第十一話 水系のダンジョンボス
どれだけ待っていただろう。
エリーゼが到着した時には、随分と体力も回復して
いた。
「あ!カナデ!と、奴隷のナルサス……無事だった
か…」
「奴隷は余計だ。まぁ、奏が倒れたくらいだ。」
そう言いかけると、ナルサスの眼前で襟首を掴むと
逆の拳を握りしめ思いっきり殴っていたのだった。
「お前には、カナデの盾になれと言ったのを忘れた
のか?怪我をさせるなど言語道断だ!この場で首
を跳ね飛ばしてやるわ!」
「エリーゼさん!待って、本当に待ってよ!ナルサ
スは悪くないんだから!」
慌てて止めに入った。
事情を説明したが、それでも怖い顔を崩さなかった。
「カナデ………怖かっただろう?辛かっただろう?
もう、安心してくれ!私がついているからな!こ
んな奴にカナデのスキルを使う必要などないから
な」
エリーゼに抱き寄せられると、ふくよかなものに顔
が挟まれたのだった。
「えっ、えっ、えぇーーー!苦しっ……」
慌てる神崎をナルサスは助けてはくれなかった。
いや、今のナルサスはエリーゼには反論すらできな
かったのだった。
ナルサスから帰還スクロールを受け取ったエリーゼ
はすぐに帰還する事を提案した。
が、反対したのは神崎だった。
「ここまできたんだし、もうちょっと奥に行ってみ
ましょうよ!」
「いや、奏はさっきまで倒れていたんだよ?これ以
上無理はさせられないよ」
「そうよ!まずはカナデの体力を回復させるのが肝
心だ!」
こう言うところは二人とも過保護過ぎるという意味
では似ていた。
こう見えても中身は高校生だ。
見た目は幼く見えるかもしれないが、しっかり考え
て言っているのだ。
それに宝箱から出てきた指輪をはめてくれた事で、
ずいぶんと楽になった。
「もうちょっとだけ、先に進みましょ?……ね?」
可愛く首を傾げると、エリーゼは悩みながらも納得
してくれたのだった。
「仕方ないな、ただし……絶対に前に出るんじゃない
ぞ?それと奴隷!必ずカナデのそばを離れるんじゃ
ない、分かったか?」
きつく念を押すと、先に進む事で納得したのだった。
奥に進むにつれて湿った空気が広がっていく。
水系の魔物だと、この二人には相性が悪すぎる。
そして雑魚を片付けなら進むと、今までで一番豪華な
扉が出てきたのだった。
目配せをして中に入る。
そして、嫌な予感は的中したのだった。
部屋の中は洞窟の中のような構造で、中央に大きな池
があった。
その周りと、中州にはいくつもの足場があったのだっ
た。
水系のボスであることは明白だった。




