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第四十五話 あれから3年

神崎が目を覚ましてから、ルイーズ領内で盛大な

祭りが毎年開かれるようになった。


領地の名産品となった干し肉や柔らかいパンに固

形スープ。

甘みのあるドライフルーツなど、どこの国でも製

法を求められた。

だが、それの一切を秘匿にした。


それゆえに、商人達がこぞって買い付けに来て、

賑やかになったのだった。


ギルドでも珍しい調理レシピを販売し、それを求

める飲食店は軒を連ねたのだった。


「観光客が多く来てるね」

「それはもう、奏が考えたレシピを一目見ようと

 各地から来ているそうですよ。今では王都より

 人の往来が多いとか……」

「そんなまさか〜」

「まさかじゃないですよ。気づいてないんですか 

 ?全く、無自覚なのは奏だけですよ?」


ナルサスが色々と教えてくれた。

転生してから神崎は歳を取らなかった。


身長も全く伸びないし、一向に男らしくならない。


毎日のように身長、体重はもちろん運動も欠かさ

ず続けている。

柱につけた傷はたった一個。


「もう、何年たったと思ってるんですか!」

「そうだな〜、奏と出会ってからもう三年になる

 かな。あれから色々あったけど、やっぱり奏は

 すごいやつだって思うぞ?」

「もうっ……」


目覚めてから、神崎は劇的に変わっていた。


攻撃魔法が全くダメだったのが、今では誰よりも

強力な魔法を使えるようになった。

剣は未だに振るのが精一杯だったが、体力さえ付

ければ、それも問題なくなるだろう。

あとは、バフも前よりも数段強力になっていた。


もう、誰も文句を言えないほど強くなっていた。


パーティーはいつもナルサスを前衛にしてケイヒ

ード、ラナ、そして神崎という布陣だ。


最近ではラナも前衛に加わり、後方支援は神崎が

担えるようになった。


索敵も二人の獣人のおかげで楽になっている。

もう、エリーゼさん無しでも最強パーティーと言

えるだろう。


祭りの屋台は豪華で、ずらりと通りに並んだ店々

はどれも美味しそうな匂いを漂わせていた。


「はい、ラナと、ケイヒードの分の銀貨ね。好き

 なの買っていいよ」

「お、分かってるじゃん。では、ちょっと行って

 くるかな」

「主人、たまにはいい事する」

「おい、ラナ。口は慎めって……」


ケイヒードが慌てて口を塞いだが、ナルサスの耳

に入った後だった。


笑顔が向けられるのが、実に不気味だった。


「ほら、二人っきりで楽しんでこいって、俺らは

 これで消えるかなさっ……な?」


ケイヒードの気遣う声にナルサスは笑顔で答える。


「次言ったらその後ろについている邪魔な尻尾を

 切り落としてあげますよ。」

「……」

「……」


ゴクリという二人の息を呑む音が聞こえてきた気

がしたのだった。


弘前が休眠状態にしてしまったダンジョンも今は

息を吹き返し、各地でも新しいダンジョンが見つ

かっているらしい。


そして大和の国も前ほど入国が厳しくなくなった

のだという。

それはブレイズが王になって色々と変わってきた

おかげだという。


誰もが欲しがる不老不死はどこの国でも研究が進

んでいるのだとか。

だが、誰もそこまでのレベルに到達する事は出来

ていない。


そしてとある小国で、猪島健人という青年によっ

て力を底上げする丸薬が開発されたという噂を聞

いたのだった。


「この世界に残った人もいたんだ……」

「奏と同じ世界の?」

「そう、オタクって言って好きな事にとことんの

 めり込む人の事を言うんだ。」

「それは凄いことですね。俺も一人にのめり込ん

 でいるのでオタクと呼ばれるのですかね」

「へっ……一人って……えぇっ!」


じっと見つめられると恥ずかしくて耳まで真っ赤

になる。


「だから、何度も言うけど俺は……」

「大丈夫ですよ、分かってます。俺は奏に一生仕

 えるのですから……手放したりしませんよね?」


目の前に跪くと見上げられる。


いくら男でもこんなイケメンに求婚されるような

事をされたら、誰だって恥ずかしくなるだろう。


「いや……あの……」

「俺は奏のモノです。俺の身体も心も全て主に捧

 げるつもりです」

「それって……」


手の甲を掴むとそっと唇を添える。

そして左手の薬指にキスをした。


「いつかここに俺がリングを渡す許可をください

 ね?」


神崎はナルサスの顔をまともに見られそうになか

った。


それでも夜は一緒に布団に入って寝るのだから、

毎日会うたびに赤面すると、その度にドキドキと

鼓動が早くなるのだった。








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