第十話 バフの重ねがけ
宝箱の中身は帰還のスクロールだった。
その他には指輪と魔石が入っている。
ダンジョンは奥にダンジョンコアという魔石が
存在する。
そこから無限に魔物が産み出されダンジョン内
を徘徊する。
ダンジョンコアは場所によって形も違う為に、
どんな形状をしているかも分からない事が多い。
この産まれたての迷宮は尚更、出てくる魔物の
性質や特性、罠の種類などを把握する為に、慣
れた冒険者が先に入ってクリアするのだ。
最初のクリア報酬には『星の雫』というなんでも
願いを叶えるというとんでもないものがあるとさ
れていた。
12色に輝く石で、12個の石を合わせてできるとさ
れていた。
宝箱に入っていないと言う事は、ダンジョンクリ
アではないと言う事を示していたのだった。
中にあった指輪には常時回復効果がついていた。
神崎の指にはめると、じっとエリーゼの到着を待
つ事にしたのだった。
ぎゅっと抱きしめる手に力が籠る。
「奏……どうか無事に目を覚ましてくれ……」
ナルサスはただ祈るしかなかった。
ボス部屋は倒してしまえば暫くは安全地帯となる。
大きな扉に遮られて魔物は入ってこれない。
今は体力を温存することを選ぶと、エリーゼの合
流と、奏が目を覚ますのを待つことしかできない。
そして、数分が経っただろうか?
腕の中でもぞっと動いた気がした。
「奏!」
「んっ……あれ?……ここは…」
「奏……よかったぁ〜」
目を覚ましたのが嬉しかったのか腕に力が籠る。
細い身体を抱きしめ、どれだけ心配だったかを語
られたのだった。
「ごめん、ごめん。まさか意識がなくなるなんて
思わなかったんだよ。シールドは解けてた?」
「いや、俺が触れるまではちゃんとあったよ。で
も、意識のない奏を見た時は肝が冷えたぞ?こ
れではボスと戦う時も、バフの制御と体力温存
も視野に入れてくれないと困る…それとこれか
らはあんな無茶な掛け方はするな!」
「はい……でもね、結構重ねてかけれたと思うん
だ〜」
「か、な、で!」
「分かったって、今度からは気をつけるよ」
あまりに無茶し過ぎたようだった。
確かに、別の種類のバフをかける時よりも、同じ
バフを重ねがけした時に、一気に身体が重くなっ
た気がしたのだ。
やっぱりバフの効果や、掛け方も考えてやった方
がいいのかもしれないと思い直したのだった。




