第二話 賢者降臨
魔法陣から現れた31名の異世界人達に、賢者の言葉が
正しかった事を思い知る。
アルスラ帝国、第一皇女である、ゼニス皇女殿下によ
って異世界人に簡単な説明がなされた。
その中に大怪我をしている者がいた為、すぐに治療院
へと運ばせたのだった。
どこか見覚えがある顔だったが、お揃いの服を来た異
世界の人には、今自分の力を知ってもらって、今の状
況を理解してもらう事になった。
が、一部の人間はそれを聞く耳も持たず今にも暴れ出
しそうな勢いだった。
「腕に自信がおありなら、ぜひダンジョンで試されて
はいかがですか?思う存分暴れてもらって構いませ
ん」
そういうと、鎧一式と各武器も揃えた。
犯罪歴があるのは3人。
何がとまではわからないが、今にも暴れそうだった人
間だった。
それに付いていくと言い出した人を含め11名がダンジ
ョンへと入っていった。
それ以外の人にはまずこの世界の事を学んでもらう事
を勧めたのだった。
そして治療院へと騎士を連れて見にいく。
コンコンッ
「はい」
「先ほど運ばれた方は大丈夫でしたか?」
「ゼニス皇女殿下、お久しゅうございます」
「そなたは……賢者様……なのですか?」
皇女の口から漏れた言葉に、騎士達は一斉に膝をつく。
「そう、改まって言われると照れるなぁ〜、はい、そ
うです。僕が異世界とこちらを行き来していた賢者
の弘前康介です」
「では、あの人数を一度に召喚させてくださったのは、
賢者様のお力なのですね」
「そういう事になるかな……まぁ、邪魔な3人はあれか
らどうなったか聞いてもいい?」
「はい、もちろんでございます」
落ち着き払った弘前は皇女にタメ口を使う。
この世界で王族以外に賢者という人間がいて、彼ら
はどこの国にも属さない地位の者だった。
賢者はどこかの国に協力することはない。
そして、ひと所に止まる事も滅多にないのだ。
だが、先代の賢者が年老いて寝ついてしまった為に
しばらくこの帝国にご厄介になった。
その縁で今回の召喚の儀に助力したというわけだっ
た。
「………それから数名がそれに付き従ってダンジョ
ンの奥へと」
「なるほど……そのまま『星の雫』を取ってこれれ
ばよし、もし帰ってこなければそのままというわ
けだね」
「ですが……魔法力も大概のものがいました。ただ
問題は……」
「犯罪歴だろう?分かっているよ、ここでは犯罪歴
がある者は奴隷に落とせる法律があっただろう?
使えるだけ使って奴隷に落とせばいい。簡単な事
だろう?」
「そのように……もし帰ってきたらどうなさいます
か?」
「それは……豪華な食事に女を当てがえばいい。あ
とはおだててもう一回ダンジョンへと潜らせれば
いいだけの事だ…それと、ちょっといい?神崎と
いう男はどこにいる?連れて来てもらってもいい
かな?」
弘前はどうしても神崎には謝っておきたかった。
この世界に連れて来た事や、これまでの事。
全ては自分のせいで起きた事だという事を、謝罪し
たかったのだ。




