第九話 訓練
城では残った19人の訓練が開始されていた。
まずは適正を得ている者から順に訓練メニューをこな
していく。
魔法適正のある者には、魔法師の訓練を、武器毎の適
正がある者にはそれにあった訓練を課したのだった。
「あれ、弘前くん!大丈夫だったの?」
「うん。今日から僕もここで一緒に訓練するからよろ
しくね」
「うん、最初はどうなるかと思ったよ。いきなり倒れ
るんだもん。」
そうだろう。
みんなにはいきなりで何も見えていなかったはずだ。
弘前が自分の腕を刺した場面が見えたのは長野、上島
、江口、神崎だけだろう。
実際、神崎は召喚に失敗したわけだから、実質3人だ。
それ以外の生徒には、召喚されてから、血まみれで倒
れたようにしか見えなかったはずだった。
「日比野くんも、魔法適正あったんだし頑張ろう!」
「うん……でも、いきなり魔法って言われてもな〜」
確かに、戸惑うだろう。
弘前だってまだ上手く使えない。
夢の中では簡単に使えたはずだったが、実際にやって
みると難しい。
「それでは、こちらをお持ちください。そしてヘソの
あたりに魔力を集めて〜、ゆっくりでいいですよ〜」
指導に当たってくれたのは、宮廷でも指折りの魔法師
達だった。
二人に一人の魔法師がつきっきりで指導する。
なんとも贅沢な光景だった。
2日目にしてやっとヘソの裏に温かいものを感じるよ
うになった。
そして3日目には微かに杖の先が光る程度になら使え
るようになった。
光魔法となると回復職だった。
弘前には光属性と水属性の適性がある。
光と言ってもここでは聖属性と言われており、主に
聖魔法、いわゆる回復魔法が含まれる。
回復に特化した属性だったが、攻撃にも使える。
日比野は風属性の為、目で見えないのでわかりにくい。
そよ風が吹いたのか、それとも日比野の魔法なのかの
区別がつかないのだった。
「今、今風吹いたよね?」
「う〜ん、ちょっとわからないかな〜」
「えぇーーー!!」
「どんまいっ!」
4日目になると、やっと少し形になった気がする。
攻撃とまではいかないにしろやっと的に向けて撃てる
くらいにはなった。
日比野はいまだにそよ風程度だ。
5日目ともなると、光の矢を撃てるところまできた。
水でも同じように撃てるし、凍らせて攻撃もできるよ
うになった。
「弘前くん、すごいよ!もう的に当てれるなんて!」
「まぁ〜ね。日比野くんもきっとすぐできるよ!」
そう言っているうちに、騎士達の間で騒がしくなって
きた。
武器を扱う騎士の方でも頭角を表したものがいるらし
い。
6日目には、的に使っている板を破壊するくらいには
威力と軌道の制御をものにしたのだった。
実践訓練と同時に午後からは知識の習得に励む事にな
った。
この国の歴史から、周りにある国、そして壊滅した国
などの知識と奴隷の扱い方。
街へと出ると、どんな事に注意するとか娼館の場所な
ども教えられた。
これは男子にのみこっそりとだった。
出かける時は一言申告するとお金を受け取れる。
それを持って買い物もしていいらしかった。




