第八話 パーティー
熊を翻弄するウサギなんて見た事がなかった。
飛びかかると爪で切り裂き、すぐに離れる。
視界を失って匂いで敵を追おうにも鋭い爪で鼻先を引っ掻
かかれてしまい、匂いも当てにならない。
適当に爪を振り回すが、的の小さい相手にはあたりもしな
い。
それを嘲笑うように何度も飛びかかり切り裂いていく。
動かなくなるまで切り掛かったせいで身体中ボロボロにな
って力尽きたのだった。
「本当に……倒したのか……」
ウサギは牙と爪を引っ込めると、自慢げに毛繕いを始めた。
「襲って来ない……よな?」
恐る恐る近づくと、ウサギがこちらに気づいた。
こっちにぴょこぴょこ飛んでくると、神崎の顔が引き攣る。
流石にあんな戦いを見て、平気でいられる人はいないだろ
う。
すると、足元に擦り寄ってくると可愛い仕草でこちらを見
上げてきた。
パーティーメンバーと出ているせいで、仲間だと思ってい
るようだった。
「あ…ありがとな…」
「……」
すりすりと足に擦り寄って来る姿は実に愛らしい。
森を出るまではこのままでいたほうがいい気がした。
熊をストレージに入れると皮と爪、肉がストレージに治っ
た。
「あれ?……熊肉?そのまま入れたよな……まさか」
解体要らずとはこの事だろう。
ストレージに入れると自動的に解体されて入っていた。
これなら血だらけになってまだ肉を解体する必要がなく
なった。
神崎は枝を集めると暗くなる前にと火を起こそうと試み
た。
▷ 石を叩いて火花を出して火をつける。
木を擦り火花を出す。
考えた結果、まずは石で確かめてみる。
だが、全く火がつく気配すらなかった。
「肉はあるのに焼けないんじゃ食べられないじゃん…」
横ではウサギが草をむしゃむしゃと齧っていた。
その日は火を起こすのを諦めるとパンを切って齧る事に
した。
ストレージに入っていた干し肉はそのまま食べれるので
一緒に挟んでみる。
少し固かったが、食べれないほどではなかった。
2日間誰とも会う事はなかった。
ただ森の中を彷徨うだけで、お供といえばウサギが一匹
いるだけだ。
熊をも倒せるウサギといえば、普通ではないのが分かる。
けど、結局はただのウサギで、見分けがつかない。
ウサギを追いかけるように森を彷徨い、向かった先には
ウサギの群れだった。
真っ白な毛並みに黒いのもいた。
三毛になっているのもいて可愛い。
が、全員があの戦闘力を持っていると思うと恐怖でしか
ない。
どれが一緒にいた奴なのか見分けがつかない。
「おーい、俺さぁ〜人間がいるところに行きたいんだけど」
一斉にウサギ達の視線が集まる。
「あ、いや……自分で探すよ……」
ゆっくり下がると、その場を後にした。
すると、離れた瞬間に丁度画面がでてくる。
『パーティーを解除しますか?』
多分、群れに帰りたかっただけなのだろう。
すぐに『はい』を押すとパーティーメンバーが空欄になっ
たのだった。