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第四話 優しさ

ダンジョンの中は結構広かった。

天井は高いし、横幅も結構広くて視界は良好だ。


逆に魔物が現れればすぐに分かるが、こっちも

丸見えだと言う事だった。


「警戒して進みます」

「はい……あの、ナルサスは……」

「今は、話より周りを見てください。俺は貴方を

 守る為に買われたのでしょ?」

「はい……」


確かにその通りだった。


『防御力向上、視野拡大、遠距離視覚、危険感知…』


二人へバフを重ねがけしていく。


「敵、前方に………って結構先ですけど、カナデ

 バフかけたでしょ?先に言って下さい。一気に

 視界が開けるし、遠目が効きすぎて驚きました

 よ」

「あ、すいません」

「それにしても便利ですね、これはどうにも慣れて

 しまうと普通に戦うのがバカらしくなりそうだ」

「奴隷の分際で……カナデに少しでも怪我させたら

 ただじゃ済まないと覚えておきなさい」


エリーゼは凄みを効かせると、一気に駆け出してい

った。

スピードも普通じゃない。


一気に距離を詰めて奥で剣の当たる音がした。

多分魔物と衝突したのだろう。


静かになると、すぐに戻って来たのだった。


「やっぱりこの感覚は病みつきになりそうだな〜」

「次は俺も行って来ていいですか?戦って経験値

 を積んだ方が守る時に有利になりますから…」


エリーゼが一瞬睨んだが、すぐに了解した。


「気をつけて……」

「はい、行って来ます」


神崎をおいて先に偵察に行った。


エリーゼは、冒険者ギルドに行くと言う時はいつも

付き添ってくれた。

忙しいだろうに、なぜここまで親切にしてくれるの

か不思議だった。


「エリーゼさん、ちょっと聞きたいんですが…なん

 でそこまで親切について来てくれるんですか?」

「へっ……あ……あぁ、まぁ、心配だから……かな」

「でも、毎日じゃ大変でしょ?いつかは領主様の屋

 敷を出る事になるわけだし……」

「はぁ?ちょっと待ってくれ、それはどう言う事な

 んだ!このままずっといればいいじゃないか!」


凄い驚かれてしまった。

いつかは出ていかなければならないというのは当た

り前だろうと思っていたが、エリーゼにはそんな考

えは全くなかったらしい。


「だって、もう1週間もお世話になってるんですよ?

 ずるずるとお世話になりっぱなしってわけにもい

 かないで すし……」

「そんな事はない!1ヶ月、いや1年くらいはいいん

 じゃないか?行くところもないのだろう?」

「それはそうですけど……悪いじゃないですか?」

「領主様はそんな心の狭い方ではない!そうだ、こ

 のまま騎士見習いになるのはどうかな?」

「いえ……俺じゃ体力もなしいし、無理ですよ」


全面否定したが、エリーゼの中では出ていくという

考えはありえない事のようで必死に引き留める理由

を探したのだった。




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