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第六話 珍しい素材

異世界から来た人間はカードにならない。


それはこの世界の原理、原則から外れた存在だっ

たからだ。


それでも、罪を犯せば犯罪歴としてカウントされ

る。

これには同じだと安堵した。


培養液の中の小さな命。

異世界へと渡る時に、持ってきた神崎の私物や、

毛髪。


これをベースに作り上げた肉体。

まだ赤子だが、栄養を与えればすぐに成長するは

ずだ。


今日もその栄養素が届けられる予定になっていた。


コンコンッ。


ノックをする音に、弘前は喜んで出迎える。


「はい。どうぞ」

「失礼します。今日の分の奴隷を連れて来ました。

 今日はちょっと異質な者が混ざっているのですが」

「異質な者?」

「はい、ハイエルフという種族で、奴隷商へと売り

 に来たとの事で買い取ったのだと言っていました」


よーく眺めると、同じ男とは思えないほど美しい見

た目をしていた。


エルフよりもっと格上の種族、ハイエルフ。

お目にかかる事も滅多になく、森の奥にしか生存し

ていないとされていた。


「珍しいね……ありがたく使わせてもらうよ」

「はい…、他にも手伝える事があればお申し付けく

 ださい」

「あぁ、ありがとう」


今日は本当に珍しい者が手に入った。

養分にはこれほどのモノはないだろう。

長命種と言われるエルフであってもなかなか手に入

らないというのに…

まさか、その上の存在など、一生お目にかかれるか

どうか。


「神崎くん。君は運がいいよ。こんないい素材を食

 べられるのだからね…」

「んんっーーー!」

「怯えなくてもいいよ。これを見てくれるかい?可

 愛いだろう?まだ赤子なんだ。でも、君が協力し

 てくれれば、すぐに大きくなるだろう」


嬉しそうに言う弘前に、奴隷は怯えるような目でじ

っと見つめて来たのだった。


「まずは……そうだね。すぐに栄養にしてしまうの

 は勿体ないか…まずは血を取っておこう。それと、

 少し肉も削ぎ落とすけどいいよね?」

「んんーーー!!」


ふるふると左右に首を振るのを眺めてからゆっくり

と針を皮膚に差し込んだのだった。


注射器という物はこの世界にはない。

だから太めの針を動脈に差し込む。


特注で作らせた針の中央には小さな穴が空いている。

そこを通って血液が流れ出てくる。


異世界だけあってか、針といってもそんなに細くは

作れなかった。

いや、細く作る技術がないのだ。


「心配しないでいいよ。すぐに終わるからね〜」


縛られたまま徐々に意識が無くなっていくのを眺め

ながら完全に意識を失ったところで、腕を縛り止血

する。


満足そうな弘前は引きずるように培養液の側に連れ

ていく。

そして腕を一気に切り落とすと、アイテムボックス

へと収納した。


残りの身体は魔力体で包み、溶かす。


溶かし切ったらそのまま培養液の中に入れてやるの

だった。


生きたまま溶かすせいか、カード化されないという

メリットがあったのだった。




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