや、ダメだ!」

「エリーゼ?何を言ってるの?効果を見たいから

 ここにきたのよ?飲ませてみて頂戴」

「それは……少し待って貰えませんか?」

「どうして?」

「それは……」


悩んでいる時に、訓練場の方が騒がしくなってい

た。


「エリーゼ様、訓練中に兵士が……!」

「何があった?案内しなさい」


ポーションを握りしめたまま、呼ばれた方へと駆

けていく。


そこには、剣の訓練中にはよくある事だったらし

いが、神崎やアンネには初めて目の当たりにする

事故だった。


深く腹を掠めたのか、大量に出血した兵士が横た

わっていたのだった。

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