第十五話 黄色の星の雫
ボスの鱗や、肉を回収しながら飛び石を渡っていく。
それでも、水に落ちればどこまでも深いせいか泳げ
ても服を着たままでは溺れる恐れがあった。
渡り切るとその先には、小部屋があって宝箱が一つ
鎮座していた。
「さぁ、中身を取ってまずはここを出ようか!」
エリーゼが神崎に開ける様に促す。
「戦ったのは、お二人なのに俺が開けていいんで
すか?」
「当たり前だろう。カナデがいなかったら、私達
だけでは厳しい戦いになっていただろうからな」
「そうだ、確実に囮にされた時点で死んでただろ
うしな」
確かに、一度は食われたのだ。
無傷だったのには、かけられたバフの影響が大き
いようだった。
宝箱を開けるとそこにはシンプルな杖と黄色く輝
く石が入っていた。
「これって……」
神崎の目には自動的に鑑定がかかった。
『星の雫のカケラ
黄色く光る宝石で、他の12色の石と重なる事で
本当の力を発揮出来る。
ダンジョン毎に異なるカケラが出る可能性があ
る。 』
「星の雫ってこんな石だったんだ……」
「お、初めての攻略だから出てもおかしくはな
いな」
「よかったじゃないか?どうする?売るのか?
私は取っておいた方がいいと思うけどな」
エリーゼは貴重な石なのだという。
ナルサスからも、売るのはもったいないと言われ、
結局アイテムボックスの奥にしまい込む事になっ
た。
「この杖って……いいものなのかな?」
神崎はかざしてみたものの何も起きない。
そもそも魔法師ではないのだから使えないのも無
理はなかった。
「魔法なんて使えるわけないか…」
「何を言ってるんだ?練習すれば使えるだろう?」
「あぁ、俺も一応は使えるぞ。まぁ戦えるほどの
火力はないんだがな」
そういえばエリーゼが剣に付与していたのは魔法
だったはずだ。
炎を剣に纏わせて威力を高めていた。
大体は一人一属性が主流らしい。
「ならエリーゼさんは火属性って事ですか?」
「あぁ、一般的に師匠などがいれば、同じ属性を
習う事が多いからな〜、自分と同じ属性の師匠
を見つけると弟子入りして学んだものだよ。カ
ナデの年から学ぶ事が多いから、探して見ると
いい」
「へ〜そうなんですね。ナルサスの属性は聞いて
もいい ですか?」
「あ〜それはだな……」
魔法を苦手という理由はそこにあったのかもしれ
ない。
「俺は……風だな。まぁ…あんまり使い切れてな
いがな」
王子という立場上、訓練はしたがあまり上達しな
かった分野らしい。
使える…程度だった。
攻撃に魔法を使おうとは思わないらしい。
「帰ったら見せて貰ってもいいですか?」
「奏が言うなら……別にいいが、そんなに期待し
ないでくれよ?」
ナルサスは恥ずかしそうにしていた。
「さぁ、ダンジョンの構造も分かった事だし、一旦
戻るとしようか?ギルドに報告もあるしな」
エリーゼの言葉に賛同すると、テレポートで入り
口へと戻ってきた。
ボス部屋の奥にはクリアした人のみが使えるテレ
ポートがある。
これはどこのダンジョンでも同じだった。
ただ、ボス部屋をクリアしなければ、来た道を戻る
しかない。
あとは帰還石と言われる場所をあらかじめ指定して
おいた石などを地面に叩きつけて、その場の人を瞬
間移動させる方法もあるらしい。
「その帰還石ってどのくらいするんですか?」
「それは、結構高いぞ?スクロールならダンジョン
の入り口にしか飛べないが、それでも金貨5枚だ
からな」
帰還石に至ってはギルドでは金貨20枚で売ってい
たのだった。
神崎が眺めていると、後ろからエリーゼが話しか
ける。
「欲しいのか?」
「いえ、すごく高いんだなって……」
「だが、今回の報酬も結構稼げたんじゃないか?」
確かにエリーゼの言う通りだった。
思いのほか、かなりいい金額になった。
解体が綺麗なのと、鮮度がいいのが大きく評価
されたらしい。




