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第三十八話 拷問

地下牢には王意外には神崎しかいない。


静まり返ったこの空間を支配しているのは悲鳴に

も似た叫び声だけだった。


「やめっ……いやぁぁ……痛いっ……うぐっ……」

「凄いな……切った場所から治っていくんだな…」


まるで新しい玩具でも見るかのように目を輝かせ

ると、次々に身体にナイフを入れていく。


床には血溜まりができている。


荒い息を吐きながら必死で痛みに耐えるのも限界

があった。

次から次へと生み出される痛みは精神をすり減ら

していく。


身体は治っても心には無数の傷が絶えず蓄積され

ていくのだった。


「いっそ、切り離したらどうなるんだ?やってみ

 るか……」

「いだっ……やめて……っ……あぁっぁぁーーー」


鎖に繋がれたままの腕を掴むと小指を切り落とし

たのだった。


ポトリッと落ちた指を目の前に見せてくる。


だが、次の瞬間ゆっくりと再生が始まる。


神崎の目の前にはぶらぶらと神崎自身の指がぶら

下がっている。

視界が薄れていくが、すぐに痛みで現実に引き戻

されたのだった。


「おい、気絶なんて面白くねーだろ?」

「……もう……やめっ………」

「不死の存在かぁ、その身体の事を教えたら楽に

 してやるよ…どうだ?」

「し……知らない……」

「そうか……なら、痛みに耐え続けるんだな」

「ぃあぁっぁぁぁぁーーー、……あっ……んんっ」


全身から汗が吹き出る。

どれだけこの苦痛に耐えれば終わるのだろう。

死なないせいで苦痛は無くなることはないのだ

った。





夜も更けてくると、城の裏手に影が落ちた。

ゆっくり動くと、そのまま城の中へと入っていく。


それに続くようにもう一つの影が後を付ける。


「あの変態のやる事だからな…生きてればいいが」


ブレイズだった。

精霊の少年も横にいた。


魔法が使えなくても精霊なら問題なかった。

奥に地下へと続く階段がある。

そこを降りようとドアに手を伸ばすと、下の方か

ら悲鳴が聞こえてきた。


悲痛な叫び声に、なんとも言えず唇を噛んだ。


そんなブレイズの後を追うように弘前も透明にな

って追いかけていた。


『主の声だ……それに血の匂いも……』

「下だな、では、王には退場してもらおうかな」


ブレイズが見つけた時には鎖に繋がれた神崎の

そばにはいくつもの指が並べられていた。


そして、腹を引き裂かれ、内臓を取り出す所だ

った。


「お前ぇはぁ〜!この外道が!」


牢の外から叫ぶ声に、大和の王も振り返った。


まるで血まみれの玩具を振り回すようにブレイ

ズに投げつけてきた。


「お前は決勝で負けた奴だったなぁ〜。負け犬

 が助けにでも来たのか?」

「そうだな、あんな卑怯な戦い方しておいて、

 勝って嬉しいかよ?神崎の仇は俺がとってや

 るからな……」


ぐったりして身動きしない神崎をチラリとみて、

すぐに向き直った。


「たかがお前ごときが勝てるとでも?今この場

 所は魔法は使えないぞ?」


自身満々に言う大和王にブレイズは精霊の力を

借りて蔦を這わせた。


一瞬、王の動きが止まった。

そして鎖を引きちぎると目の前に迫ってくる切

先にまるで盾をあてがうように神崎の身体を前

に出したのだった。


深々と枝が刺さると、血が吹き出す。


「なっ………」

「助けに来たんだっけ?お前のせいで死んじま

 うんじゃねーか?」


いやらしい笑みを浮かべると、床に落としたの

だった。


「下がってろ」

『よくも主を………』


弘前の声にブレイズは下がると、いきなり重力

がその場のもの全部にかかる。


弘前は神崎を担ぎ上げると横の魔物に手を貸す

かのように指示を出す。


「そのまま押しつぶせ!」

「あんた達は…」


跡をつけられた事に驚きはあったが、それ以上

に助けに来たのが遅かった事を気にしているよ

うだった。


「そいつは……もう……」

「まだ間に合う。彼は不死身だからね」


弘前は得意げに自分のローブを神崎に着せた。


着せる時にチラリと見えた腹には突き破られた

跡はなかった。

それに、床に散らばった指の数々。


どこも損傷していない事から、不思議には思っ

ていた。


「そうそう、指を何本切り落としたんだ?」


床に散らばっていた指を拾い集めると28本あ

った。


「自分の体でも試してみるといいよ。そうだ、

 ここには朝まで人が来ないんだったよね?」


弘前の笑みがその後の大和王の末路を語って

いた。


話す事は愚か、声をあげる事すら許さなかっ

たからだ。


舌を抜き、重力で押さえつけられたまま指を

一本ずつ切り落としていく。


「あれ?20本しかないや……神崎くんの指は

 28本だったのに……代わりに目玉でもいっ

 かぁ〜、でも22個かぁ〜……」


そう言うと、早速抉り出したのだった。


もう息絶え絶えだった。


生きているのさえも奇跡だったのだ。


回復魔法をかけつつ何度も切り刻む。

まるで神崎にした仕打ちが、返ってきたか

のような痛みを何度もあじあわされたのだ

った。


しまいには意識すらなくなっていた。


「もう終わりかな〜、つまらないな……潰

 していいよ」


その言葉にユニの重力が何倍にもなって

ただの血の塊と化したのだった。

これでは誰かの判別もつかない。


「こんな事しておいて……」

「君もそれを望んだんでしょ?僕が代わり

 に手を下した…それだけの事でしょ?」

「……」

「そろそろ目を覚ますかな……」


弘前の言葉にブレイズはハッと弘前の腕の

中にいる人物を見た。


「そんな馬鹿な…」


あれだけ傷つけられ、内臓すらも抜きとら

れた状態だったのだ。

生きているのさえも奇跡としか思えない。


「んっ………」

「おはよう。神崎くん。目が覚めた?」

「…うわぁぁっ!!」


飛び起きると、辺りを見回していた。


「ここは……俺は……?」

「痛かったでしょ?もう大丈夫だよ」


弘前に言われて自分の指がついている事を

確認すると腹をさすった。


さっきまで腹を引き裂かれて気を失ったの

を思い出したからだった。


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