第二十三話 禁忌の呪法
ギルドの依頼を受けたあとは、すぐにその場を離
れる事にしたのだった。
その頃、宿屋へと兵士達が訪ねてきていた。
見覚えのある顔を見ると、領主の私兵だという事
が分かる。
「神崎くん、ここから出ないで…」
「誰か来たのか?」
「うん、ちょっとね。お前は神崎くんについてて」
『分かっておる』
「もし、強行手段に出たらそのまま窓から出るん
だ」
弘前が言うと、ユニコーンは頷いたのだった。
きっと探しているのは神崎に話しかけた男だ。
すなわち、今の神崎自身だろう。
まさか中身だけが入っているなど言っても信じて
は貰えないだろう。
よけいに怪しまれるに決まっている。
エリーゼやナルサスは心配性だから、きっとなん
としてでも見つけようとするだろう。
ここは早く出ていく方が良さそうだった。
「弘前くん、このまま一気に駆け出したらどうか
な?ユニコーンは空を駆けれるんだろう?一気
に出ていけば……」
「それは追っ手がかかってもいいと?」
「それは……でも、きっとしつこく探すと思うか
ら……あの人達、結構過保護だし…」
どれほど大事にされていたのかが分かる。
「神崎くんがそう言うなら、行けるか?」
『主がそうしたいのなら乗るがいい。我は構わん』
「だ、そうだよ?」
「ありがとう。頼むよ」
『心得た』
窓を開けると、下にいた兵士が見上げてきた。
その瞬間背中に乗り込むと一気に大きくなる。
窓を抜けた瞬間駆け出すように一気に空へと飛び
出したのだった。
兵士達の声が上がって下では騒がしく叫んでいる。
が、それもすぐに聞こえなくなった。
前日に食料を買い足しておいてよかった。
そのまま森を駆け、追っ手の届かないところまで
走り続けたのだった。
途中、大きな泉で休憩の為降り立った。
「ありがとう…えーっと、ユニ……」
『……主と同じ呼び方をするのだな……』
「そう……かな……」
「当たり前だろう。本人なんだから。前の彼は僕
の記憶から作られた存在で、今の彼こそは本物
だからね!」
弘前は興奮するように捲し立てた。
「でも、どうして弘前くんは俺をこんな形で蘇ら
せたの?」
「それは……召喚の時に失敗して死なせてしまっ
たと思ったから……僕のせいでいじめも……」
「……」
「だから今度こそ、僕が助けなきゃって……そう
思ったんだよ」
「そっか……それと賢者の石ってどうやって作り
方を知ったのかなって…」
「それは賢者同士で、結構昔から話は出ていたん
だよ。ただ実際に行動に移す人がいなかっただ
けで、結局は師匠にも命を弄ぶ行為だと言われ
て禁止されていたんだ……」
弘前が言うには禁忌とされる呪法だったらしい。
賢者は知識としてはあっても、ただそれだけなの
だと言う。
誰も行動に移さない。
だから平和が保たれていたのだという。
その均衡を崩したのが、弘前だった。
国同士を戦わせ、圧倒的な勝利をもたらす。
敗戦国の民は実験の材料にした。
どんなに非人道的な事でも、賢者の実験といえば、
許されたのだったという。




