第七話 ウサギって強すぎ
その頃、神崎の方は一人森の中を彷徨っていた。
誰も居ないし、ここがどこなのかもわからない。
一応食料はあるが、これで何日過ごさなければなら
ないのかもわからない。
不用意に食べて、食糧が底を尽きるのが一番困る。
クラスメイト達もこの世界に来たのだろうか?
もし、会ったら……。
いや、今会っても見た目も全く違うのだからバレる
事はないだろう。
それに年齢も結構若い。
12歳の青年の身体は結構動ける。
力はどうだろう。
ストレージから剣を出すと、振り回してみる。
それほど重くはない。
「う〜ん、一回何かを切ってみればわかるかな〜」
ガサガサッと音がするとそこに野生のウサギが飛び
出て来た。
「お肉!待てぇ〜!」
神崎が走り出すと、ウサギはすぐに逃げ出してしま
った。
追いかけるように森の中へと入っていく。
すると、ちょうど開けた場所にでた。
ウサギはと探すと目の前の大きな熊の手の中に捕ま
っていた。
弱肉強食とはそう言うものなのだろう。
だが、これはまずい。
神崎は狩る側か、それとも狩られる側か?
「えーっと……失礼しました〜」
後ずさろうとしたが、もう遅い。
ウサギを地面に落とすと、熊と目があう。
あきらかに獲物を狩る視線だ。
神崎も覚悟を決めなければならないのだろうか?
まずは相手のレベルを知るべきだろう。
相手を鑑定するとレベル20!?
「これ、無理だろ……」
地面に転がったウサギのがレベルが高い。
まだ死んでいないのか僅かな息遣いが聞こえる。
すると、目に前に『パーティーを組みますか?』と
文字がでた。
もう、なんでもいい。
そう思い、『はい』を押していた。
「嘘だろ、ウサギに何が出来るんだよぉ〜!何か使
えるものは……」
目の前に自分の出来る事といえば……シールドを張る。
「シールド!でて来てくれっーーー!」
叫ぶと、薄い膜が目の前に出て来た。
熊の爪が目の前まで迫って来ていた。
ガキンッと爪が止まると、何度も引っ掻いてくる。
一応助かった……。
が、このシールドが切れた時が、死ぬ時。
そう思うと、どうしたらいいかわからなかった。
熊の後ろにいたウサギがこちらにぴょんぴょん飛ん
できていた。
「おい、こっち来んなって!お前死ぬぞ!」
すると、再び目の前に画面がでた。
『ラビットの身体強化をしますか?』
「はい!なんでもする!するからっ!」
ピコンッと音がすると、さっきのウサギがいきなり消
えた。
消えた瞬間、熊の真上に飛び上がっていた。
可愛い顔が一気に牙を剥き爪が伸びる。
顔に飛びつくと目を潰していた。
グォォォオオオオオーーーーー
熊の叫び声に周りの木々を薙ぎ倒し始めた。
もう無差別に攻撃し始めたのだった。
そろそろと後ずさる神崎の目の前では意外な戦いが繰り
広げられていたのだった。