第六話 仲間なんて…
どうしてこうなったのだろう?
いや…ついてこなければこんな事にはならなかった
のだろう。
後悔しても仕切れなかった。
胞子の効果が切れると、あたりは大惨事になってい
たのだった。
仲間の腕はなく、痛みで悶えている。
そういう自分の足元には大量の血が溜まっている。
やっと意識を取り戻し視力が回復したのだが、麻酔
効果が切れたのか一瞬で現実に戻された気分だった。
一気に痛みが押し寄せ、声が抑えきれなかった。
血に染まった地面には自分の足がない。
それは、立っていたまま最初に胞子にやられた仲間
によって切り落とされた事を意味していた。
そして何よりも、先頭にいたはずの長野達がすでに
いない事だった。
リュックも漁られていて、食糧と城で渡されたポー
ションもなくなっていた。
これでは数日と持たない。
止血しようにも止血剤も包帯もない。
ましてやポーションもないので、治療すらできない。
痛みに耐えているうちに気が狂いそうになる。
「お願い……殺して……もう、痛いのは嫌……」
隣で、泣きながら必死に手を伸ばす彼女を不憫に思
うと、引きずるように近くへと行き、心臓に剣を突
き立てたのだった。
そして、そのまま自分の胸にも刺し貫いたのだった。
その場に取りこのされた生徒達はそのまま魔物の餌
になっていく。
スライム達が綺麗に浄化し土にかえす。
これがダンジョンの仕組みだった。
死体は明日には綺麗になっているだろう。
分解されて、そのまま土と化す。
ダンジョンで命を落としていった者達はそうやって皆
輪廻の中に入っていく。
そう思われていた。
鎧などの装備だけがその場に残り、ここで亡くなった
事を後に残す。
次来た冒険者に気をつけろと言う合図になるのだ。
しかし、こんな低下層で命を落とす人も少ないのだが
そんな事は気づかない。
奥へと続く道へと歩みを進めるは自信のある者だけだ。
引き返すなら今だが、それを言い出す人はいない。
なぜなら、一緒に来た人がどうなろうが、彼らにはど
うでもよかったのだろう。
仲間ですらない。
先へ進んでいくのは攻撃手段を持った者だけになって
しまっていたのだった。
「結局、役立たずだけが居なくなっただけだろ?」
「そんな言い方……」
「夏美は引き返したいのか?別にいいけど一人で帰る
んだな」
長野の言葉に、夏美は無言で歩き出した。
上島と江口はただ荷物を回収したあとはどっちも罪悪感す
らない。
「ゲームなら死んだって平気だろ?」
「だよな〜」
夏美はさっき魔物が掠った場所が痛い。
実際に怪我をすれば痛いのだ。
だが、まだ怪我をしていない人にはその感覚はわからない
のだろう。
まるで現実味のないゲームの世界と思っているのかもしれ
ないのだから……。