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第二話 もう一度、会うために

弘前には、現実世界で両親はいない。


中学の時に事故で死別してからと言うもの親戚の

家に預けられたが、すぐに追い出された。


どこも他人の子供など育てる余裕はないのだ。


だから親と暮らした家で一人で住んでいた。


どんなに寂しくとも、夢では賢者が親代わりだっ

た。

そしていつか夢が現実に出来ると知って、唯一の

友人を連れて行こうと決めた。


その頃、自分を庇ったせいでイジメの対象になっ

てしまっていた。


どんなに痛めつけられてもめげない神崎に、次第

に惹かれもした。


「全員異世界へ連れて行ってやる………見て見ぬ

 ふりをした奴らも全員同罪だ……」


あの時に、誓ったのだ。


全員利用してやるのだと。


クラスの1/3はダンジョンで命を落としたらしい。

それもまぁ、想定内だった。


偽の身体を作るにしても、やっぱり見た目も重要

だった。

全くの他人など愛せない。


「君にそっくりな身体が必要だね」


培養液を眺めると、大事に持っていた髪の毛を取

り出す。

さっき各自で飲んだ薬が効き始める頃だった。


もがき苦しむ者。

あっという間に意識を無くしてしまった者。


そして、掻きむしるように自分の喉を掻っ切る者。

それぞれだった。


そして、死んだ瞬間、中央にあった機械の中に吸

い込まれていく。


今はまだ小さく、小指の先ほどしかないがいつか

は10cmくらいの宝石になる予定だ。


苦しめば苦しむほど大きく成長する。


そもそも作り出すのが一番大変だった。

一つの国の人口を全員注ぎ込む必要があったから

だ。


それには戦争に直接参戦して人の命をかき集める

必要があった。


今まで賢者が戦争に肩入れしないと言う取り決め

があると師匠は言っていたが、そんな事はどうで

もよかった。


もう師匠もいない。

新たな決め事は全て自分で決めればいい。

弘前は力の源である賢者の石を作り出す為に、数

十年前にあった戦争へと参戦を決めたのだ。


実に呆気なく決着がついた。

そして民を全員殺して基盤となる石の成形に取り掛

かったのだった。


出来た時はまだ小さく、ビーズくらいの大きさだっ

た。

それからは奴隷を買ってはわざと苦しませ贄にした。


「今日もまぁまぁかな……次はどんな薬品を作ろっ

 かな〜」


ここでは賢者の石以外にも毒薬、劇薬も作っている。


いつの日かあいつらに飲ませる事を考えて今からせ

っせと作っているのだった。


培養液の中には赤子の姿がうっすら浮かび上がって

いる。


まだ形としては不安定だが、きっともう少ししたら

ちゃんと成長するだろう。


大きくなるまでは外気に触れさせず、培養液に入れ

たままで育てるつもりだ。


17歳まで成長したら、やっと精神を探す方法を見

つけなければならない。


「早く会いたいな……神崎くん……」


弘前は今日も地下で実験に明け暮れるのだった。


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