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第二十七話 口封じ

その日の儲けは金貨5枚分にもなった。

銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚。

宿屋の分が浮いた計算になるのだった。


「大会は三日後だから明日も同じように稼ごうか」


弘前は嬉しそうに金を数えていた。


「そういえばさ〜弘前は魔法や戦い方を教えてく

 れてたけど……自分はいいの?」

「それはいいよ、だって、神崎くんと戦う事にな

 ったら棄権するし。」

「……!!」

「僕は賢者だよ?国とは関わっちゃいけない存在

 なんだよ?それが国王とか無理でしょ?」

「……俺はいいのかよ?」

「それはいいよ。神崎くんがいいんだよ」


そう言うと、嬉しそうに笑ったのだった。

まるで昔に戻った気分だった。


少しイタズラっぽい笑顔を浮かべる弘前は、仲が

よかった時によく見せる笑顔で笑っていた。

イジメが始まってから、全く見せなくなった表情

だった。


神崎が庇った時も、不安そうな顔を覗かせていた。


あの時から、二人の友情は薄れていった。

全ては長野達のせいだった。


「もしさ……長野達に絡まれてなかったら……いや

 いいや。おやすみ」

「……」


もし絡まれていなかったら、自分たちは今でも友人

でいられたかな……。


そう聞きたかった。

だが、いえなかった。


今まで弘前がこの世界でやってきた事を考えると、

どうしても許せなかったのだ。


その夜、奇妙な気配がして目が覚めた。


気配探知を覚えてから、自然と人の気配と魔物の

気配を区別して探知できるようになった。


その怪しげな気配の主はどうやら神崎の部屋の前

で立ち止まると、何やら怪しげな動きをしていた。


神崎はそっと起き上がると布団の中に枕を入れる

と側から離れた。

窓際のカーテンの影に隠れると様子を見護る事に

したのだった。


月明かりの中、怪しげな侵入者は二人だった。


音を立てずにゆっくりと鍵のかかったドアを開け

ると入ってきて神崎が眠っているはずのベッドの

方に迷いもなく近づいてきた。


そして何か光るものを手に持つと、ドスッといき

なり突き刺したのだった。


軽い手応えに、慌てて布団を捲り上げていた。


「おい、奴はどこだ!」

「なんでいないんだ?どこ行きやがった……」


小声で呟く言葉が耳に入る。


命を狙われるような事をした覚えはない。

だが、よくよく見ると昼間神崎に負けた男達だっ

たのを思い出す。


金に目が眩んで、夜に襲いにきたとでも言うのだ

ろうか?

いや、それなら即殺そうとするだろうか?


彼らからは敵意しか感じなかった。


静かに風の魔法を唱えると部屋の中に巡らせる。

防音の効果を期待しつつ、水蒸気を部屋中に充

満させた。


そして一気に周りを凍らせていく。


「おい、いきなり視界が……」

「なんかおかしくねーか?」

「早くずらかるぞ」

「そうだな…こんな依頼受けるんじゃなかった

 ぜ」


男の言葉が言い終わる前に足元から凍りだした

のだった。


「おい、どうなって……」

「お前は……」


カーテンから吹く風に揺れると神崎の姿がチラ

リと見えた。


やっと気づいたのかと言わんばかりだったが、

さっきの言葉が気になったせいで、身体の半分

を凍らせて身動きを取れなくすると、前に出て

来たのだった。


「誰に命令されたって?」


怒りを抑えた声で絞り出すと、男達は一瞬黙っ

たのだった。


「命までは取らないつもりだったけど……話に

 よっては……」

「それは……」

「俺はただ頼まれただけで……」


怯えるような男の顔はあきらかに予想外だと物

語っていた。


「誰に?どんな事を頼まれたんだ?」

「それは………この部屋の住人を殺せと……」

「あぁ、報酬は弾むと……」


たかが金の為に、人を殺すのかと怒りが込み上

げて来たのだった。


「それで、誰に依頼されたんだ?」

「それは…………わかっ……」


話そうと口を開いた男の首が床にころりと転が

ったのだった。


「ひぃっ……助けてくれるんじゃ……」

「俺は何も…」


その瞬間、もう一人の男の身体から突如炎が上が

ったのだった。


「大丈夫かい!」


空いたドアから駆け込むように入って来た弘前に

よって二人の男は床に丸焦げで転がったのだった。





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