第四十四話 ステータス
薄く目を開けると、最初に目に入ってきたのは、
ナルサスの寝顔だった。
ベッドで寝るでもなく、神崎の眠る横にずっと
手を握る形で付き添っていたのだ。
そっと抜け出し起き上がると身体がギシギシと
硬い。
ナルサスの寝顔を見るのは久しぶりな気がする。
髪を撫でるとすやすやと寝息を立てている。
眉間に皺を寄せながら眠っているのを見るとつ
い笑いが込み上げてくる。
「俺はどこにも行かないよ……待っててくれて
ありがとう」
言葉にすると恥ずかしいが、こうして眠ってい
るとなんでも言える気がした。
「ナルサスはイケメンなんだから、こんなに皺
寄せてると、せっかくのイケメンが台無しに
なっちゃうよ〜」
「……っ……奏………」
「えっ、起きてたの?」
「奏……本当に奏なんだな?生きてる……生き
ててよかった……」
いきなり腕をギュッと掴まれると抱き寄せられ
たのだった。
こんなに力強く抱きしめられたら、女性なら勘
違いしそうになるだろう。
「痛いよ、ナルサスったら……俺は起きたばか
りなんだからね」
「あぁ、すまない」
「もう、力強すぎ……でも、嬉しい…」
待っててくれる人がいる。
心配してくれている人がいる。
それがこんなに嬉しい事だとは思わなかった。
「変わりはない?」
「あぁ、奏が起きるのを待っていたのは俺だけ
じゃないんだ。今エリーゼは遠征中だが、他
の人も早く奏が起きる事を願ってて……」
ナルサスは早口で捲し立てると、ほっとしたの
か涙が溢れ出していた。
「どうしたの?どこか悪いの?」
「違う………奏の目が覚めなかったらと思うと
すごく不安で……だから今はよかったって、
みっともないのはわかるんだが、ちょっとだ
けいいかな?」
「え……あぁ、うん」
ナルサスのしたいように身をまかせたのだった。
あまり寝れていなかったのか、抱きしめられた
まま再びベッドに横になったのだった。
年上なのに、泣き顔は子供のように幼く見える。
神崎の胸にナルサスは頭を押し付けてまるで甘
えているかのように眠ったのだった。
ナルサスが完全に起きた時には、恥ずかしくて
顔を真っ赤にしていた。
「気が済んだ?」
「あぁ…すまない。恥ずかしい所を見せた…」
「可愛かったからいいよ。でも、女の子にあん
な事しちゃダメだよ?勘違いしちゃうから」
神崎は念を押すように言う。
「………」
「分かった?」
「……こんな恥ずかしい事、奏にしかしないが…」
「えっ……//////」
一瞬何を言われたのか記憶から飛ぶかと思った。
すると、ドアに外から大きな足音が駆け込んで
来たのだった。
ドドドドドドッーーー。
バンッ!
「カナデ!起きた!!」
ラナの一声に後から来たケイヒードも顔を出す。
「主が起きてよかったぜ。これ、嬢ちゃんから」
渡されたのはレシピが書かれた紙切れだった。
文字はよく見た事のある主人の字だった。
「これは?」
「あぁーー!!どっかに置いてきたと思ったら」
そう言うと隣にいた神崎が手を伸ばしてくる。
「これは大和の国の食材で作ったレシピだよ。
変わった食材が多くてね!」
「いつのまに大和に?あそこは海を渡らないと
行けない場所なんだぞ?」
「えーっと、ちょっと長くなるけど、聞いてく
れる?」
ナルサスとそして今入ってきたエリーゼの前で
話し始めたのだった。
今までどうしていたか。
そして、どうやって戻ってきたのかを。
「そういえば、ステータスオープン」
今まで見ていなかったのを確認と思い開いてみる。
そしてそこに書かれていた文字を読んで予想外の
プレゼントを知ったのだった。
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レベル 1001→1002
名前 神崎 奏
性別 男
スキル シールド(魔力が続く限り)
全属性魔法。
支援職
H P 5790
MP 18000
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「これって一体………」
「レベル1じゃなくて、1001だったって事?」
「そうみたい……」
「なら理解できるかもな。カナデのシールドは私
の攻撃を全部弾いたのだから当然だ」
エリーゼさんは納得したように頷いていた。




