第二十四話 闇討ち
夜は各自で集まって眠る。
長野と上島は少し離れた場所に陣取るとそこに簡
易テントを張って眠る事にしたのだった。
夜にしておけ…
さっきそう言ったのはいいが、本当に上島が動き
出すとは思わなかった。
すぐにキレる所は前から短所だとは思っていたが、
本当にこの世界に来てもそれだけは変わらなかっ
た。
幼女趣味だと言うのも、初めて知った気がする。
死んだ江口は獣人にハマっていたっけ…。
「人の趣味には口出しするもんじゃねーよな…」
こっそりてんとを抜け出していくのを、長野は横
目で見ながら、再び目を瞑った。
そんな中、こっそり起き上がると上島は行動を
開始したのだった。
集団で集まって眠っているので、下手に近づけ
ばすぐに気づかれるだろう。
それでは夜まで待った意味がない。
そんな時、タイミングよくあの男の娘が目を覚
ますと父親を揺すって起こした。
「おしっこ……」
「そこでしてこいよ」
「一人は怖いもん……」
「仕方ねーな。ほら、行くぞ」
少女を連れて離れる。
これはチャンスだった。
森の奥に入ると窪みで用を足すように言う。
「そこで待っててね…絶対だよ?」
「分かったって……ふあぁ〜、眠い……」
後ろを向くと娘の様子を眺めながら腰を落
とした。
ガサっと音がしてそのまま眠いまなこを向け
ると昼間の青年と目があった。
「なんのようだ?」
「別に?俺もションベンしたくてね……そう
いえばあんたの娘なんだってな?」
「このガキが…何を考えてやがる…」
「別に?あんたがいなけりゃ、どうなるかな
ってね…」
言い終わる前に魔法を放つ。
男を包み込むように水が湧き上がると共に声
も掻き消える。
水の中に綴じ込めればこっちのものだ。
ゆっくり凍らせていく。
上島は最近やっとウォーターカッターを覚えた。
前も使えてはいたが威力が低かった。
だが、今は違う。
人間なら簡単に真っ二つにできるほどの威力が
ある。
ただ避けられると困るので、こうやって動きを
鈍らす。
「じゃ〜な……おっさん」
息ができずにもがきながら上下を真っ二つに割
ったのだった。
音もなく、綺麗に始末できた。
あとは残された少女のみ……。
「お楽しみはこれからだな…」
不適に笑うと、茂みを掻き分けていく。
放置した死体は消えて一枚のカードが地面に
残った。
「なんだ?これ……まぁ、いいか」
血に染まった地面にカードも赤く染まっていく。
すると、そこに向けてか細い声が聞こえてきた
のだった。
「ねぇ〜、そこにいるんだよね?」
「…」
「お父さん?」
「お父さんを探してるのかな?一緒に探してあ
げようか?」
一瞬怯えたような顔を見せる少女に、にこやか
に笑って見せる。
「さっき、お父さんは呼ばれて行っちゃったか
ら、一緒に連れて行ってあげるよ」
「本当に?」
「あぁ、勿論だよ。ほら迷子になると困るから
ね」
手を差し出すと、恐々としながらも素直に手を
差し出してきた。
下手に攻撃すれば、幼い少女は死んでしまう。
だからあえて直接触れて凍らせる事にしたのだ
った。
手を繋いだ瞬間、触れた部分を一気に凍らせた
のだった。
「いやぁっ……何、これ……」
「痛かった?仕方ないなぁ〜、逃げられちゃ困
るからな」
「いやぁっ、お父さん、お父さーん!助けてっ!」
「このっ、騒ぐなっつーの!」
そう言って足を地面に密着させたまま凍らせた。
怯えるように声を上げるのを手で塞ぐとガブリッ
と噛みつかれたのだった。
「このガキが!優しくしてやるって言ってん
だろ!」
口の中に水で球体を作ると苦しそうに引っ掻い
て来た。
それも最後の抵抗のようにすぐにおとなしくな
った。
「そうやっておとなしくしてればいいんだよ」
少女の服を脱がせる頃にはぐったりと動かなく
なる。
「おいっ、起きろっ!寝たフリか?」
揺さぶっても、目を覚さない。
そして、一瞬光ると目の前には一枚のカードが
落ちていた。
そこには少女の姿は消えていて、残ったのはカ
ード一枚だった。
自分たちのクラスメイトは死んでも死体はその
まま残っていた気がする。
だが、ここの世界では死んだらカードになって
しまうらしい。
「マジかよ……まだ楽しんでねーのに……」
上島は残念そうに肩を落とすとそのまま戻って
行ったのだった。




