第二話 新ダンジョン
食事を終えると、ナルサスの稽古をずっと眺めて居た。
「あの……不安ですか?」
「え……そんな事は……」
さっきの食事の時に領主様から言われた言葉を思い出
した。
「そんな事ないよ……俺はナルサスを信じてるから…」
「………奏、奴隷なんて信じるもんじゃないよ」
「ナルサス?」
「特に敗戦国の生き残りなんて……いっそ殺された方
がよかった…父上や兄上のように…妹も目の前で…」
悔しい気持ちがずっと燻っているのだろう。
「ダンジョン行こっか?」
「奏?」
「だって身体動かせば少しは楽にならないか?俺は、
モヤモヤした思いは塞ぎ込むより誰かに言ってスッ
キリした方がいいと思うぞ?」
「それは……変な奴だな……」
「俺は最初に言ったじゃん、ナルサスとは奴隷と主
人じゃなくて友人のような関係になりたいって」
「分かった、ダンジョンに行くか?」
「うん、エリーゼさんに外出の事言ってくるよ」
そう言って走っていく。
わざわざ訓練中だったというのに街まで馬車を出し
てくれた。
そしてエリーゼさんまでついて来てくれたのだった。
「あの、ナルサスがいるし、領主様の方に戻っても
いいんだけど……それに訓練は…」
「それは私だけ仲間はずれにするつもりですか?」
「いえ、そういうわけでは…それに忙しそうですし」
「いいのです!私が気晴らしに来ているのですから」
どうしてここまで親切にしてくれるのかはわからない
がありがたい事ではあった。
冒険者ギルドにくると、顔のいい男は嫌われるものだ
った。
いちゃもんを付けようとガン飛ばして来たが、すぐに
奴隷だとわかると、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて見
てきた。
「おい、兄ちゃん、奴隷なのかぁ〜、顔だけいい男は
買い手がつくのが早くていいな?夜は満足させてん
のか?」
「私の連れに文句でもあるのか?」
エリーゼの睨みを受けて、すぐに退散して行った。
「全く、ああいう輩には困ったもんだな〜」
「エリーゼさんのおかげで追い払えましたね〜さぁ、
行来ましょう!」
今日はちょっと離れた場所にできたダンジョンへと
来ていた。
最近発見されたばかりだという。
「星の雫って知ってるかい?」
「なんですかそれは……?」
「それはどこの国でも欲しがるものですね。なんで
も願いが叶う石とされているんでしたね?」
「奴隷君は知っているようだが、それは12色に輝く
石だといわれているんだよ。なんでも賢者がいう
には死人さえも蘇らせれるという石で、不老不死
を願う王族もいるとか……」
「まっさか〜、そんなお伽話でしょ?………?」
冗談混じりなのだと笑って流そうとしたが、エリーゼ
はいたって真剣だった。
そしてナルサスさえも、真面目に捉えていた。
「それってダンジョンドロップだったりするの?」
「なんと!初めて出来たダンジョンではドロップし
やすいとか!」
「へ〜」
なんか嘘っぽいと思うと、軽く流した。
「信じてないだろう?」
「まぁ、俺としてはお金になるものの方が……」
「取引き値段は数億金貨らしいという噂だぞ?」
「数億金貨!?」
流石に事の大きさに気づいたらしい。
それが、今行こうとしている場所に眠っていると思
うとつい期待してしまうのだった。




